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2014年3月。格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、「ブラジルのソブリン(国債とかの事)」の格付けを「BBB」から「BBBマイナス」に引き下げました。

この「BBBマイナス」とは、「投資適格級」で最も低いものです。ブラジルの国債がこの評価を受けるということはどういうことなのか?今後のブラジル通貨「レアル」の見通しについて考察を加えて行きたいと思います。

首都はリオではなくブラジリア

まず、ブラジルそのものについて。ご存知の通り、ブラジルは南アメリカに位置し、南米で最大の面積を誇ります(日本の22.5倍。)これは、なんと「ヨーロッパ全体」の大きさに匹敵します(ロシアをのぞく)。ブラジルといえばリオのカーニバルが有名ですが、首都はリオではなく、「ブラジリア」というところです。

さらに、ブラジルは資源国として有名です。コーヒーやとうもろこしはもちろん、ブラジルは気候がよく山岳・砂漠地帯がないため、広大は農業利用可能な面積を保有しています。(利用できる面積は、日本の「国土」の10倍はあると推測されています。)また、実は地球上の20%の水(淡水)をブラジルが保有しています。

さらにブラジルの右下の海域(リオの近く)では油田の開発が進み、ブラジルが誇る世界トップレベルの採掘技術により油田からの産出量が拡大しています。今後石油国となる可能性が十分にあります。食料たくさん生産できて、さらに石油までたくさんとれたら最高ですね。

世界的にみてブラジルの国力は7位。

その国の実力を示すものとして、GDPがあります。これは、「実際1年間に国家で生み出された生産物やサービスの金額」の総和です。ブラジルは、ロシアを抑え、世界7位(2兆2420億ドル)にまで上り詰めました。

ちなみにGDPの世界ランキング(2013年)は以下となります。
1位 アメリカ(ブラジルの7.5倍)
2位 中国  (ブラジルの4倍)
3位 日本  (ブラジルの2.2倍)
4位 ドイツ (ブラジルの1.5倍)
5位 フランス(ブラジルと同水準)
6位 イギリス(ブラジルと同水準)
7位 ブラジル ←ここ!!
8位 ロシア (ブラジルと同水準)

これをみると以下にブラジルが「キテる」かわかりますね。もちろん、GDP単体のみでなく、毎年どのくらいGDPが伸びているか(企業でいう売上が伸びているか)という「経済成長率」も、とても重要です。まあ、スペースの関係上、それは次回やりましょう。

金利の高さは中国・トルコを大きく引き離す!ダントツの「11%」

そして、なんといってもブラジルの魅力は「金利の高さ」。もともと上記の国の中でも突出して金利は高かったのですが、先日2014年4月にブラジルはその金利をさらに上げました。その数値、11%!

上記GDP上位国の中でのランキングは以下となります。
1位 ブラジル 11%
2位 中国   6%
3位 ロシア  7%
4位 イギリス 0.5%
5位 アメリカ 0.25%
5位 ドイツ  0.25%
5位 フランス 0.25%
8位 日本   0.1%

ブラジルの圧倒的な勝利です。日本の110倍とは。。。年間11%も利回りを出す商品、なかなかないです。もちろん、為替レートの変動によって利回り以上の損失を出すこともあるのですが。

実は借金返せなかった?ブラジルの暗い過去

では、他のリスクは考えられるのでしょうか?そもそも国債というのは国にお金を貸すことで、その利子を国がつけて返してもらうことです。

ということは、国が借金を抱えすぎてお金を返せなくなる。これを「デフォルト」といいます。
この「デフォルト」がリスクとして挙げられます。

実はブラジルは、1990年にこのデフォルトを経験しています。総額で620億ドルの債務を抱え、破綻しました。これは当時史上最大のものでした(アルゼンチンのデフォルトがその後その額を上回りますが)。

620億ドルは今のブラジルのGDPにすればちょろいものですが、当時のブラジルGDPは465億ドルだったので、その衝撃はすさまじいものでした。借金が返せなくなるということはブラジルの信用は失墜するということ。その結果通貨の価値は大暴落!通貨の価値が暴落するということは、ブラジル国民の財布の中身が「紙切れ寸前」となり、3,000%というハイパーなインフレを引き起こしました。

もし日本で同じようなデフォルトがおこったら牛丼が90万円になる?

日本を例にしてみましょう。ある日突然、日本政府がデフォルトしたとします(日本はデフォルトしないという反対説はひとまずおいておいて)。そしてブラジル同様のハイパーインフレが起きるとどうなるか?

財布に30万円入っていたのが、その価値が100円になってしまうのです。1,000万円を預けてたらその価値がいきなり3,000円そこらになってしまうようなものです。吉野家の牛丼が1杯「90万円」になり、缶コーヒー1杯「30万円」になるんですから、それはもう仰天しますよね。
(ちなみに実際、食料品はインフレ率が5,000%だったので、牛丼は150万円となります。卵トッピングしてサラダもつけるとなんと245万円!)

こういった場合、政府が混乱を避けるために「預金封鎖」をするので、預金は出せなくなります。三井住友に預けてる給料も、新生銀行に貯めているあのヘソクリもだせなくなります。日本円でもっている資産が一気になくなるとはこのことです。そうなると、ある日突然日本国民のほとんどが一文無しになります。

「かつて南米No1の経済大国」アルゼンチンでも、実際に起こりました。2001年のハイパーインフレにより多くの人が一気に貧困層になりました。
「国家が金返せない」というのは現実に起こりうる話なのです!

この時、ドル建てなど、外貨で資産をもっている人々は、貧困層にはならなかったのです。普段から「分散投資をしましょう」ということがあちこちで言われているのも頷けます。

そしてブラジルでも預金封鎖(当時の大統領の名前をもじってコロールプランといいます。)が行われ、多くの企業が倒産しました。失業者の数はすさまじいものだったといいます。

また、同じようなデフォルトが2014年以降に起きれば、レアルの価値も大暴落するため、そうしたリスクは十分勘案する必要があります。

ゴールドマン・サックスも目をつけた!注目されるブラジルの「3つ」のポイント。

つまり、冒頭に戻りますが、ブラジルの格付けが「BBBマイナス」に引き下げられたということは、デフォルトに陥るリスクが高まったということと同義なのです(もちろん未だ投資適格級ではあるので、リスクが高まったといってもちょびっとですが。)ちなみにS&Pの格付けはDまであります。

そんな劣等国ブラジルも今では通貨が安定し、GDPもしっかり成長し、ゴールドマン・サックスに「BRICs(ブリックス。ブラジル・ロシア・インド・中国の4カ国のこと)」と命名してもらい、今後伸びる国として注目されるまでに至りました。日本でも、レアル建ての金融商品が絶賛大人気です。

さらに今年はサッカーワールドカップも控えています。くろきんも大ファンの、ネイマールの活躍により、ブラジルは自国優勝を飾ることができるのでしょうか?そして、2016年にはリオデジャネイロでオリンピックも控えています。

くろきん的には、これら国際的スポーツイベントが開かれるからといって即座に国力・レアルが上がるとは思っていないのですが、インフラ整備などで、国力上昇のトリガーにはなりえるとは考えています。

今日のポイントをまとめると、3点です。

  • 金利はすごく魅力(段違いで高い)
  • デフォルト(債務不履行)にはすこし気をつける(過去経験済み)
  • 経済の伸びにはまだまだ期待(現状のGDP平均2%では足りない)

認定テクニカルアナリスト&カラアゲニスト くろきん
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