「相続税対策には賃貸アパート」――という話は昔から定番でしょう。とはいえ、賃貸にしたらすべて解決というわけではありません。賃貸アパートを建ててみたのはいいけれど、入居者がなかなか入らない、入居者保証で契約したのに家賃を下げろと言われたなど、悲鳴を上げている新米大家さんも少なくありません。

賃貸アパートによる相続税対策の落とし穴について、ここでもう一度確認してみましょう。

「相続税対策に賃貸住宅が有利」の仕組み

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(写真=Kelly Marken/Shutterstock.com)

そもそも、賃貸アパート・住宅を建てるという方法が、なぜ相続税対策として有効なのでしょうか。

それは、賃貸住宅を建てることで土地の相続評価額を低くできるためです。不動産に関する相続税の評価額は、土地と建物、それぞれ算定方法が違います。

例えば、土地では自用の場合はおおよそ時価の8割程度、建物は同じく自用で時価の5~6割というのが普通です。しかし、これが貸家となると、土地は時価の6~7割、建物は時価の3~4割まで相続評価額が低くなります。そのため、土地と建物の両方を合わせると自用の半分前後まで下げられるのです。

さらには、借入金で賃貸住宅を建てると相続税の評価上はマイナスの財産となるため、その分も相続税の圧縮に繋がります。これが「相続税対策に賃貸住宅が有利」といわれる大きな理由です。

気を付けたい、こんな「落とし穴」

ここまでの話を聞いただけであれば、メリットばかりだと思うでしょう。実際に、2015年1月の相続税の増税をきっかけに、相続対象となる土地に賃貸アパートを建てる例はいっそう増えていると言われています。しかし、現実にはそううまくいかないケースが増えてきているようです。

その最大の要因は賃貸物件の空き室率が増加していることです。特に首都圏において、ここ2年ほどの間に空き室率が急増しています。賃貸アパートを建てることで相続税が軽減できたとしても、その後の物件に借り手が付かなければ、どんどん赤字が累積されることになってしまいます。

一方で最近は、賃貸ビジネスに家賃保証会社が関わることが多くなっています。これは従来、借り手が用意する連帯保証人に替わって、第三者である家賃保証会社がその役を務め、家賃の滞納などがあったときにそれを立て替えるというものです。

オーナーにとっては「収入が保障されるといういい仕組み」に思えますが、これは、「現在の家賃の金額をずっと保障する」というものではありません。逆に、2年ごとの更新時に(滞納等を防ぐため)家賃保証会社から家賃の値下げを強く求められる場合もあるようです。

もちろん、アパートそのものも年数がたてば老朽化してきます。その分、賃貸物件としての価値は下がるとともに、収入から控除できる減価償却費も少なくなってきます。

このように、単純な目先の「相続税対策」だけでなく、「先々においても有効になり得るかどうか」をきちんと計算する必要がありそうです。(提供: IFAオンライン

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