相続トラブルは誰にも起こり得るが、特に土地にまつわるいざこざは、大きくなる可能性が高い。相談者Aさんは親が亡くなった後に、弟と相続について話し合ったが、土地の処分について意見がまったく合わなかったのである。

遺産に更地があった!

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(写真=PIXTA)

Aさんの母親が亡くなったのは2カ月前。父親は既に亡くなっているので、相続人はAさんと弟Bさんだけ。母親の四十九日法要が無事に終わり、AさんとBさんが遺産をリストアップしたところ、使われていない更地があることが分かった。以前は家が建っていたが、数年前に家を解体している。町のはずれにある土地であり、特に用途がないため、更地にした後はまったく使用していない。

AさんもBさんも現在は遠方に住んでいて土地の管理は難しい。両親が残してくれた土地を簡単に手放したくない気持ちもあるが、Aさんは、どちらも管理ができないし、固定資産税が無駄なので処分(売却)したほうがいいという立場。一方Bさんは、実家があった土地でもあり、先祖代々の土地なのですぐ手放すことは考えられない、とりあえず兄弟の共同名義にして、後々どうするか検討すべきと考えている。

相談に来たAさんもBさんの気持ちは分かるようだが、困り果てて相談にこられた。

抵当権の有無をまず確認することの意味

まずAさんに「抵当権」の確認をするようアドバイスした。

抵当権とは、例えば土地を担保にしてローンを組んだ場合、金融機関がその土地に設定する権利のこと。ローンをすべて払い終われば問題ないが、もし途中で支払うことができないときに、金融機関が土地を処分してローンの残りに充当できるという権利である。

その土地に抵当権があるかどうかは法務局で登記簿謄本を取り寄せれば分かる。抵当権が付いていたら、前の所有者がその土地を担保にお金を借りた、あるいはローンを組んだことになるから、すぐに借用書、契約書を探す必要がある。もし見当たらなければ、直接金融機関に問い合わせればいい。

そうすることで、あといくら返済が必要なのかが分かる。ただ返済が終わっても、抵当権を消す手続き(抵当権抹消登記)をしていない可能性もある。その場合は、完済した証明書を金融機関から発行してもらう必要がある。

土地を相続した場合、ほとんどの人は土地価額の多寡は別にして、「財産が手元に残った」と思いがちである。しかし、もし相続した土地に抵当権が付いていて、しかも借金やローンが残っていた場合には、“負の遺産”を引き継ぐことになるのだ。このことをほとんどの人は、忘れがちである。

もしAさん、Bさんが土地の抵当権を調査せず土地を相続して、その後で抵当権が付いていたことが分かった場合、トラブルに発展することがある。

次にAさんには遺言書が残されていないかを確認した。母親が土地について、「こうしてほしい」という要望を残していた場合には、極力故人の遺志を尊重するべきだからだ。子どもたちに相続してほしいのか、処分は任せる(売却しても構わない)のか、あるいは自治体等に寄附してほしいのかなど、母親が意思表示していることも考えられる。

もし抵当権もない、遺言書も見当たらないのであれば、基本的に後は相続人同士の話し合いということになる。ただ相続放棄の期限が、被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月以内なので、できればそれまでに結論を出したいところである。

協議でまとまらないなら調停も視野に

Aさんの場合、Bさんの方が「土地を引き継ぎたい」と明確に意思表示しているので、Bさん単独で土地を相続する方向で話し合えば、まとまる可能性がある。しかしそうなると、将来的に土地を売却したときに、Bさんに売却したお金が入ることになるので、不公平である。土地はBさんが相続する代わりに、他の財産を多めにAさんが相続するなどして、調整を図る必要がある。

しかしこれでもすんなりと協議がまとまらない可能性も出てくる。そうなれば費用がかからない家庭裁判所の調停を利用することも選択肢の一つ。調停員の前で話し合うことで、お互いが納得できる方法が見つかるかもしれない。

遺言書がなければ、相続財産は民法で定める「法定相続分」で分割することが、基本である。Aさんの場合は、2分の1ずつであるが、これは一つの目安と考えて良い。土地を相続するか処分するか、それぞれのメリット、デメリットを考えて、納得のいく結論を出してほしい。(井上通夫、行政書士)

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