糖尿病のマウスに光操作できる細胞と赤外線に反応するLED(発光ダイオード)を埋めこみ、スマホの赤外線通信機能を利用して信号を送ることで、ホルモン分泌を調節するという糖尿病治療法の共同実験に、中国の研究者が成功した。
将来的には、糖尿病も含めた人間の慢性疾患治療にも応用できると期待されている。
スマホに血糖値データを送信後、ホルモン分泌を促す
通常、血液中のグルコース(ブドウ糖)は、血糖値をさげる働きのあるインスリンやインスリンと逆の作用をもつホルモンによって、一定の数値に保たれている。何らかの原因がインスリンが十分に作用せず、血糖値が高くなった状態が糖尿病だ。
主な原因はインスリンを分泌する肝臓の細胞障害(1型糖尿病)、インスリンは分泌されているが少量あるいは機能が不十分(2型糖尿病)などだが、遺伝子異常や薬剤の使用、病気、妊娠などで発生する場合もある。糖尿病の治療では、グルコースを一定の範囲に調節することが重要なカギとなる。
今回複数の機関に属する中国の研究者が共同で行った実験は、光遺伝学(遺伝子学の手法を用い、光に反応して活性化するたんぱく分子を特定の細胞に発現させ、光で操作する技術)をベースにした画期的な試みだ。
あらかじめ組み込まれた血液中のグルコース値を測定するシステムからスマホにデータが自動的に送信され、定期的に数値テストが行われる。スマホは分析アプリで受信したデータを検証し、必要なインスリンの量を算出する。インスリンが必要な場合、LEDに信号が送られ、細胞にホルモン分泌を促すという仕組みだ。