ドル円予想レンジ 110.20- - 113.10

「月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして(月は違う月なのか。春は昔の春ではないのか。私だけが昔のままで、それ以外は全て変わってしまったか)」-。これは「古今和歌集」「伊勢物語」に収録されている在原業平の和歌だ。

6/8は「米英欧」の変化に警戒

筆者は前出の和歌同様、以前と変わらぬ円に対し、円安を阻む主要3通貨の変化を警戒している。まずは米ドルに関して。5/22週号では「トランプ・ロシアゲート問題」の長期化懸念、として1972年に表面化したウォーターゲート事件が約2年2カ月に及んだことを指摘した。

米上院情報委員会によると、ロシアの米大統領選挙への介入疑惑に関して、解任されたコミー前FBI長官が6/8に証言を行う予定だ。

「Rate hike likely appropriate soon (まもなくの利上げが適切)」とブレイナード FRB理事が5/30に発言しているが、不定見な米政治懸念は、6月以降のFRB金融政策にも影響を及ぼしかねない。

次に英ポンドである。英紙によると“British PM May could lose majority”、つまり6/8の英総選挙で、メイ首相率いる保守党が過半数議席に達しない可能性を指摘。保守党敗北の場合は英EU離脱交渉が混迷を極め、昨年6/24英EU離脱決定時に発生した“悪夢のリスクオフ”再現も否定できない。

最後は欧ユーロだ。5月ユーロ圏消費者物価指数は前年同月比で1.4%上昇したが、欧州中銀ECBが緩和の出口に舵を切るには決め手を欠く結果だった。恐らく6/8のECB会合ではドラギ総裁は慎重な姿勢を示すだろう。しかし、現策批判の独政府を“忖度”するなら、景気認識の上方修正や緩和策の一部是正の可能性も否定できない。

為替2 6/5週の円は6/9の満月に向けてドル・ポンド・ユーロ動向に警戒。日足・月足一目均衡表雲上限、月足ボリンジャー中心線の111.405-111.596-111.82を意識した展開を推考。上値焦点は5/24高値112.13、5/17欧米時間下落前の戻り高値圏112.50-55、5/17高値113.12。下値焦点は5/23安値110.85、5/31安値110.48、200日線推移の110.245圏、5/18安値110.23。割れたら4/24-25安値圏109.60-65が最終橋頭堡。

為替見通し6-2

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト