4月に行われた仏大統領選第1回目の投票結果、5月に予定されている決戦投票への進出を果たした国民戦線(FN)マリーヌ・ルペン党首。

選挙運動中一貫して「欧州連合(EU)離脱」をスローガンにかかげてきたルペン党首だが、Frexit(仏EU離脱)の是非を問う国民投票の実現を含め、離脱の可能性は極めて低いとの見方が強まっている。

専門家の意見は「Frexit実現の可能性は低い」で一致

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

Brexit(英EU離脱)、トランプ政権誕生と、2016年に引き続き三度目の「まさか」となったルペン党首の決選進出。予想外の結果が重なった結果、逆に「予想どおり」であった感が強い。そのため今回は決選進出候補に関する世論調査も的中していた。

決選でポピュリズムの奇跡が起これば、ルペン党首は公約を守り、国民投票や移民制限に着手すると見られている。しかし専門家の意見は、「Frexitが実現する可能性は極めて薄い」とおおむね一致しているようだ。

Brexitと大きく異なる第一の、そして最大の難関は、国民投票を実施するうえでの仏憲法の構造だ。まずルペン党首が国民投票を実施するためには、共和国憲法第88 条に記載されているとおり、改正案について定めた第89条に基づいた議会の承認が必要となる。

第89条に従うと、上下両院で過半数の支持を得て可決した後、さらに国民投票による支持率が過半数を上回った場合、あるいは議会で5分の3以上の支持を獲得した場合にのみ、初めて改正が可能 になる。

これを踏まえて考慮すると、国民投票を実施にあたり、FNは577議席中289議席を獲得しなければならない。現時点で上院348議席中、2議席しか獲得していないFNが奇跡をもたらす可能性は極めて低い。シティー・グループのエコノミスト、ギョーム・メヌエット氏は「最も楽観的な予想で最高100議席が限界」 との見解を示している。

議会の承認なしで憲法を改正するのは不可能?

そこでルペン党首が用いると予想されている第二の手段は、ゴール第18代仏大統領が利用した憲法第11条だ。ゴール大統領は1962年、憲法第11条に定められた「特定の法案を、議会ではなく国民投票にふす」という条項を発動し、議会の承認を得ずに大統領による直接選挙制に関する憲法改正を実現 させた。

特定の法案とは、「政治・経済・社会・環境政策および関連する公役務」「諸制度の運営に影響をあたえる条約に対する同意承認」「公権力組織」に関する政府提出法案を指す。
しかし2008年には第11条が改正され、現在は憲法第61条 によって「国民投票の発案には、議会あるいは政府の提案を要する」と定められている。ルペン党首がゴール大統領の例に習おうとすれば、たちまち抑えこまれるのは想像するに容易い。

仏証券会社、オッド・セキュリティーのチーフ・エコノミスト、ブルーノ・キャバリア氏の言葉を借りると、「ルペン党首は憲法裁判所と真っ向から対立する」ことになるだろう。

過半数の国民はEU離脱を望んでいない

もうひとつの難関は、国民によるEU離脱の支持率だ。ファイナンシャル・タイムズ紙の報道 によると、国際世論調査会社、Eurobarometer が2016年10月に発表した世論調査で離脱を支持したのは37%。残留派が53%と半数を超えている。

ルペン党首の第1回投票での勝利は、離脱派の勢いが増していると受けとれないこともない。その一方、国民投票実施の可能性が低いという現状を見極めたうえで、ルペン党首のリーダーとしての素質に重点を置いた結果とも考えられる。

ルペン党首に関してはEU離脱や移民制限をめぐる発言ばかりが注目を集めているが、中小企業の給与税や法人税の削減、自国製品の支援、防衛費の増強など、様々な公約をかかげている。EU残留というスタンスを維持したまま、財政、雇用、安全保障といったそのほかの公約の実施を望む国民も少なくないはずだ。

対立候補、マクロン前経済大臣という危険な壁

ルペン党首にとっては、不正給与スキャンダルで失脚したフィヨン前首相に代わり、支持率No.1の地位に急浮上したマクロン前経済大臣の存在も大きな壁となっている。

マクロン前経済大臣は、グローバリゼーションや移民の受けいれを含め、EU支持を全面に押しだした政策が功をなし、第1回目の投票で24% の票を獲得した(仏内務省データ)。マクロン前経済大臣は自国の経済基盤を復興させるうえで、ドイツとの包括的な連携強化が不可欠だとの信念を示している。

決選ではマクロン前経済大臣の圧勝を予想する声が多い。仏世論調査会社、Ifopによる最新の調査でも、マクロン政権支持派60.93%に対し、ルペン政権支持派は39.07% と大差がついている。

しかし世論調査が実際の結果とかけ離れていたことは、Brexitや米大統領選で証明ずみだ。ルペン党首の第1回目の投票の支持率が21.3%と微差であったという事実のみに焦点を絞ると、決選までに形勢が逆転する可能性も十分に予想できる。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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