子どもから大人まで、幅広い年齢層に愛される「とんかつ」。普段使いのランチにはちょっとお高いのがネックだったが、東証1部上場アークランドサービス <3085> が展開する「かつや」による価格破壊でとんかつ市場が拡大している。絶好調の「かつや」を切ってみよう。
「かつや」の好調でアークランドサービス株急騰
アークランドサービスHDが4月28日に発表した17年12月期第1四半期(1月~3月)の決算によれば、売上高は12.0%増の62億円、本業の利益を示す営業利益は23%増の10億円と好決算だった。第1四半期の営業利益率は、16.2%と前年同期の14.7%から1.5ポイント改善している。
同社の平成28年12月期決算(通年)によれば、売上高は233億円、営業利益は34億円、経常利益は34億円、当期純利益は21億円。第2四半期(累計) 予想は売上高が122.5億円、営業利益は16.8億円、経常利益は17億円、当期純利益は10億円となっている。
中間・通期の会社予想は据え置いたが、営業利益の進捗率は上期予想の約60%に達しており上方修正含みだった。好決算を好感し、翌5月1日の株価は買い気配で始まり、275円(8.9%)高の3350円の年初来高値で引けた。2016年6月につけた過去最高値3550円以来の高値。
好業績の牽引役は「かつや」だ。実は、アークランドサービスが決算で買われるのは今回が初めてではない。ここ数年、決算発表毎に好決算や増配を発表しているので、決算後に買われることが多い。
アークランドサービスは外国人投資家好みの優良会社
「かつや」の成長に支えられ、今期も予想通りの業績が達成できれば15期連続最高益(経常利益)となる。とんかつは「揚げたて」で揚げる手間がかかることから採算が良くないイメージがあるが、営業利益率は前期実績で14%と外食店としては非常に髙い数値を実現している。
外食大手の営業利益率で比較すると、ゼンショーHD <7550> は前期実績で約2%、コロワイド <7616> が同3%、すかいらーく <3197> が9%、マクドナルド <2702> が3%程度だ。好採算と言われる吉野家 <9681> でも10%、ハイデイ日高 <7611> で12%程度。アークランドの採算の高さは際立っている。
同社は弁当需要や総菜需要など、中食需要を取り込む努力をしている。直営店ベースだと1店舗あたりの平均月商は、16年の791万円から17年は811万円と2.5%増加している(平成28年12月期決算説明資料より)。
外国人投資家は自己資本利益率(ROE)を重視する傾向にあるが、同社の前期末ROEは15%と非常に高い。キャッシュリッチで、自己資本比率も76%と高く、無借金経営である。
こうした高成長、高収益、好経営指標が評価されて、外国人投資家に好まれている。外国人投資家の保有比率は15年12月期末で21%と高い。確認出来る大株主には、世界的な投信運用会社で小型成長株投資に定評があるフィデリティ投信や長期投資のノルウェイ年金等の名前が入っており、長期保有しているようだ。
市場拡大にドライブがかかる「とんかつ、かつ丼」市場
ひれかつ定食というと1500円から2000円というイメージがあるが、同社は、ロースかつ定食690円、ひれかつ定食790円、かつ丼490円といった価格設定で勝負している。
市場調査の富士経済によると、ファストフード(客単価400円以上1500円未満)としての「とんかつ・かつ丼」市場は、15年には「かつや」の寄与で381億円と前年比21%増となり、16年には444億円の17%増、17年見込みでは476億円の7%増と高い伸びを続けている。
今まで価格が比較的高く、ファストフードの範疇に入っていなかった「とんかつ・かつ丼」が、「かつや」の価格破壊による市場開拓でファストフードとして市場に認知され、勢力を急激に伸ばしているのだ。
「かつや」の店舗数は17年3月末で381店舗。17年12月期も40店の新規出店を計画しており、16年の41店増と同様に積極出店を続ける。
牛丼業界は、すき家のゼンショーHD <7550> が約2000店、吉野家 <9681> が約1200店舗、松屋フーズ <9887> が約1000店舗で、なか卯を入れて大手4社で約4600店舗ある。「とんかつ系ファストフード」店はまだ500店程度。「とんかつ・かつ丼」市場は、既存の中・高価格帯のとんかつ市場のシェアを侵食しながらまだまだ業界全体伸びる段階にある。 また、「かつや」の場合でも出店エリアはまだ関東が中心であり、関西以西はまだ未開拓でエリア的に伸びしろは大きい。
「かつや」に刺激された松屋フーズは、「松のや」「松乃家」のとんかつ形態出店を強化中で今期に100店舗を突破する予定。
コロワイド、すかいらーく、ハイデイ日高 、サガミチェーン <9900> 、リンガーハット <8200> 、トリドールHD <3397> などもとんかつ形態のチェーン店を立ち上げた。
今後の懸念点は?
「かつや」といえども、1月-4月の直営店(前出店の約3分の1)の既存店売上は前年比0.9%減と昨年の3.3%増からスローダウンして苦戦している。ただ、出店ラッシュが続いているため、直営店の全店ベースでは6.8%増と昨年の4.6%増からさらに加速している。しばらくは、熱いとんかつ戦争が続きそうだ。競争が激化すればファストフードとしてのとんかつの地位が上がりさらに相乗効果がでてくることだろう。(ZUU online 編集部)