ビール類の消費が減少を続けている。ビール大手5社が7月12日に発表した1~6月のビール系飲料の課税済み出荷量は、前年同期比1.3%減の1億9025万ケース(1ケースは大瓶20本換算)となり、5年連続で過去最低を更新した。6月1日より施行された安売り規制の影響もあると見られる。

安売り規制で6月は大幅減

飲食業,ビール
(写真=Nitr/Shutterstock.com)

ビールの消費量減少が近年叫ばれているが、今年の上半期もその減少に歯止めは掛からなかった。上半期では5年連続の過去最低更新となる。年間で見ると、2016年まで12年連続で過去最低の更新を続けており、13年連続前年割れの回避に黄色信号が灯った。

2017年の上半期は6月1日から施行された酒類の安売り規制に大きな影響を受けた。2016年5月に成立した改正酒税法に基づき、過度な安売りを厳しく規制する法律であり、仕入原価や販管費に基づく適正な価格での販売が求められるようになった。また、それに合わせ、ビール各社は年初から流通業者へのリベートを減額している。スーパーやディスカウントストア等では、店頭価格で1割以上の値上げとなったケースもある。

1~3月の出荷量は前年同期比0.7%減に留まっていたが、上半期を通してみると1.3%減と下げ幅が拡大している。安売り規制により、6月にビール系飲料の購入が控えられた影響と見られる。安売り規制前の駆け込み需要で5月単月の各社の販売数量はプラスで推移したものの、6月単月は大きな反動減となった。6月の大手4社の販売数量は、アサヒビール <2502> が前年同月比11%減、キリンビールが同16%減、サントリービールが同4%減、サッポロビールが同3.5%減となっている。缶チューハイや輸入品のプライベートブランドビールに需要が流れた可能性もある。

トップシェアはアサヒビール 第三のビールでも首位に

酒類別の出荷量は、ビールが前年同期比1.4%減の9421万ケースと2年ぶりの減少に転じた。発泡酒は同2.4%減の2636万ケース、第三のビールは同0.7%減の6967万ケースとなった。第三のビールが市場に出た2004年以降、3つのカテゴリーすべてが減少となったのは初めてである。

また、ビール大手のシェアも明らかになっている。アサヒビールが前年比0.3ポイント増の39.5%で8年連続の首位となっており、4年連続でシェアアップを果たした。キリンビールは同0.4ポイント減の31.7%、サントリービールは同0.1ポイント減の15.9%、サッポロビールは横ばいの11.9%だった。

第三のビールのシェアでは、「クリアアサヒ プライムリッチ」が好調のアサヒビールが、30.9%のシェアを獲得し、キリンビールから首位を奪った。大手4社が第三のビールを発売して以降、シェアトップの交代は初となった。

首位に立つアサヒビールをキリンビールが追う構図となるが、ビール系飲料全体が盛り上がらなければ、パイの奪い合いとなり、厳しい競争となってしまう。安売り規制は下半期の需要動向にも影響を与えると見られ、若者のビール離れや消費者の節約志向等も影響し、業界動向は決してポジティブでは無い。今夏は猛暑が予想されているが、その影響はプラスに出るのだろうか。まずは13年連続の前年割れ回避へ向け、下半期の数字に注目したい。(ZUU online編集部)