地方の空き家・空き店舗等の問題が深刻化している。不動産特定共同事業法の改正が閣議決定されたのも、地方の空き家・空き店舗対策という意味合いが大きい。今回は改正案の背景となった空き家・空き店舗問題について解説する。

「空き家・空き店舗問題」とは

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(写真=Lifestyle_Studio/Shutterstock.com)

不動産特定共同事業法の改正案によると、今までよりも小規模な事業者でも不動産小口商品を扱えるようになりそうだ。同法が今後改正されることによって期待されているのは、空き家・空き店舗等の再生事業の活性化だ。空き家・空き店舗の有効利用を促すとともに、地方創生の一環としても注目されている。

総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」によると、2013年の総住宅数の内、空き家率は13.5%にのぼり、平成27年2月26日時点で過去最高を記録した。

空き家・空き店舗等の何が問題なのだろうか。大きく分けて「衛生上の問題」「防犯・防災上の問題」「機会損失の問題」の3つがあげられる。

① 衛生上の問題
空き家・空き店舗は、景観の悪化や悪臭に加え、不法投棄がされやすいため、さらに悪化が進むという悪循環が生まれる。

② 防犯・防災上の問題
防犯・防災上の問題は非常に深刻だ。古くなった空き家・空き店舗等は老朽化で倒壊するリスクが高まったり、放火の温床になったり、窃盗の標的になったりする恐れがある。特に木造密集地域のようなところでは、通報が遅れて火災が広がるという懸念材料にもなりえるのだ。
国土交通省の「平成26年空家実態調査」によると、空き家の62.3%が1980年(昭和55年)以前に作られたものだということだ。老朽化もさることながら、1981年(昭和56年)に耐震基準が強化される前のいわゆる「旧耐震基準」の設計で建てられた建物が半分以上ということになる。地震で倒壊すれば、周囲の住民にとって非常に危険だ。

③ 機会損失の問題
機会損失は間接的な問題と考えることもできるが、社会的な資本でもある建物を利用できれば、所有者にとってもその地域の経済にとっても有用だ。居住するところがほかにあれば、賃貸に回して賃料収入を得ることもできるし、発生した収益を税金として納めることになるので国や地方の財政に貢献することになる。

空家等対策の推進に関する特別措置法について

このような状況下で「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」)」が施行されたのは2014年(平成26年)のことだ。

空家法では危険な空き家に対する緊急的な措置について定めている。そのまま放置すると倒壊の危険や環境に多大な悪影響をおよぼす恐れがある空き家を「特定空家等」と位置づけ、所有者に対して市町村長は助言または指導することができる。改善されない場合は具体的に期限を設けて除却や修繕などの対応を指示するが、行動が見受けられない場合は一定の要件に従って、行政代執行が可能である。

空き家対策制度を整える自治体も目立ってきた。例えば空き家率が全国1位の山梨県(総務省「平成25年度住宅・土地統計調査速報値」より)は、空き家等の対策に取り組む市町村を支援することを目的とし、県と市町村及び市町村間の連絡調整を図るため「山梨県空き家等対策市町村連絡調整会議」を設けた。

空き家バンクという空き家を貸し借り・売買できる仕組みも各地でみられる。空き家率全国2位の長野県では、空き家相談のポータルサイトと「楽園信州空き家バンク」を運営する。これらの取り組みは、法が施行された2014年以降に急速に普及しはじめた。

空き家問題は官民あげての対応が必要

不動産特定共同事業法改正案のきっかけとなった空き家・空き店舗等の問題は、防災や住環境整備の上で非常に重要だ。2014年には空家等対策の推進に関する特別措置法が施行され、それに基づいた国や各自治体の対策が進んでいる。具体的には空き家バンクや補助金の制度を設けるといった取り組みがあげられる。不動産市場において、今まで以上に、空き家の存在は無視できなくなるだろう。(提供: みんなの投資online

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