ここ数年、総人口に対する高齢者の割合が増加したことで、国内の介護事業市場の伸び率は拡大傾向にあります。内閣府が発表した「平成28年版高齢社会白書(全体版)」によると、2015年10月1日時点で日本の人口は1億2,711万人で、そのうち65歳以上の人は3,392万人と、総人口の26.7%となっています。そして、50年後の日本は(将来推計人口)、国民2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると推測されています。

こうした動向を受けて、介護事業にも変化が予想されています。今回はその中でも、介護事業の拡大に有効的とされるM&A事情について業界動向を含めながら紹介しましょう。

介護事業の業界動向

Healthcare
(写真=Ocskay Bence/Shutterstock.com)

日本の高齢化率は年々上昇傾向にあり、そのスピードは加速するばかりです。不景気でも、介護産業の市場規模は拡大する一方です。短期入所サービス、グループホーム、通所サービス、福祉用器具など介護保険に対応している業種は、高齢者向け市場を支える医療産業や生活産業と並んで、今後も大きな成長が見込めると言われています。

加えて、2011年に改正された「高齢者住まい法」でサービス付き高齢者住宅への支援が手厚くなったことにより、介護施設や高齢者向けの住宅での市場競争が一段と激しくなっています。2013年には介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームの施設数が8,499ヵ所にのぼります。法改正により有料老人ホームの対象が拡大した2006年と比べると、約4倍の数に膨れ上がりました。

介護事業のM&A動向

介護事業のM&Aは有効的な成長戦略であると考えられています。しかしながら、国内では業績不振や設備投資の負担などが理由で、売却してしまう小規模事業者も多く(東京商工リサーチによる2016年1月〜12月 老人福祉・介護事業の倒産状況より)、エリア拡大を狙った大手が継続的に買収するケースが目立っているようです。

海外展開では、高齢化が進む中国のヘルスケア産業に目を向けている企業もあります。現地の関連会社へ出向き、事業の譲渡や資本提携の交渉をする動きが見られています。

今後の動向

介護事業は大手企業のシェアが低いため、M&Aニーズが高くなっていくでしょう。高齢化社会に目を向けて、介護事業をはじめとする老人福祉事業関連の事業所は増加しました。ところが、同業者との競争化が激しくなり経営が悪化した結果、倒産に追い込まれる事業所も増えてしまいました。

東京商工リサーチによると、2016年1~12月の老人福祉・介護事業の倒産は年間108件を記録しており、2015年の76件と比べて増加しています。小規模事業者を中心に倒産する傾向にあるため、それを食い止めるためにもM&Aの必要性が今後も拡大していくと見られています。

介護事業サービスとは介護保険法を基に食事、着替え、洗濯など、日常生活に必要なサポートや援助を自宅や介護施設で行うサービスです。日本はこれらのサービスを必要とする人が今後ますます増え、世界でも類を見ない高齢国になることが予想されます。

団塊の世代を生きた人たち、そしてその背中を見て育った子どもたちがこれから直面するのが介護問題です。介護事業ではサービスのクオリティーを追求しながら、安心して身を置ける介護施設づくりが必要になってきます。最終的には地域の活性化にも役立つ介護事業のM&Aに、今後も注目していきましょう。M&Aに派生したビジネスの観点でも、見逃せない動きです。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)

※当記事は2017年4月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。