食品大手カゴメが伊藤園のトマト飲料製法の特許無効を訴え、取り消しを求めていた訴訟の判決で、知的財産高裁(森義之裁判長)がカゴメの訴えを認め、特許を有効とした特許庁の審決を取り消す判決を下した。

争点は、トマト以外の果汁を加えずに「濃厚な味わい」やフルーツトマトのような甘みを出す技術である。伊藤園が2013年に特許を登録した。カゴメはその一部技術が自社のそれを使ったと主張して特許無効を特許庁に申し立てたが認められなかったため、提訴していた。

濃厚な味わいと甘みで取得した特許めぐる争い

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(写真=PIXTA)

伊藤園のこの製法は2013年、特許庁に受理された。具体的には、トマトジュースを作る際に、糖度やアミノ酸含有量を一定の範囲内にすればトマトの酸味が抑えられ、フルーツトマトのような甘みや濃厚な味わいを生み出す技術だとされる。

これに対して、カゴメは「製法の定義があいまいだ」として、「主観的な感覚である『味』をいくつかの成分の割合だけで決めることはできない」と反論した。カゴメは、特許の無効を主張して特許庁に審判を請求したが、16年の審決で退けられ、同年3月提訴した。

カゴメ側は弁論で「『濃厚な味わい』などの具体的な定義が不明で、裏付けるデータも少ない」として、特許の要件を満たしていないと主張した。伊藤園側は「トマトジュース市場に新たな分野を開拓した、意義がある発明だ」と反論した。

今回の判決によると、森裁判長は特許で示された製法が「濃厚な味わい」などを裏付けているとはいえないと、特許そのものを無効と判断した。同裁判長は「(甘みや酸味だけでなく)苦みなどの要素の影響を踏まえた評価試験が必要」と指摘した。

伊藤園の「理想のトマト」がやり玉に