2017年3月、不動産特定共同事業法の改正法案が閣議決定された。ニュースで聞いた人のなかには、あまり耳慣れない法律だと思った人も多いだろう。同法の内容を中心に、改正案の概要についても解説する。

そもそも「不動産特定共同事業法」とは

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(写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

不動産特定共同事業法(以下「不特法」)は、複数の投資家から出資を受けて不動産事業を行い、その収益を分配する仕組みを制度化したものだ。こうして生まれた商品は不動産小口商品と呼ばれる。投資家からみると、一般的に現物不動産投資よりも少ない資金で、不動産投資を行うことができるわけだ。

国土交通省のホームページを確認すると、不動産事業の資金需要と投資家からの資金供給をつなぐ法制度には、次のようなものがある。「資産の流動化に関する法律(SPC法)」「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」「商法・会社法」、そして不動産に特化した「不動産特定共同事業法(不特法)」だ。

特に、不動産特定共同事業法は、不動産会社のような専門家が主体となって不動産小口商品を提供することが想定されている。

今回の改正案の背景

平成29年3月3日に閣議決定された不動産特定共同事業法の改正案はどのような背景で出てきたのだろうか。大きな理由の一つが「空き家・空き店舗等の再生・活用」だ。昨今、空き家の増加が問題になっているが、この解決に不動産小口商品のような取り組みが役に立つと期待されている。不特定多数に資金提供を募り、空き家・空き店舗等を再生させ、観光施設や宿泊施設などとして運営するといったことが考えられる。

今回の改正案の概要を説明

現行法では、不動産特定共同事業法で定められた不動産特定共同事業を行うためには同法に基づく事業を行うためには、原則として、国土交通大臣等又は都道府県知事の許可を受ける必要があり、この許可を受けるためには、「事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎及び人的構成を有するものであること」等の要件を満たす必要がある。また、不動産特定共同事業者は、同法上、不動産特定共同事業の遂行に関し様々な義務が課されているため不動産特定共同事業者としての新規参入は容易ではない。

それが今回の改正案によって「小規模不動産特定共同事業」が創設された。ある一定の条件をクリアできると、小規模不動産特定共同事業者として登録することで活動できる。登録は国土交通大臣または都道府県知事に申請し、5年ごとに更新が必要となる。

変わるのはこれだけではない。クラウドファンディングに対応するため、不動産特定共同事業契約の成立前及び成立時における書面並びに財産管理報告書の交付を電子的方法で行うことができるようになる。書面を取り交わすことに比べると非常に手間が削減され、不特定多数の投資家からの資金調達による不動産事業の展開を後押しするとみられる。

国土交通省は今回の改正案を含む一連の取り組みによって、2022年までに不動産特定共同事業への地方の不動産会社などの新規参入800社、空き家や空き店舗等の新たな再生投資約500億円を目標としている。

時代に合わせて法的枠組みが整備される不動産投資

不動産小口商品を広い意味での不動産投資ととらえるなら、その選択肢は広がりつつある。不動産特定共同事業法が改正されることによって、より多くの事業者が空き家や空き店舗等の再生や、クラウドファンディングを利用した事業を行えるようになるだろう。国土交通省がこれらを促進するために数値目標を掲げていることからも、力の入りようがわかる。ますます身近になり、活性化が見込まれる不動産小口商品から目が離せない。(提供: みんなの投資online

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