4月28日に底が尽きる現行の米連邦政府のつなぎ予算に代わる補正予算が米議会を通過できるのか、与野党の対立が深まるなか、投資家たちは二転三転する状況にハラハラしてきた。だが結局、トランプ大統領が自らの主張を一時的に引っ込めて折れる形で、予算が通る見込みとなった。

市場は安心と歓迎ムードとなっている。4月25日のニューヨーク証券取引所ではダウ平均が230ドル以上の上昇を記録、ナスダックも節目の6000を突破するなど、リスク選好も戻ってきたようだ。

補正予算がセンチメントに影響するワケ

トランプ相場
(写真=Paul Hakimata Photography/Shutterstock.com)

トランプ大統領と共和党は、議会で僅差の優位しか確保していない「弱い与党」のため、補正予算の可決には議会民主党の協力が不可欠だ。しかし、トランプ大統領が自身の最重要公約の一つであるメキシコとの国境の壁の建設費を予算に盛り込むことの是非、不法移民をかくまう「聖域都市」への連邦補助金の打ち切り、さらに国民皆保制度オバマケアの低所得者向け保険料補助金の打ち切りなどの対立点があまりに多く、4月に入ってからも「合意する、しない」で情報が入り乱れ、最悪の場合には米軍や緊急性の高い部署を除く連邦政府の数日から数週間にわたる一部閉鎖が懸念されていたのだ。

米経済に確実に悪影響を与える連邦政府の閉鎖だが、実は1976 年から 1994年の間で17回も発生しており、特段珍しいことではない。

前回の2013年10月にはオバマケアを巡り当時の野党である共和党が予算に合意せず、16日間にわたって政府の機能がシャットダウンしたことは記憶に新しい。今回は立場が逆になり、「国境の壁は作らせない」「低所得者向け福祉をカットさせない」という民主党の強硬姿勢で政府閉鎖の危機が高まっていたわけだ。

2013年の政府機関一部閉鎖では、約85万人の連邦職員が自宅待機の一時帰休となり、生産性低下に伴う損失は約20億ドルに達したと、米行政管理予算局(OMB)は推計している。影響は民間部門にも及び、同期間中の新規雇用者数は12万人も減少したと推測されている。これは、米経済における毎月の雇用者増加数の大きな部分に匹敵するほどの規模であり、いかに政府の予算執行が民間経済の活力の元となっているかがわかる。

さらに輸出入免許の付与プロセスや個人・中小企業向け融資の停止、全米における国立公園などの文化・観光施設の閉鎖などがじわじわと波及した。米経済全体では、経済的損失が1日あたり約3億ドルに上ったとされる。

ただでさえ失策が続くトランプ政権にとって、政府機関閉鎖による経済損失は耐えられない痛手となる。特に、1月から3月の第1四半期国内総生産(GDP)の伸びが天候不順などで2.1%と振るわず、トランプ大統領の年間通算目標である3%から4%の成長を確保するには、4月から6月の第2四半期が極めて重要だ。ここで、米経済に水を差すようなことは、政権にとって自殺行為なのである。

また、確定申告の期間が終わった米国では内国歳入庁(IRS)が過払いの税金の還付を始めているが、この規模がバカにならない。一世帯当たり平均約3000ドルと、毎年恒例の景気浮揚のカギの一つとなっている。この還付作業も政府閉鎖でストップしてしまうので、戻り金を当てにしていた家庭の消費が冷え込んでしまうことになる。

穏健路線に舵を切ったトランプ政権に安心感