ドル円予想レンジ 108.10-112.50

「If the economy performs about as expected, I would view it as appropriate to continue to gradually raise rates(経済がほぼ予想通りに進展した場合は、緩やかな利上げを続けるのが適切だろう)」-。

これは6/1のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)理事の発言だ。至極当然の見解だが、6/14連邦公開市場委員会(FOMC)で警戒すべき点をひとつ感じている。それはイエレンFRB議長が経済予想と物価をどのように捉えているかである。

FRBの使命は「雇用」、そして・・

FRBの金融政策目標は連邦準備法(Federal Reserve Act)で定められており、いわゆる「最大雇用」、「安定した物価目標」が二つの使命とされている。しかし、「低い長期金利」も掲げられているのはあまり知られていない。無論、前出の二つの使命が全うされれば金利は適正に準ずる筈、との理解で取り沙汰されないのだが、筆者はこの部分を取り沙汰して、トランプ大統領が低金利にこだわっているものと理解している。

これらを踏まえて焦点はひとつ。4月個人消費支出・実質物価指数が前年同月比で2月以降、伸び率が鈍化している点だ。同指数の鈍化、下落傾向パターンは2016年4月から3カ月間続いた時以来である。FRBの使命はもとより、慎重なイエレン議長が気にしそうなデータではないか。さすがにトランプ大統領を“忖度する”とは思わないが、声明や会見で景気停滞、物価の足踏み状態に懸念を示せば、次回利上げ時期は年後半以降に先送りされるとの見方が拡がることは十分考えられる。

シカゴFEDウォッチを見ると、6/14のFOMC利上げ確率は90%以上で、市場は利上げを既に織り込んでいる。しかし、その後の利上げ時期は不透明で、12月FOMCでの利上げ確率は38.2%(6/9時点)。つまり年内据え置き予想派がそれを上回っているのだ。市場が6月FOMCで利上げ出尽くし、量的緩和購入保有資産の圧縮に慎重、との判断を強めれば、年内利上げを読んでいた向きもドル縮小に動く可能性を否定できない。3月利上げ時は期待剥落の空気で8日連続陰線だったのだ。6/14FOMCでは緩やかな利上げの継続と物価情勢を注視する姿勢との整合性に要警戒だ。

6/12週のドル円上値焦点は、200日線、日足一目均衡表雲上下100.40-111.80-112.10を仰ぎ見る格好で5/24高値112.13、5/17欧米時間下落前の戻り高値圏112.50-55、5/17高値113.12が期待値。下値焦点は6/8安値109.39、6/7安値109.10。下抜けたら4/21-20安値圏108.875-72、4/18-19安値圏108.37-31、4/17安値108.11。割れたら2016/11/09 トランプラリー開始からの61.8%戻し107.865留意。

為替見通し6-9

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト