皆さんは老後の生活をどのようにイメージしているのだろうか? 上流老人や下流老人、老後破綻といった老後の生活を極端にとらえた表現を耳にするが、現在が「中流」であればそのまま老後も「中流」で良いのではなかろうか?

ここでは、「中流老後」を目指すための秘訣を考えてみたい。

「上流」「中流」「下流」老後ってどんな老後?

老後,生活
(写真=PIXTA)

老後の生活費は地域や環境によってばらつきがあり、一概にいくら持っていれば「上流」という定義を決められないのが実情だ。

そこで、意識調査に着目してみることにした。

平成23年内閣府発表の「高齢者の経済生活に関する意識調査」を見ると60歳以上の男女で「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と答えた人が平均で18%だ。この意識を持った人たちを「上流老後」ととらえても良いのではないか。

「家計にゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人たちの平均は53%で、この意識の人達はまさに「中流老後」と定義したい。そして、平均6.6%の「家計が苦しく、非常に心配」な人たちは「下流老後」ではないか。

また、21.7%が「家計が苦しく、非常に心配」な人達だが、これらは現段階では「中流」だけど病気や介護になってしまったり、長生きしたりすると「下流老後」に転落してしまうかもしれない「下流予備軍」ととらえても良いだろう。この調査を踏まえて皆さんに目指してほしい老後は「中流」だ。

「中流老後」ってどんな生活?

では、「中流老後」とはどういった生活なのだろうか。それは、現在の現役世代の平均年収(平成28年度)442万円前後で生活している生活レベルを保つことである。

老後は生活費が下がると思いがちだが、基本生活費は大きく変わることはない。食費や光熱費、保険料など生活スタイルが変わらなければあまり下がることはないのだ。確かに教育費やローン返済が終われば住居費は減るだろう。

しかし、家にいる時間が多くなる分、光熱費はかさむ。老後は健康を保とうとして健康食品や健康器具の購入の支出も増加傾向だ。また、時間がたっぷりあるため習い事をしたり、旅行にいったり、お付き合いが増えたりと、これまでかからなかった費用がかかる。そして、医療費や介護費も現役世代に比べて多くかかるのだ。

平成26年の「総務省統計局の家計調査報告」によれば高齢無職世帯の平均支出額は月28.3万円となっている。年収にすると約340万円だ。平均的なこの金額が「家計にゆとりはないがそれほど心配なく暮らしている」という「中流老後」につながるのだと思う。つまり、平均的な年収の方は身の丈にあった現在の生活をそのまま老後を迎えられれば「中流老後」という事だ。

プチセレブは「下流老後」への転落する危険も

では、少々年収の高い、いわゆるプチセレブ世帯はどうだろうか? 実はこのプチセレブ世帯は年収が平均以上であるため生活が贅沢傾向だ。そのため、住宅や自動車、身の回り品、被服費、子どもの教育費にお金をかけすぎて思ったより貯蓄ができていない。そうなると、今はプチセレブでも老後はそうはいかない。

なぜなら、もらえる年金は平均的な年収の世帯と大きく変わるわけではないからだ。退職後、プチセレブのチョット贅沢な生活を改められればいいのだが、贅沢癖が抜けないと資金不足に陥り「下流老後」への転落への危険性が高い。

「中流老後」を目指す8つのポイント

そこで、「中流」老後を目指すポイントをあげてみたいと思う。

(1)節約を楽しむ
苦しい節約という意識をなくし節約を楽しむ体質づくりをしよう。また、物を大切にして長く使うことを心掛けよう。

(2)毎月決まった額を積み立てる
コツコツ決まった金額を積み上げていくことが老後資金を準備する最大の方法だ。

(3)住宅ローンや教育ローンは退職までに完済
老後は就労による収入が得にくくなるためローンは退職後まで残さないことは必須である。繰り上げ返済も視野を入れよう。また、頭金なしの住宅ローンやオーバーローンは避けること。

(4)教育費や子どもにお金をかけすぎない
塾や習い事は周りがやっているからという視点ではなく子どもに合わせて良く精査しよう。

(5)投資の勉強をし、投資を始めてみる
NISAや確定拠出年金など老後資金準備に投資という選択肢が一般的になってきたため、まずは投資について仕組みや考え方をしっかり学びチャレンジしてみよう。

(6)保険の見直しをする
保険は保険会社や商品によって大きく違いがあるためライフプランにあわせ将来のリスクをしっかりカバーできるものにしよう。

(7)自分へのご褒美を理由にお金を使わない
最近は自分にご褒美といってプチ贅沢をする人を多く見受けるが、自分へのご褒美は年間予算をたて予算オーバーしないようにしよう。

(8)夫婦で働く
1馬力より2馬力になれば老後の年金も増えますし貯蓄も多くできるはずだ。

自分に合った方法を見つけること大事

物の豊富な現代では誘惑も多くついついお金を使いすぎてしまうが間違いなく老後は今より収入は減るのだ。お金を使わないと幸せを感じないのではなく、お金を使わなくても幸せを感じられるにはどうしたら良いかを考え、自分に合った方法を見つけることが「中流老後」へ結びつくのではないだろうか。

廣木智代 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録パートナー。