住宅を買い時かどうか判断するのは決して簡単なことではない。景気動向や住宅価格、住宅ローン金利,税制などの住宅取得支援策などの外部環境が影響する上に、自分たちの置かれている環境、自己資金や年収、将来設計などのエンドユーザーの内部環境にも左右される。今回は、外部環境の見極めから――。

FPの3人に2人がいまは「買い時」と回答

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(写真=Stasique/Shutterstock.com)

住宅金融支援機構が2017年2月~3月に実施した調査、『平成29年度における住宅市場動向について』では、金融のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に対して、いまが買い時かどうかを質問している。その結果をみると67.1%、FPのほぼ3人に2人が「買い時」と答えていて、「買い時ではない」の12.1%を大きく上回っている。残りの20.7%は「どちらともいえない」という回答だった。

では、なぜ買い時なのか、その理由を聞くと、最も多かったのが「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから」の69.2%で、次いで「金利先高感があるから」の51.3%が続いている。金融の専門家からすれば、変動金利型の住宅ローンなら0%台で利用でき、完済までの金利が決まっている全期間固定金利型でも1%前後で利用できる現在の水準は、間違いなく買い時ということであり、この機会を逃すと、金利が上昇して買いにくくなるので、買える環境にある人なら、いまのうち買っておくべきということなのだろう。

こうした住宅ローン金利面での有利さに続いて、住宅税制などの取得支援策の充実も買い時とする理由に挙げられている。「すまい給付金、贈与税非課税措置、住宅ローン減税等があるから」を挙げたFPは46.2%で、さらに、「消費税率引上げが再延期されているから」が38.5%で続いているのだ。

金利2.0%の差で総返済額1000万円以上の差

実際のところどうなのか、FPの多くか買い時と考える要因のトップに挙げる住宅ローン金利の影響の大きさについてみてみよう。借入額3000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は、金利3.0%では11万5455円が、2.0%に下がると9万9378円に、金利1.0%では8万4685円に減少する。金利3.0%と1.0%の差は毎月返済額にして3万円以上の違いになる。これが35年間続くとすれば、金利1.0%の総返済額は約4849万円に対して、金利3.0%は約3557万円だから、実に1292万円も負担が軽くなる計算だ。これだけの差なのだから、金利が下がれば買い時と考える人が多いのは当然のことだろう。

しかし、金利だけで損得計算を判断することはできない。金利がいかに低くなっても、価格が上昇すると金利低下効果が削がれてしまう。金利が多少下がっても、価格上昇によってむしろ返済負担が増えてしまう事態もあり得る。実際、2015年あたりから首都圏を中心に新築マンション価格が大幅に上昇し、東京都や神奈川県では年収の10倍以上の資金を用意しないと買えないほどの事態に至っており、それが16年後半から17年にかけての売上げの鈍化、契約率の低下につながっている。

たとえば金利2.0%時に、3000万円、35年返済のローンでマンションを買えるとすれば、毎月の返済額は9万9378円。その金利が、超低金利によって1.0%に下がると、毎月返済額は8万4685円に月額5000円近い減額になる。しかし、金利が下がっても価格が上がって3500万円のローンが必要になると、毎月返済額は9万8799円と、金利2.0%の3000万円のローンとほとんど変わらない負担なってしまう。それ以上に住宅価格が上がれば、せっかくの金利低下効果が失われ、超低金利メリットを活かせなくなる。

もちろん、価格が安く、金利も安い時期に買うことができれば一番いいのだろうが、そんな幸福な時期はそうそうあるものではない。価格と金利のバランスを見ながら判断する必要があるが、その際、いまひとつ重要な要素として税制や各種の補助金制度などの住宅取得支援策の内容を付け加えれば、判断はより確実なものになるだろう。

住宅取得が年末か年始の違いで400万円以上の差

住宅に関する税制で一番影響が大きいのが住宅ローン減税制度。住宅ローンを利用してマンションを取得した場合、住宅ローン残高に応じて所得税や住民税が控除される制度だ。

会社員なら源泉徴収される所得税や住民税が減ったり、ゼロになったりする。自営業者の場合も確定申告時に支払う税金が減ったり、ゼロになる。年間150万円のローン返済だったとしても、ローン減税によって年間30万円の税金を節税できれば、実質的な負担は120万円ですむのだから、影響は大きい。

しかも、このローン減税の減税額、年によって大きく異なることがあるのだ。景気がよく住宅投資が好調なときには減税額は少なくなり、反対に景気が良くないときには住宅投資を増やして景気を刺激するために、減税額が増やされることになる。しかも、その差が住宅を取得した年のローン減税制度によって数百万円に及ぶこともあるのだから油断ならない。たとえば――。

これまでにこの変化が最も大きかったのは、1998年から99年にかけてのこと。98年入居の最大控除額は10年間で180万円だったのが、翌年の99年入居だと15年間で最大587.5万円に増加した。98年居と99年入居では、何と400万円以上の違い。これだけ違うのだから、買い時判断には必ず税制動向もチェックしておく必要があるわけだ。

17年4月現在、このローン減税額は一般の住宅で年間40万円。減税期間は10年なので最大では400万円になる。省エネ性能、耐震性能などが優れ住宅であれば、年間50万円、10年間で最大500万円に増える。99年時の最大587.5万円には及ばないものの、このローン減税制度からみれば、いまが買い時であることは間違いないだろう。

消費税増税後に買ったほうがトクする人も

税制関連でみると、今後の問題としては、19年10月から消費税が10%に引き上げられることになっている。

住宅については、土地は非課税だが、住宅は課税対象。仮に、税抜き4000万円の分譲住宅で建物価格が2000万円とすれば、税率8%なら240万円の消費税が、10%だと300万円になるのだから、影響は小さくない。その分、「すまい給付金」制度によって最大30万円の給付があるが、それには年収などの縛りがあるので自分たちの場合はどうなるのかなどをあらかじめ確認しておくようにしたい。それだけに、消費税負担を考えれば、19年10月の増税実施前に買っておくのが得策ということになる。

ただ、19年10月までに買っておいたほうがいいというのは、すべての人にあてはまるわけではない。両親や祖父母などから多額の贈与を期待できる人なら、むしろ消費税増税後に買ったほうがトクになる可能性があるのだ。どういうことなのか――。

通常、年間110万円超の贈与については贈与税の対象になるが、両親や祖父母などの直系尊属から、住宅取得のための資金贈与を受けた場合、一定額まで非課税となる制度、「住宅取得等の資金贈与の特例」がある。17年4月現在、この非課税枠の上限は700万円で、省エネ性能、耐震性能などに優れた「質の高い住宅」については、500万円加算されて1200万円になる。

それが、消費税増税の半年前の19年4月から3000万円に拡充される予定なのだ。消費税が増税されると、住宅取得意欲が低下、住宅投資が減って景気に悪影響を与える可能性が高いので、この優遇策によって贈与を受けて住宅を取得する人が増え、消費増税後の住宅投資の減少を最小限に抑えようとする狙いといわれている。

買い時かどうかは人それぞれの条件による

親から3000万円の贈与を受けられる人が、非課税枠1200万円の19年3月までに贈与を受けると、非課税枠は1200万円に年間の基礎控除110万円を合わせた1310万円で、贈与額3000万円から1310万円を差し引いた1690万円が課税対象になる。この場合、贈与税額は約500万円になる。3000万円貰っても、実際に住宅取得に充てられる金額は2500万円ほどに目減りしてしまうわけだ。

しかし、2019年4月以降に贈与を受ければ、非課税枠が3000万円に増える。つまり、贈与を受けた全額が非課税になって、税額はゼロ。消費税が8%から10%に2%高くなっても、増税後のほうが得策ということになる。19年3月までに贈与を受けると約500万円の贈与税がゼロになるのだから、多少消費税が上がっても関係はない。両親や祖父母などから多額の贈与を期待できる人にとっては、買い時はいまではなく19年4月以降かもしれない。

とはいえ、19年4月以降まで待っていると、住宅ローン金利が上がり、また住宅価格も高くなっている可能性がある。住宅価格や住宅ローンの金利動向、そして税制などさまざまな面をシッカリと把握して、総合的に判断して買い時を見極めていただきたい。

住宅ジャーナリスト・山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『家を買う。その前に知っておきたいこと』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)などがある。『Business journal』、住宅展示場ハウジングステージ・最新住情報にて連載。

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