まずはじめに、イベント投資として誰もが知っている「株主優待」を使う戦略を紹介します。株主優待を実施している企業は、統計資料を見ると1150社(2014年9月末)にのぼり、過去最高となる上場企業3600社のうち31.9%が実施しています。

(本記事は、JACK氏著『サラリーマンで2億を稼いだ! 【株式投資】勝利の方程式』ぱる出版 (2015/10/5)の中から一部を抜粋・編集しています)

日経平均株価の暴落時に購入した株を優待権利確定日前に売る

株主優待,JACK
(写真=PIXTA)

ではこの株主優待を用いてどのように利益を出すのか? 株主優待の人気銘柄のひとつ、「カゴメ」のチャートで説明していきましょう。

2014年12月の権利確定日にむかって株価は上昇し、その後調整、また次の2015年6月の優待権利確定日にむかって株価は再上昇しています。つまり、それだけギリギリで買い込む方が多いのです。ならば安値で購入して、権利日確定日前で売却すれば、それなりに値上がり益を取れそうです。しかし、その「安値で購入するタイミング」が実は難しいのです。そこで私が判断の基準にしているポイントをいくつか紹介します。

確実に安値のポイントをつけてくるのは、権利日翌日の前場の寄値です。株主優待の権利をとった後なので、売却する方が多くいます。また配当金とセットにしている企業も多くあるので、その配当分、株価が下落するのが一般的です。

しかし、そのタイミングで購入したとき、次回の権利日は半年後、もしくは1年後になることがほとんどです。資金高拘束の期間が長くなるのはデメリットでしょう。

次のポイントは、年に数回ある日経平均株価の暴落時です。たとえば、ライブドアショックやリーマンショック時の大暴落がそれです。ほかにも、国内の信用不安や政治混乱、あるいは最近のギリシャのような諸外国の地合いの影響で、400円~500円、株価が暴落するときが年に数回はあるものです。そのときが連れ安をする優待銘柄の購入のチャンスです。

もちろん、さらに下落する可能性もありますが、それだけの暴落です。少なくとも直近チャート的には最安値であることは間違いありません。

家族パワーで効率よく優待ゲット

購入してからさらに株価が下がったとき、私は「家族パワー」を使うことで対処しています。家族パワーとは、「自分の口座以外でさらにその優待銘柄を購入すること」です。たとえば親の口座や子どもの口座があります。一部の証券会社では、親権者として、18歳以下の口座も開設できるのです。

証券会社によっては、家族が株式投資に協力してくれないときでも、委任状さえ提出できれば、自分自身でトレードできるケースもあります。もしも家族パワーが使えないなら、お金がからむので難しいかもしれませんが、恋人あるいは親友で対応できます。

株価が下がってさらに購入する手法は「ナンピン買い」に似ています。もちろん終始トータルで考えれば、損失を拡大する可能性もあるでしょう。しかし、こと「株主優待の権利鶏」となると妙味があります。なぜなら、株式優待の権利は、株数の単位と優待の条件が比例しないことが多いからです。

たとえば、株主優待として人気のあるカゴメは以下の条件になっています。

100株以上 1000円相当の自社商品
1000株以上 3000円相当の自社商品
(※2017年4月28日現在の内容を記載)

つまり、自分の口座でカゴメ100株を購入したとき、また100株、さらに100株と購入してトータル300株を保有しても、3000円相当の自社商品はもらえません。次のランクアップには1000株の購入が必要です。優待の商品価値は3倍にしかならないのに、投資資金は10倍です。

もちろん、1000円と3000円の商品の中身は違います。しかし、1人で1000株購入して3000円の商品1つと、家族口座で100株ずつ購入して1000円の商品3つなら、後者が効率的なことは明らかです。

ナンピン買いで優待目的の銘柄下落に対応するときは、家族口座で3回~5回の買いが理想です。特に最後のナンピンで購入した株価は、ここまで下落のたびに数回の買いをいれています。さすがにその株価から下落する可能性は低いので、高確率でキャピタルゲインをモノにできます。

つまり、最初の下落ポイントで購入した株価まで戻らなくても、そのナンピン買いの値上がり益でカバーできるのです。

最初に購入した株は、欲しい優待商品があるのなら、売却せずに保有して、優待を獲得するのもいいでしょう。そしてまた次回の優待権利月まで同じことを繰り返すのも一考です。

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クロス取引で株主優待を獲得する

ナンピン買いに抵抗がある方も多いでしょう。そこでナンピン買いもキャピタルゲイン狙いもせずに、1回の買いで株主優待を獲得できる手法を紹介します。この手法はあくまで優待を獲得するためだけの投資法です。ちまたでは「優待タダ取り」ともいわれています。

簡単にいえばクロス取引(両建て)を使うのです。

「クロス取引」とは、ある銘柄に対して同時に同一株数の買い注文と売り注文(カラ売り)を行い成立させる取引です。ちなみに「カラ売り」とは、カラ(実際には株券を持っていない)の状態で株券を売ることです。FX取引では「ショート」といわれています。

カラ売りは「株価が下落すると利益になる」ことを理解してください。反対に株価が上がれば、損失となります。

ではどのような仕組みで株主優待を獲得できるのでしょうか?ここでは3月末と9月末の権利確定日の株主優待として人気のある全日空輸(ANA)を例にとりましょう。

3月26日(平成27年)が優待権利日なので、その日までに339円×2000株で現物買い注文(優待を獲得する株数)します。同時に339円×2000株の信用売り(カラ売り)注目を前場が始まる9時までに成り行き注文(購入価格はいくらでも構わない注文方法)でオーダーします。

そして翌日の3月27日に反対売買(現物買い→現物売り・信用売り→信用返済買い)をするのが一般的ですが、今回は、信用取引の決済(株券の返却方法)に「現渡し」というコストがかからない手法をとります。現渡とは、同じタイミングで購入した現物株をそのまま返却して借り株の返済を行うことをいいます。

なお、たいてい株価は権利確定日の翌日に下落します。しかし、買いと売りの両建てなので、株価がいくらになろうが手数料をのぞけば損失はありません。

実際に翌日の株価で検証すると、場が始まる9時の初値は326.9円だったので、前日の現物買い注文の損益は(339円-326,9円)×2000株=-2万4200円になります。しかし、信用売りの注文の損益は、(339円-326.9円)×2000株=+2万4200円になるので、トータルはプラスマイナス0円となります。反対に349円の株価になったとしても結果は同じです。

そして現渡しのあと、3カ月ほどして株主優待商品が自宅に送付されてきます、2000株なら、普通運賃の50%割引の券2枚です。ちなみに、配当金については、両建てのポジションをもって権利日を確定することから、カラ売りに対して配当落調整金の支払いが生じます。だから基本的に優待のみを獲得できる手法です。

最後に、ここまでにかかったコストを検証します。現物買い手数料315円、信用売り手数用100円、貸し株料11円、逆月歩1300円で合計1726円です。このコストで、全日空の50%の割引券が2枚獲得できればかなりのメリットでしょう。

なお、コストに関しては、手数料無料キャンペーンや購入する証券会社の株主優待である手数料キャッシュバックでさらに削減ができます。株式相場を監視する必要がないので、サラリーマンやOLの方も気軽に行える手法です。

クロス取引のリスクである逆日歩 回避する方法とは?

しかし、このクロス取引にもおもわぬ落とし穴があります。それが「逆日歩」です。

逆日歩とは、カラ売り時の制度信用取引のみに発生するものです。信用取引の売りの数が増えすぎて、株が不足したとき、需給のバランスで生まれる費用になります。

そもそも信用取引の売りは、株券をかりて貸し株料という金利を払ってするものです。この時の「金利」とは株不足になったときの手数料をさします。制度信用で株が不足した時、銀行や保険会社、あるいは大株主から借り入れてきます。もちろん無料ではかしてくれません。そのコストが逆日歩としてはねかえってくるのです。

さらに厄介なことに、この逆日歩は、1株単位で1日ごとに発生します。高額な金額になることもあるので、無視できません。

クロス取引は、優待権利日の翌日の株価が上昇しようが下落しようが、リスクは皆無ですが、この逆日歩だけは避けようがありません。また、やっかいなことに、この逆日歩がどれくらいつくのかという予想は困難なのです多少は過去の権利日を検証することで予想できるのですが、ここ最近は、今まで逆日歩がつかなかった銘柄でもつくようになりました。

では、その逆日歩を回避する手法はないのでしょうか?カラ売りやつなぎ売りをできる手法として、「一般信用取引」というものがあります。これは投資家と証券会社の間でむすぶ契約です。

このとき、投資家は証券会社からかりた資金に金利を上乗せして返済する必要があります。つまり、銀行に借金して返済するのと似ています。証券会社との取り決めですから、金利や返済の期限などは証券会社が自由に決めます。

手数料や金利の違いこそあれ、「一般信用取引」は「制度信用取引」にはない絶対的な強みがあります。それは「逆日歩」が生じないことです。さらに信用取引口座の手数料は、口座開設6カ月以内または10万円までなら約定代金が無料という証券会社があります。

ならば逆日歩のリスクがある制度信用より一般信用の方がいいのでは? そう思うかもしれませんが、一般信用にもいくつかの欠点があります。

ひとつは、一般信用に対応している証券会社が少ないということです。私の知る限り、この「一般信用」に対応している証券会社は、カブドットコム証券、松井証券、SBI証券、大和証券、岩井証券の5社しかありません。

次に、一般信用で売りができる銘柄の数が限られている点です。そもそも一般信用として用意できる株券の数が少ないのです。逆日歩がかからないという安心から競争率が高くなり、人気のある株主優待はすぐなくなってしまいます。権利日の前日にあまっている(信用売りができる)銘柄は、ほとんど見かけません。

もちろん権利日の1カ月以上前から仕込めば、ある程度の対応ができます。しかしその分、長く株券をかりているので、貸し株料が余分にかかってきます。この貸し株料も計算に入れて、タイミングをはかる必要があります。

では、株価が高値圏にあり、高額な逆日歩がつく可能性がある優待銘柄を手にしたい時はどうすればいいのでしょうか?そういうとき、私は現物買いだけでなく、一般信用でのカラ売りも使います。以上のことから、私は毎日、証券会社のHPにログインして、残数があるかないかの確認だけはするようにしています。

ちなみに先の5社のなかでは、カブドットコム証券や松井証券が一般信用銘柄を多くとり扱っています。

株主優待の廃止に備えよ

残念なことに、企業がいつまでも株主優待を実施する保証はありません。株主優待を廃止することはよくあります。そのあとは、配当金に力を入れるというパターンが多いでしょう。

もちろん増配ということになれば、配当金がストッパーになるので、株価の下落はおさえられ、寄付きから反発することもあります。しかし、クロス取引でその企業の優待を獲得していたなら、先のとおり配当金は相殺されます。つまり、そのクロスにかかった経費分の損失となります。

結局、優待は獅子には、その企業の決算情報や四季報などをチェックして、ときによってはリリースすることで対応していくしかないでしょう。「業績が悪くても永久にホールドする」という決断は避けるのが賢明です。

そのほかのリスクとして「貸株」リスクがあります。これはリスクというより注意事項に近いかもしれません。そもそも「貸株」とは、現物の株式を持っているときに利用できる差0ビスです、保有中の株式を証券会社にかすことで貸株金利が得られる仕組みになっています。

貸株の面倒なところは、株主優待を受けとりたいとき、いったん貸株を取り消さなければいけない点です。しかし、SBI証券などは、権利確定日にあわせて、自動的に貸株を解除してくれる「株主優待自動習得サービス」を行っています。なにせ自動なので、サービスをクリックひとつで設定していればよいのです。わざわざ株主優待の権利確定日に合わせて、手動で貸株を解除したり、また申し込んだりする手間もかかりません。

しかし、設定を確認しないとおもわぬ不利益をこうむることがあります。先日、私は貸株で得られる利率にひかれ、現物で持っている株式を片っぱしから貸株に設定しました。その結果、株主優待を得られませんでした。

よくよく、その証券会社の貸株設定を読むと、「貸株優待情報がない中間決算や四半期決算において配当金が発生するときには貸出株式は自動返却されません」という記載があります。

さらには、「東洋経済新報社から直近で発売されている四季報に掲載されている優待情報を基に、株主優待が得られるように株式が一時的に返却されます」とも書かれていました。

つまり、この優待情報に掲載されていない隠れ優待や裏優待、もしくは急きょ新設された株主優待があるとき、貸株状態になっていると株主優待は届かないのです。

それ以降、手持ちの銘柄、もしくはこれから株主優待を狙う銘柄があるとき、ひとつずつ四季報の優待情報に掲載されているかどうかチェックをしています。ぜひ、皆様も貸株を設定するときは注意してください。

JACK(ジャック)個人投資家
バーテンダー、予備校講師、サラリーマンと多彩な職歴を歩む傍ら、IPO(新規公開株)を中心に2億円近くまでの資産を稼ぐ。

※注意書きの無い箇所に関しては発刊当時の情報になります