規模の拡大、建物の老朽化、企業のイメージアップなど、オフィス移転が必要となる理由はさまざまです。しかしどのような理由であっても、移転にかかる費用と労力は大きくなります。移転を成功に導けるよう、しっかりと準備をしましょう。うまく制度を活用すれば、国や行政から補助を受けられるかもしれません。

今回はオフィスの移転に焦点をあて、確認するべきポイントや利用できる補助制度を紹介します。

オフィスを移転させる時にチェックすべきポイント

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(写真=StockLite/Shutterstock.com)

オフィス移転には、入念な準備が必要です。費用と資金、立地とイメージ、広さと内装、オーナーと移転業者、工事と引っ越し作業のスケジュール、行政対応など、確認するべきポイントはたくさんあります。

まず確認するべきポイントとしてあげられるのが、初期費用です。賃料や共益費など毎月かかる費用も重要ですが、初期費用として一定期間分の保証金を入れることもあるため、資金が足りなければ銀行借り入れなどが必要になるかもしれません。

また、立地も重要です。業態にもよりますが、立地・建物のイメージが良好だと、顧客や仕入れ先との関係づくりや採用活動などに有利になります。オーナーはもちろん、他のテナントや周辺に反社会的勢力の事務所がないか、騒音や悪臭などはないかなどを、現地に行って直接確認します。

スケジュールは現在、入居するオフィスと賃料発生期間がなるべく被らないことに留意しつつも、新オフィスの内装工事や引っ越し作業など余裕を持って予定を引く必要があります。

事業成長の未来図に合わせて検討を

費用や手間の観点から、何度もオフィス移転を繰り返すのは現実的ではありません。長く拠点として利用できるように、計画的に考える必要があります。将来的な事業規模の拡大・縮小、採用計画、投資計画、事業内容の変化、M&Aなど、経営者が考える未来図を反映させます。

とはいえ、必要以上の広さの設備を借りると無駄な経費が発生してしまいます。オフィス街や大規模な商業ビルなど、すぐ近くに似た物件が見つかるエリアであれば、柔軟に対応できるようになります。入居中のオフィスはそのままで、一部の人員から徐々に移転させることができるからです。

建物等設置事業(移転)補助金を活用しよう

自治体によっては、オフィスの移転に対して補助金を交付していることがあります。多くはビジネスを特定の地域に集積して、経済の発展を促そうというものです。例として浜松市と横浜市の補助金制度を紹介します。

● 浜松市
浜松市では、都心オフィス進出支援事業費補助金という制度があります。JR浜松駅の北側を中心とした「浜松市中心市街地活性化基本計画」の認定区域内に事務所を借りる企業に、賃料の2分の1相当×36ヵ月分を補助します。一般オフィスと大型オフィスの2種類があり、補助金額は一般オフィスで最大360万円、大型オフィスでは、オフィスの賃借料の他に、通信回線使用料や新規雇用者の補助も含め、最大1億円です。

● 横浜市
横浜市では、テナント企業の他、自社ビルを購入・建築した場合にも補助があります。前者は法人税に相当する金額の一部を交付するもので、1年あたり最大1億円にもなります。後者は固定資産税の軽減、または土地や建物の取得費から算定し最大12%の補助を受けることができます。対象の地域は、みなとみらい・横浜駅周辺、京浜工業地帯、港北ニュータウン地域などです。

国でも「地方拠点強化税制」という制優遇政策を採っています。本社機能を地方に移転した場合や地方の本社機能を拡充した場合に、法人税の優遇を受けることができます。特に東京23区から本社を移転する場合は、オフィス減税として建物等の取得価額に対し、特別償却25%または法人税の7%が控除されるなど、非常に大きなものになります。

オフィス移転は計画的に

オフィスを移転する場合には、将来的な経営計画を考慮に入れなければ、再び費用と労力をかけて移転することになりかねません。

国や自治体から、賃料や社屋取得費の補助、減税などの優遇を受けられることもあります。これらの要素を勘案して、計画的に行いましょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)

※当記事は2017年4月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。