「割安感があって将来的に値上がりも期待できそうだし、リタイア後しばらくしたら海外で悠々自適も魅力的……」そのように感じて、オーストラリアやハワイの不動産に投資する人も多いかもしれません。

保有する不動産の場所がどこであれ、資産は資産です。子どもや孫がそれらを受け継ぐ場合には、当然ながら贈与税や相続税がかかります。購入時にはつい見落とされがちな海外物件にかかる「税金」ですが、一体どのような扱いになるのでしょうか。

「海外資産は税制上有利」は通用しない

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(写真=Love Silhouette/Shutterstock.com)

かつては、相続税法上、日本国外に居住している相手に対して海外資産を贈与する場合は、課税対象外となっていました。バブル期以降には、富裕層を中心に海外資産への投資が増えたのですが、そこには「贈与税・相続税回避」という理由もありました。

例えば、贈るべき相手である息子が日本に住んでいたとしても、形式上海外に住民票を移して「非居住者」という体裁を取れば非課税になってしまうなど、そのようなケースも実際に起きていたのです。

しかしその後、段階的に税法が改正され、こうした海外資産に対する課税の体制が強化されることになりました。国税庁サイトの「タックスアンサー」によれば、以前は非課税だった「相続人が外国に居住」の場合であっても、次のようなケースでは日本国外にある財産についても相続税の対象になるとしています。

1. 財産を取得したときに日本国籍を有している人で、被相続人又は財産を取得した人が被相続人の死亡した日前5年以内に日本国内に住所を有したことがある

2. 財産を取得したときに日本国籍を有していない人で、被相続人が日本国内に住所を有している

海外不動産の相続税はどのような基準で算定される?

相続税とは、残された財産の額に応じて課される税金です。したがって、預貯金のようにストレートに「金額」が分かるものは計算が簡単ですが、不動産や書画骨董などの場合は、それがどれだけの価値があるのか、金額に算定するプロセスが必要になります。

国内、国外に関わらず、こうした「お金以外の動産・不動産」の相続税は、相続した時点での時価が基準となるのですが、実際には不動産の場合、その「時価」に若干の違いがあります。

国内の不動産の場合は、固定資産税評価額が基準となります。固定資産評価額は最終的に市町村が決定するものなので多少のばらつきはあるのですが、基本は相場に応じて上下するものの、実際の市場価格よりは低く算定されています。

海外不動産の場合、日本の固定資産税評価額や路線価のような指標がある場合にはそれを参考に、それがない場合は実際の売買価格をもとに評価が行われます。仮に日本の場合とよく似た固定資産税評価が行われ、実勢価格よりも割り引いた計算が行われているなら別ですが、そうでない場合は、ダイレクトに実勢価格が相続税に跳ね返ってくることになります。

つまり、この点でも「海外不動産は決して相続税対策として有利ではない」と言えそうです。なお、海外不動産について、現地で税法上相続税に相当する税金を納める必要がある場合には、その分は日本で外国税額控除を受けることができます。少なくとも「相続税の二重払い」だけは心配せずに済むわけです。

海外不動産投資の際は税金に注意

投資対象として魅力的な海外不動産ですが、相続時のことを考えると注意が必要となりそうです。日本国外にある財産の課税についても、今後の制度・法改正をチェックしていきましょう。(提供: IFAオンライン

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