マイホーム取得に必要な資金の大半は住宅ローンで用意するにしても、一定の自己資金の準備が欠かせない。売買契約時には物件価格の1割以上の頭金を用意するのが得策だし、その後ローン契約や登記手続き、引越し関係費用などの諸費用も必要になる。少なくとも購入価格の2割程度の自己資金を準備するのが安心だ。

頭金が多いほど返済がラクになる

住宅ローン,マイホーム
(写真=PIXTA)

なぜ頭金が多いほうがいいのが、ふたつの点から理由をみてみよう。

(1)頭金割合別の返済負担
当たり前のことだが、頭金が多いほど借入額が減って、返済はラクになる。

たとえば、4000万円のマンションを全額住宅ローンで調達、金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしだと、毎月返済額は11万2914円。年間で約135万円、35年間の総返済額は約4742万円に達する。これが、1割の頭金で借入額3600万円なら毎月10万1622円に減って、総返済額は約4268万円。さらに2割の頭金で借入額3200万円なら返済額は9万0331円に減って、総返済額は3794万円。

頭金ゼロに比べると総返済額は948万円も少なくなる。当初の頭金の600万円を差し引いても348万円トクする計算だ。

(2)頭金割合と適用金利
加えて、多くの金融機関では頭金割合によって適用金利が異なるという問題がある。民間ローンの変動金利型ローンは、頭金が2割あれば0.625%だが、2割未満は0.825%など適用金利が高くなるところが多い。

住宅金融支援機構と民間提携のフラット35でも、頭金1割以上なら35年返済の金利は1.06%からに対して、1割未満だと1.50%からに上がるので、頭金が多いほど返済はラクになる。借入額3000万円で試算すると、金利1.06%なら毎月返済額は8万5527円だが、1.50%だと9万1855円に増加。年間にすると7万5936円、35年間では約266万円もの差になるのだ。

新築マンションでは2割の頭金を用意している

実際に皆さんどれくらいの頭金を用意しているのか――住宅金融支援機構の『2015年度フラット35利用者調査』をみると、建売住宅を買った人で頭金は取得価格の12.3%、新築マンションで20.9%、中古一戸建てで10.5%、中古マンションで13.5%となっている。

比較的価格の安い中古一戸建てなどでは、低い金利が適用されるギリギリの10%強の頭金だが、価格が高い新築マンションだと2割の頭金を用意して、借入額を少なくしようと努力しているようだ。

一定の年収に達している人であれば、頭金が少なく、借入額が多くても返済に問題はないかもしれないが、それでも頭金が多いほど返済負担が軽くなり、長年の間には何百万円もの負担の差につながるのだから、できるだけ頭金割合を高くするのが安心で得策だ。

頭金以外に税金、手数料などの諸費用が必要

住宅を取得するときには、頭金以外にさまざまな費用が必要になることも忘れてはならない。主なものを挙げてみるとこうなる。

(1)税金関係
取得時には売買契約書やローン契約書作成に必要な印紙税が、登記に当たっては登録免許税が、取得後には都道府県税としての不動産取得税がかかり、取得後には市町村税としての固定資産税・都市計画税がかかる。

(2)ローン費用
お金を借りるにもお金がかかる。事務手数料、保証料、抵当権設定費用などがある。最近は保証料なしのローンも増えているが、その分、当初の事務手数料が高かったりするので注意が必要だ。

(3)各種手数料
不動産登記に当たっては司法書士に依頼することになり、その報酬負担が出てくる。また、仲介会社を通して物件を取得するときには、仲介手数料が必要。原則的に物件価格の3%+6万円に消費税が上乗せされる。

なお、仲介手数料がかかるのは中古住宅だけと思い込んでいる人が多いだろうが、新築の建売住宅でもいわゆるビルダーと呼ばれる中堅メーカーの物件は仲介会社を通して販売しているケースが多く、その場合には新築であっても、仲介手数料が必要になるので注意しておきたい。

(4)引越し関係費用
新居への入居に当たって、各種インテリア、家具、照明器具、カーテンなどが必要になる。住宅金融支援機構の調査では、平均すると建売住宅を買った人で約105万円、新築マンションで約86万円をかけている。そのほか、引越し専門業者への支払い、ご近所などへの挨拶費用などもかかる。

以上を合わせると、仲介手数料のかからない物件で購入価格の3%から5%程度、仲介手数料がかかる場合には、それに3%程度上乗せして準備しておくのが安心だろう。先の契約時の頭金が1割としても、それに最低でも3%程度の諸費用負担がかかるので、合計13%が最低ライン。のちのちの負担の軽減や安心感などを考慮すれば、やはり2割程度の自己資金を準備しておくのがいいのではないだろうか。

足りないときにはこんな調達法も

しかし、自己資金が足りなくても、絶対に買いたいという物件が出てきてしまったら、何とかしたいもの。特に、新築マンションだと自分たちのほしい場所には、年間1棟、2棟しか出てこないのがふつう。人気の高いエリアではすでに開発が進んでいることもあって、2,3年に1棟しか出てこないといったこともあるだろう。それを逃してしまうと、次はいつになるのか不安。そんなときには、いろんな方法で資金調達を考えてみよう。

(1)親の脛をかじってみる
両親や祖父母などの直系尊属から住宅取得資金贈与を受けるときには、700万円(質の高い住宅は1200万円)まで贈与税が非課税になる特例が実施されている。

親というのは、あまりお金に余裕がなさそうでも、子どものためなら何とかしようと頑張ってくれるもの。何千万円もの資金贈与は無理でも、数百万円程度なら何とかしてくれるかもしれない。貰うのが忍びないのであれば、借用書を作成して少しずつでも返済する形にすれば、親御さんもお金を出しやすくなるかもしれない。

(2)資産の棚卸をしてみる
へそくりはもとより、眠っている資産はないかシッカリとチェックしてみる。なかでも注目しておきたいのが生命保険。

住宅ローンには団体信用生命保険が付いていて、万一のときにはローン残高分の保険料が下りて、残高はゼロになる。したがって、住宅ローンを組むということは、借入額相当の生命保険に入るのと同じことであり、複数の保険に入っている人であれば、そのうちのひとつを解約してもいいかもしれない。

返戻金のある保険ならそれを頭金などに回すことができるだろうし、そうでなくも、毎月の保険料支払いがなくなるので、資金計画が立てやすくなる。

住宅資金づくりはより安全な運用方法で

それでも、なかなか必要な自己資金に達しないというのであれば、ここはいったん取得を見送って、じっくりと資金づくりに戻るのも勇気ある決断だろう。改めて、3年計画、5年計画などを立てて、必要な資金を用意するようにしたい。取得を決断した以上は、10年、20年といったスパンではなく、できるだけ期間を短くして、資金づくりを急ぐのがいいだろう。

あまり期間が長いと、その間にライフステージ、ライフスタイルなどが大きく変化してしまう可能性があるし、住宅価格や住宅ローン金利が大幅に上昇するリスクがある。せっかく自己資金を増やしても、価格の高騰によって「やっぱり買えない」というのでは努力が水泡に帰する。

といって、自己資金づくりを焦って、ハイリスク・ハイリターン商品で運用するのは避けたい。超低金利下だけに、元本保証の安全な金融商品は利回りが極端に低くなっているが、それは仕方がないこと。その分、住宅ローン金利も低い金利になるのだから、差し引きすれば決してソンばかりではないと考えて、定期預金、財形貯蓄など、より安全で確実な金融商品を利用したい。毎月5万円、年間60万円、5年で300万円など、明確な目標を立てて、確実に実践していくことが肝心だ。

そうした努力が、住宅取得後のローン返済生活への予行演習にもなるし、住宅ローン利用に当たっては、そうした計画的な貯蓄行動が金融機関の担当者の心証アップにつながるという効果も期待できる。

山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『家を買う。その前に知っておきたいこと』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)などがある。山下和之のブログ: http://yoiie1.sblo.jp/

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