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こんにちは、経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている「たけやん」です。宜しくお願いします。今回は、3つの為替レートである「狭義の為替レート」・「名目実効為替レート」・「実質実効為替レート」の違いを説明します。その上で、それぞれの使い方を説明しましょう。


3つの為替レート

冒頭では、

(1) 狭義の為替レート

(2) 名目実効為替レート

(3) 実質実効為替レート

と3つに分類しましたが、厳密には狭義の為替レートは「名目為替レート」と「実質為替レート」に分類されるので、4つになります。
大雑把に分けるなら「為替レート」と「実効為替レート」の2分類で十分であり、この3分類は統一感に欠けるのですが、説明の便宜上、実効為替レートを2つに分ける必要があるので、この3分類にしています。


狭義の為替レート

前節の通り、狭義の為替レートは「名目為替レート」と「実質為替レート」です。名目為替レートは、いわゆる一般的に「為替レート」と言った時の為替レートを指し、現在の2通貨間の取引相場の名目値を言います。日々値動きし、報道されている「1ドル=◯◯円」といった時の為替レートです。実質為替レートは、この名目為替レートを2国間の物価指数の比で調整したものです。


名目実効為替レート

為替レートと言っても、円ドルレートや円ユーロレートだけでなく、様々な通貨との組み合わせがあるので、経済全体の動向と為替レートの関係を見るときには、一部の為替相場だけを見る事に問題がある事があります。実際、国際決済においてもドル以外の通貨を使う事も増えており、円ドルレートだけでは本質を見誤るかもしれません。そこで、様々な通貨とのレートを、各地域との貿易額で加重平均したレートを、名目実効為替レートと言います。次節の実質実効為替レートと合わせ、実効為替レートを作成しているのは国際決済銀行(BIS)で、広域実効為替レートと狭域実効為替レートがあります。

狭域実効為替レートは、主要27カ国と地域の通貨について実効為替レートの推移を示しており、1964年からのデータがあります。広域実効為替レートは、61カ国と地域の通貨に拡張したデータで1994年からのデータがあります。より厳密に実態を知るには広域実効為替レートが良いですが、長期系列のデータが必要なら狭域実効為替レートを使うのが良いでしょう。世界中の実効為替レートのデータは以下からダウンロード出来ます。

参考:BIS effective exchange rate indices(国際決済銀行BIS)

日本の実効為替レートのデータとグラフだけなら、日本銀行の「時系列統計データ検索サイト」において「主要指標グラフ」の「為替」を選択すれば参照出来ます。

参考:時系列統計データ検索サイト(日本銀行)


実質実効為替レート

実質実効為替レートは、前節の名目実効為替レートをインフレ率で調整したものです。

下図は、実質実効為替レートと名目円ドル為替レート(スポット)の推移を示しています。赤線が円ドルレート、青線が実質実効為替レートです。実質実効為替レートは、2010年が基準値100になっています。
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図:日本の実質実効為替レート指数と円ドルスポットレートの推移
出典:時系列統計データ検索サイト(日本銀行)よりグラフ生成


それぞれの使い方

さて、ここまで簡単に為替レートごとに説明してきましたが、それぞれをどう使い分けるかを説明していきます。まず、日々の動向を見るには狭義の為替レートで良いですしょう。現にこれを読まれている方なら既に見ている方は多いでしょう。直接の取引価格ですし、これを見なければ投資が始まらないとも言えます。しかし、仮に円ドルレートで投資をするにしても、名目為替レートだけ見ていれば良いかと言えばそうではなく、長期的なトレンドを捉える際、名目値だけ見ていては良くないでしょう。

例えば、一方が過度にインフレに見舞われた際、同じ1ドル=100円であっても、実質的には交換価値が変わっているのであって、そういった判断は実質為替レートを利用しなければなりません。そして、経済動向全体を踏まえて為替レートを見る場合、円ドルレートだけを見ていても問題があります。

例えば、上図の赤線は円ドルレートを示していますが、これだけ見ると1985年のプラザ合意以降、長期的に円高が進み、2012年末に安倍政権が誕生してから急激円安に振れたように見えます。しかしこの間、中国の躍進やユーロの地位の増加、他の新興国の成長などにより、様々な通貨が国際決済に用いられるようになりました。こうした通貨の相対的な地位の変化を見る事は、日本経済全体の強さを測る上で重要です。

実際、プラザ合意までは実質実効為替レートと名目為替レートが殆ど同じ動きを辿っていました。日本が行う殆どの国際決済がドルベースだったからです。しかし、それ以降国際決済通貨が多様化し、今では米ドルは半分ほどであり、他の通貨の影響を大きく受けるようになりました。だから実質実効為替レートで見れば、円高のピークは1995年で、実はそれ以降は継続的に円安になっているのです。

これは日本の経済地位の低下とも関係があります。そして、実質実効為替レートで見れば、最近の相場はプラザ合意の時と同等に通貨安であるとも言えるのです。これを見て、「プラザ合意と同等だなんて安すぎる」と思うでしょうか。それとも「これが日本経済の実態だ」と思うでしょうか。いずれにしても、実効為替レートを見ると、米ドルレートだけを見た場合と印象が異なるでしょう。

このように、様々な為替レートを場合によって、或いは複合的に使い分ける事によって為替市場を読み取る事が重要になると思います