しょうゆの醸造蔵が点在する昔ながらの街並みが重要伝統的建造物群保存地区に指定されている和歌山県湯浅町で、明治初期に建築された古民家2棟を宿泊施設として再生する改修工事が進んでいる。兵庫県篠山市の集落丸山など国内外から観光客を集める成功例があることから、地域振興と文化財維持を両立させようとする取り組みだ。

政府は古民家を活用した地方創生策を推進しており、重要伝統的建造物群保存地区の規制緩和を進める方向。湯浅町だけでなく、全国各地の保存地区で古民家再生による地方創生に熱い視線が注がれ始めた。

しょうゆ発祥地の和歌山県湯浅町でも2棟が本年度中にオープン

古民家,地方創生
政府が古民家宿泊施設のモデルと考える兵庫県篠山市の集落丸山(2016年11月、筆者撮影)

湯浅町はしょうゆの発祥地として知られ、昔ながらの街並み6.3ヘクタールが2006年、文部科学省から重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。町は保存地区内にある明治初期建築の古民家2棟を内部改修し、1棟貸しの宿泊施設とする。ともに10年来、空き家となっていた。

2棟のうち1棟は3月末までに内装の改修工事が完成した。もう1棟は近く工事に入り、早ければ秋ごろにも完成させたい考え。もう1棟が完成したあと、地元の物販会社が2017年度中に宿泊施設として運営を始める。

保存地区は東西400メートル、南北280メートルの一帯に、白壁の土蔵や格子戸、虫籠窓を備えた伝統の家並みが続く。しょうゆの醸造蔵も点在し、江戸時代を思わせる雰囲気だ。地区内にある古民家のうち、135棟は所有者が保存に同意しており、町は手始めに2棟を宿泊施設として活用することにした。

町はしょうゆの醸造と柑橘類の栽培で古くから知られてきた。しかし、人口は1985年の1万7000人をピークに減少の一途をたどり、現在は1万2000人まで落ち込んでいる。65歳以上の高齢者が全人口に占める割合を示す高齢化率も、2015年現在で32.8%。全国平均の26.6%を大きく上回っている。

町内には居住可能な古民家が約210棟あるが、人口減少の影響を受けて2016年10月現在でざっと2割が空き家だという。

町は大阪市の中心部から列車を乗り継いで約2時間。湯浅町産業観光課は「古い街並みを維持しながら、交流人口の拡大を図りたい」と意欲を見せた。

政府が古民家活用を積極的に後押し