medium_5191186129


新興国通貨の信用力

フリーライターとして活動しています『ひとし』です。私は経済や投資にたいへん興味があり、このような記事を書かせていただく機会を作ってくれたことを非常に喜んでいます。ZUUさんでは初めての記事になりますが精一杯頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いします。さて、今回のテーマは『新興国通貨の信用力』です。1997年にアジア各国を襲った通貨危機を通して新興国通貨の信用力について持論を展開させていただきます。

リーマンショック後のユーロがギリシャの債務問題で暴落した背景には、アジア通貨危機と同じく投資家やファンドの投機的な仕掛けがあったのは周知のとおりです。ユーロ圏ほどの巨大な規模のマーケットでも1ユーロ100円を割るまで暴落したのですから、新興国の小規模のマーケットにおいて投機的な仕掛けが行われた場合どこまで信用を保てるのか考えてみる必要がありそうです。


アジアの新興国を襲った通貨危機とは?

アジアに住む我々日本人にとってアジアの通貨危機に対する問題はもはや他人事ではありません。1997年のアジア通貨危機でも日本の経済に大きく影響を及ぼしたのは記憶に残っています。新興国ではこのような金融危機が再度おこらないように準備をしていますが、そもそもなぜアジアの通貨危機がおきてしまったのでしょうか。詳しくは次項で述べさせていただきますので、簡単にまとめてみます。新興国は為替レートを固定するドルペック制を用いていました。金利を高く設定し海外から資金をよびこむシステムが基盤だったのです。経済成長の発展は通貨安の輸出が担っていましたが、不健全な財政と常に経常赤字という問題を抱えたままという状態でした。そうしたなか、1995年通貨安から方向転換したアメリカの「強いドル政策」によって新興国の通貨が上昇したことでそれまで好調だった経済に影を落とし始めることになります。


なぜ通貨危機が起きたのか?

「強いドル政策」による米ドルの上昇により、新興国通貨も連動して上昇したことが始まりでした。通貨安による輸出のメリットが逆に通貨高になったことで輸出が伸び悩みだしたのです。もちろん経済成長は鈍化していきました。強い通貨と弱い経済に投資家心理としては疑いを持ち始め、ファンダメンタル的にリスク回避の雰囲気がでてきたのです。そこに目を付けたのがヘッジファンドです。強い通貨と弱い経済というアンバランスが新興国通貨の価値はもっと安くなければおかしいと新興国通貨の大規模な売りを仕掛けました。ファンダメンタルがリスク回避となっているところへ大規模な売りが入ったことから為替の流れは新興国の通貨安へ傾きます。外貨準備高を十分積み上げていなかった各国は固定相場を放棄して変動相場制を導入せざるをえなくなり暴落の道へ突き進んだのです。通貨危機は深刻な経済的打撃を新興国にあたえ、タイ・インドネシア・韓国はIMFに支援を申し入れ国際的な協調体制で事態の収拾を委ねるまでにいたりました。


経験を活かした通貨危機への対応策とは?

アジア通貨危機で根本的な問題は経常収支・財政健全化はもちろんですが外貨準備高の不足があげられます。急激な為替変動による防止策になりますが、1997年当時はこのようなリスクに対しての十分な外貨準備高を用意していなかったのを教訓にして、新興国の外貨準備高は2012年3月時点で7兆ドルまで積み上がっています。この数字は先進国の約2倍にあたります。この外貨準備高はその国の信用力を示す重要な項目として位置づけられていまして、新興国のそれは海外から資金をよび込むために増加傾向にあります。通貨危機を経験したうえで自国の通貨の信用力を高めようという取り組みは他にもあります。ASEAN+3で通貨危機時の地域金融協力の話し合いがもたれ、アジアという枠組みでこのような問題に取り組もうという意識が持たれてきています。


新興国通貨のリスクは払拭されたわけではない

通貨危機のリスクは回避されたのかというとそう楽観的にはいきません。最近、為替を投機的に仕掛けてくる投資家やファンドが目立ちます。ユーロ圏の債務問題もそうでしたが、狙われた通貨は慎重な対応を求められます。以前、日本もこの投機の標的にされたこともありましたが回避できたのも日本の経済と円の対外的な信用があるからではないでしょうか。円は米ドル・ユーロと「相対的に」比較されて為替が流動しているとよくいわれますが、円は世界で第3位に流通量の通貨なのでやはり国際的にも信用があります。アジアの新興国の場合は、マーケットの規模が小さく投機の対象になると不安は拭えません。2013年8月米の量的緩和QE3が終わりへ向かうというメッセージで新興国通貨が不安定になってしまったのが物語っています。米経済の安定で新興国の経済も底上げ感はありますが、ファンダメンタル的な現象で投資された資金が再び海外に流出しないともかぎりません。最悪なケースを想定して、自助的な努力だけではなくアジアの地域的な枠組みで備えていくべきだと思います。それには日本以上に米ドルを保有する中国の援助等も視野にいれていかねばならず、尖閣諸島等も含めた政治面でのアジアの問題を解決していかなければなりません。アジアの安定が新興国の経済に安定をもたらし新興国通貨の対外的な信用力も認められるのです。

このような問題を投資に関連づけますと、経済の問題ふまえれば投資先を選ぶ判断材料になります。投資材料になる情報を収集し解析することは非常に重要になりますので、日々アンテナをはっておくことを怠らずに心がけましょう。それでは最後までおつきあいくださりありがとうございます。

photo credit: paul bica via photopin cc