高額所得の高齢者が介護保険サービスを受ける際の自己負担が、来年2018年8月から3割に引き上げられる。改正介護保険関連法が26日参院本会議で可決、成立した。
65歳以上に導入された介護サービスの自己負担額は原則1割だが、2015年から一定の所得(単身で年金収入のみの場合年収280万円以上)のある人は2割になった。3割負担になる所得水準は、今後政令で決める。厚生労働省は単身の高齢者で現役収入並みの340万円(年金収入のみでは344万円)以上、夫婦世帯で463万円以上を検討している。
介護給付総額は、介護保険制度が始まった2000年度から3倍に近い10兆円に膨らんでいる。団塊の世代が75歳以上になる25年度には約20兆円に倍増するとの試算もある。厚労省は新制度導入で、年100億円ほどの介護費の抑制効果があると見ている。
3割負担の高齢者は全体の3%、約12万人
厚労省によると、3割負担に該当する高齢者は、全利用者の3%相当、約12万人である。
改正法では、給与の高い大企業の社員らの保険料も増やし、支払い能力に応じた負担を求める。また40-64歳の保険料(労使折半)は、収入に応じて増減する「総報酬割」を今年8月から段階的に導入、20年度に全面実施される。大企業中心に約1300万人は負担増となり、中小企業中心に約1700万人は負担減となる見通し。今年8月からまず保険料の2分の1に反映して、段階的に割合を増やし、2020年度に全面実施される。
改正法ではこのほか、高齢者らが長期入院する介護療養病床は、廃止時期を当初予定の17年度末から23年度末に延長する。医療の必要性などに応じて3つのタイプに分けられる新たな施設「介護医療院」に移ってもらう。
このほか住民の要介護度をどれだけ改善・維持できたかなどの成果に応じて、国が自治体を財政支援する仕組みも導入して、18年度から実施する。また悪質な有料老人ホームの指導監督を強化し、現在より厳しい「事業停止命令」措置を18年4月からスタートする。
介護保険料滞納者には厳しいペナルティー
改正法には、厚生労働委員会の付帯決議付きで、自己負担割合が2割に引き上げられた前後の介護サービスの利用状況の変化や家計負担の推移などについて実態調査を行ったうえで、3割への引き上げに必要な措置を講じるよう求めている。
20年度の全面実施後、負担増となる高齢者の保険料は、現在より月平均700円余り増える見通しである。これによって国費は、年間約1600億円抑えられると厚労省は試算している。介護保険は滞納すると、滞納年数に応じてペナルティーが付き、滞納1年でも介護サービス利用料は全額負担となるので要注意である。それ以上の年月の滞納は、もっと厳しいペナルティーを覚悟しなければならなくなる。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)