旅客と荷物をいっしょに運ぶ「貨客混載」。宅配便大手の佐川急便が、新潟県の第三セクター鉄道・北越急行が運行するほくほく線を使って始めている。佐川急便にとっては深刻さを増すドライバー不足の改善に期待を持てるほか、北陸新幹線延伸に伴い、在来線特急「はくたか」の廃止で赤字に転落している北越急行にとって、貴重な増収策となる。

地方を走る第三セクター鉄道の多くが人口減少による赤字に苦しんでいる。貨客混載はこれまで過疎地の路線バスで導入されてきたが、ローカル線の維持にも大きな力となりそうだ。

目次

  1. ほくほく線を使い、貨客混載列車が1日1往復運行
  2. 沿線人口の減少でローカル線の経営が悪化
  3. これまでは主に過疎地の路線バスで導入

ほくほく線を使い、貨客混載列車が1日1往復運行

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北越急行の車内に専用ボックスを積み込む佐川急便の職員(写真=佐川急便)

貨客混載の列車が運行する区間は、ほくほく線の新潟県南魚沼市の六日町駅から上越市のうらがわら駅間約47キロ。荷物を積み込んだ専用ボックスを、車内の車いすスペースにベルトで固定して運ぶ。

貨客混載列車は午後8時13分六日町駅発と午後9時9分うらがわら駅発の1日1往復が平日に限って運行する。荷物は両駅から佐川急便の配送センターに届けられ、そこから家庭や事業所などへ配達される。

六日町駅で開かれた出発式では、佐川急便の内田浩幸取締役が「輸送効率の向上や働き方改革につなげたい」とあいさつしたあと、北越急行の渡辺正幸社長の合図で貨客混載列車が出発した。

貨客混載列車はローカル線と宅配便という住民の暮らしに欠かせない2つのサービスを維持するための取り組み。佐川急便と北越急行は2016年6月、事業実施で合意し、11月から実証実験などを続けて準備を進めてきた。

佐川急便にはドライバー不足を改善し、配送効率を向上させられるメリットがある。北越急行側にとっても、利用者の少ない時間帯の列車を活用し、一定の収入を増やすことができるのがうれしいところだ。

今後、宅配カウンターや不在再配達の受け取り用宅配ボックスの駅設置など住民の利便性向上に向けた取り組みを検討する。佐川急便は「定時運行できる鉄道の利用で到着遅延防止など安定した輸送を実現したい」としている。

沿線人口の減少でローカル線の経営が悪化