投資が好きな人はいます。3度の飯よりも投資好きという人もいて、暇さえあれば株価に影響を与えそうなニュースをチェックしたり、企業の決算情報を読んだりしている人もいます。それが好きでやっていて楽しければいいのですが、世の中の大多数のフツーの人は違うと思います。

仕事をしているとき、友人と遊んでいるとき、家族と過ごしているとき、デートをしているとき、映画を見ているとき、ジムで運動しているとき、ご飯を食べているとき、旅行に行っているとき……といろいろな日常の場面で投資のことなど気にせずに楽しめた方が嬉しいのではないでしょうか。

お金を増やしたいと思いつつ、「ただ働いて、稼いで、節約して、貯めるだけでは不安」「資産運用でお金が増やしたい」と贅沢なことを言っています。しかし、「資産運用でお金を増やしたい」と思いつつも、「資産運用のために、時間や気持ちを取られたくない」というのは大多数の人の素直な声でしょう。

そうした、素直な声をかなえるのがズボラ投資です。しかも、このズボラ投資は投資のプロたちも実践しているやり方です。

(本記事は、吊ら男 氏の著書『 毎月10分のチェックで1000万増やす! 庶民のためのズボラ投資 』ぱる出版(2017/7/15)の中から一部を抜粋・編集しています)

ズボラ投資3つのキーワード

ズボラ投資
(画像=Webサイトより)

ズボラ投資のキーワードは次の3つになります。

①●●的に成果の一部をいただく
②●●投資でリスクを軽減する
③●●運用で利益を底上げする

答えは以下で明かしていきますが、この3つを心がけて資産運用をしていれば、日常生活の中で投資のことを気にしなくて構いません。「そんなズボラなやり方でいいのか」と言われるかもしれませんが、それでいいのです。

実践している私も、自身の資産運用のことは普段の生活の中ではほとんど意識していません。ブログで投資関係のことを書いているため、ネタ探しとして情報を探すことはありますが、自分の資産運用についてはほとんど意識していません。

1ヶ月や2ヶ月に1回、証券口座にログインして決まった投資信託を買うくらいなのですが、それすらも忘れることがある。それくらい、ほったらかしています。

キーワード①○○的に成果の一部をいただく

――「出資」は「金貸し」よりおいしい

世の中では大企業に就職することが「勝ち組」かのように言われることもありますが、そんな「勝ち組」と言われる人たちが就職する会社の株を買うことは、彼らの労力の成果をいただくのと一緒です。

株式会社の株を持っておくということは、その可能性を買うということです。株を持っていれば、自分が遊んでいる間も、寝ている間も、株式会社で働く人たちがお金を稼いでくれるのです。まさに、みんなが私のために働いてくれるのです。

ただし、注意があります。「みんなに働いてもらった利益をいただく」そのために大事なことは、『株式を「長期」的に持ち続けておくこと』です。株式投資の本を見ると、よく「10%の値上がりで売る」のようなことが書かれていますが、株を手放してしまったら株式会社で働く人たちが生み出す果実を手にできなくなってしまいます。ズボラ投資では長期的に株を持ち続けることが重要です。ひとつめのキーワードの答えは「長期的に成果の一部をいただく」です。

キーワード②○○投資でリスクを軽減する

――「勝ち組」なんて実はない

「自分の代わりに他人に働いてもらう」には株に投資することが大事ですが、「どんな株を買うか」が問題になります。みんなが頑張って働いていても、すべての会社が順調に利益を出していくわけではありません。中には、競争に敗れて倒産する会社もあります。そのような会社の株に投資しても、お金がなくなってしまいます。

ここで非常に重要になるのが、一つの会社の株に集中的に投資するのではなく、多くの会社の株にお金を分散して投資することです。ここが最も重要な点です。

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資業界でよく引用される有名な格言があります。卵を一つのカゴにまとめて入れておくと、そのカゴが落ちてしまった場合、全ての卵が割れてしまいます。そういう危険を避けるために、卵は複数のカゴに分けて持ちましょう、という意味です。

みんなが利益を出すために一生懸命働いていたとしても、競争で敗れてしまう会社はあります。馬車が、車と列車で消えていったように、まったく新しいモノやサービスに市場ごと奪われてしまうケースもあります。このように考えていくと、買うべき株を選ぶのは、どんなに業界研究や企業研究をしても非常に難しいのです。ここで、「卵は一つのカゴに盛るな」の格言を思い出してみましょう。株の場合、「卵=投資するお金」、「カゴ=会社」です。

ズボラ投資では、日常では投資のことはほとんど考えず、ほうっておくことになります。そのために分散投資が非常に重要です。多くの企業に分散されているからこそ、投資先一つひとつの会社の業績や株価をいちいちチェックしなくていいのです。

世界中の多くの会社の株に分散投資すること、これが非常に重要です。これで、世界の多くの株式会社で働く人たちが一生懸命働いて稼いだ利益の一部をもらえる投資になります。ふたつめのキーワード、答えは「分散投資でリスクを軽減する」です。

株の買い付けはプロにお任せ

しかし、世界中に株を分散させて買うにはどうしたらよいでしょうか。仮に自分で全部買おうとした場合、どうなるでしょうか。たとえば、東証一部で株を購入する場合を考えてみましょう。東証一部とは、大企業しか入れないマーケットのトップリーグのようなものです。

株は証券会社で「トヨタ株を100株」のように注文すれば買えます。しかし、東証一部に上場している会社は約2000社もあります (本書執筆時点)。1社ずつ注文したら2000回も購入作業をしなくてはいけません。ですから、自分の代わりに世界中の企業の株を購入するプロにお願いしましょう。プロは、次の3つをたやすく実行してくれます。

①1000社でも、3000社でも、買付けをやってくれます。
②アメリカの株でも、インドの株でも安い手数料で買ってくれます。
③1万円でも (100円でも)小資金から分散投資してくれます。

庶民がズボラ投資をするには、プロにお金を預けて、分散投資をしてくれる投資信託を買うことが一番の近道なのです。「他人にお金を預けるなんて不安。変なものに投資されてお金減らされたりしない? ファンドマネージャに持ち逃げされることないの?」という不安を持つ人もいるかもしれません。そういう心配は投資信託では不要です。

まず、投資信託の運用方法は目も くろみ論見書というもので決められています。ファンドマネージャは、そのルールに従って運用しなくてはいけないので、勝手に変なものに投資はでき
ません。日本株に投資するという投資信託を買っていれば、ブラジルの不動産を買われるようなことは起こりません。また、透明性は徹底されており、毎日、基準価額という価格が公開され、投資家はその価格で売買できます。

さらに、投資信託において投資家の資産は非常に強く守られています。厳密に言うと、顧客の資産はファンドマネージャが直接管理はしていません。信託銀行という別の金融機関が、顧客の資産として分けて預かっているのです(分別管理といいます) 。だから、世間を騒がす金融詐欺であるような勝手に使い込んでいたということはできなくなっています。また、監査も入っているので、資産管理は万全と言っていいでしょう。

キーワード③○○○○運用で利益を底上げする

――手数料も積もれば大金になる

「長期」「分散」は重要キーワードだと言ってきましたが、最後の重要キーワードは「低コスト」です。長い時間をかけた資産形成では、手数料が結果に対して大きな影響力を持ちます。

投資信託には「信託報酬」という、投資信託を保有している期間でかかる手数料があります。投資信託は、ファンドマネージャやチームが資産を日々運用管理しています。資産運用会社としては、この手数料をもらわないと運用が成り立たないのです。

この信託報酬は投資信託ごとに異なり、固定額でなく、投資している額の○%という形で取られます。販売用の資料などを見ると、年率1・5%のように1年間にかかる手数料の割合で示されています。たとえば、信託報酬が年率0・5%といった場合、その投資信託を100万円分、1年間持っていると、以下の計算式のように1年間で5千円が手数料として取られます。

【100万円 × 0・5% =5千円】

なお、表示は1年間の比率で示されていますが、信託報酬は日々の運用サービスに対する手数料なので、実際には毎日手数料が引かれています。ですので、1ヶ月だけ保有していれば、1ヶ月分の信託報酬が引かれます。

そして、この信託報酬はとても大事なのです。投資信託では信託報酬が年率で2%を超えるようなものもあります。海外の資産に投資したり、複雑な仕組みを持った投資信託になると信託報酬が高くなる傾向があります。日本株に投資するアクティブファンドでみても1%を超えるものがほとんどです。2017年5月時点で純資産総額が大きい日本大型株に投資する3つのアクティブファンドの信託報酬です。やはり、どれも1%を越えています。

コスト1%の違いを侮るな

株式の期待リターン (1年で平均的にこれくらい儲かるだろうという数字) は5%前後と言われています。儲かる年は+20%かもしれませんが、ソンする年はマイナス20%かもしれません。しかしそのような波はあれど、平均的には+5%程度が期待できるということです。

この期待リターンから手数料を引いたものが、実際に投資家である私たちが受け取れそうな期待リターンになります。期待リターン5%なので、信託報酬0・5%と信託報酬1・5%と信託報酬2・5%の場合、実際の投資家が受け取れそうな期待リターンは以下のようになります。

信託報酬0.5% の場合5% − 0.5% = 4.5%
信託報酬1.5% の場合5% − 1.5% = 3.5%
信託報酬2.5% の場合5% − 2.5% = 2.5%

数%の違いが侮れません。手数料を引いたあとの年率4・5%と年率2・5%ではだいぶ運用成績が異なりそうです。信託報酬の差は長期的に見ると、じわじわとボディブローのようにリターンに影響していくものです。ズボラ投資は長期で持つことが前提なので、ランニングコストには、徹底的にこだわってください。最後の一つのキーワードの答えですが、「低コスト運用で利益を底上げする」になります。

吊ら男(つらお)
サラリーマンとして働きながら、『吊られた男の投資ブログ(インデックス投資)』を運営する人気の投資ブロガー。投資信託を使った低コストインデックス投資、パッシブ投資で資産形成を行っている。Twitterアカウント: @tsurao