大阪市で巨大事業が次々に動きだし、財政への影響が危惧され始めた。2月の2017年度当初予算案発表段階で相次ぐ大型新規事業などから2023年度の収入不足解消を断念し、少なくとも今後10年間は収入不足が続くとの見通しを公表したが、その後も鉄道新線・なにわ筋線の建設計画など大きな財政負担を伴う巨大事業が続々と浮上している。

招致活動が続く2025年の大阪万博や、カジノを核とする統合型リゾート(IR)構想も待ち構えているだけに、財政状況のさらなる悪化は避けられない見通しだ。

2023年度での収入不足解消を断念

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かつて第三セクター会社の経営破たんで大阪市の財政に深刻な影響を与えたアジア太平洋トレードセンター。新たに浮上した巨大事業が市財政に暗い影を落としそうだ(写真=筆者)

市は毎年、当初予算案の公表に合わせ、今後の財政状況の収支概算を発表している。それによると、2016年の試算では収入不足額は2018年度の242億円をピークに減少し、2023年度で解消するとしていた。

しかし、2017年の試算では収入不足額が2018年度の262億円をピークに徐々に減少、2023年度に9億円まで下がるものの、その後再び増加に転じ、少なくとも10年間は解消できないと予測している。

試算は各年度の当初予算を基本に、高齢化の進行による社会保障費や老朽化に伴う公共施設維持管理費の増加、収支に大きな影響を及ぼす大型事業の動向などを反映させてはじき出した。

2018年度以降は北区のJR大阪駅北側で計画されるうめきた2期区域基盤整備事業、北区と門真市を結ぶ自動車専用道路の淀川左岸線延伸部事業などの事業費を計画ベースで織り込んでいる。

2017年の予測が悪化したのは、大型新規事業が増えたほか、公共施設の維持管理費の増額が見込まれるためだ。2000億円もの損失を出した阿倍野再開発事業の補てんも大きな影響を与えた。

だが、その後明るみに出た巨大事業の負担は盛り込まれていない。市財政課は「収支概算に盛り込まれた事業は確定しているものだけ。不確定要素も大きいので、収入不足の見通しについては、相当な幅を持って見る必要がある」と説明した。

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