ビールの美味しい季節である。
ところがビール需要は低迷を余儀なくされている。ビール大手5社が発表した今年1〜6月のビール出荷量は1.3%減と5年連続で過去最低を更新しているのだ。

さぞビール会社の決算は厳しいだろうと思いきや、大手のアサヒグループホールディングス <2502> は業績を上方修正するなど好調だ。5月には株価も過去最高値を更新し、年初来の上昇率も20%を超えている。「ビール不況」とも呼べる状況の中、どうやって収益を上げているのだろうか?

ビール出荷は5年連続で過去最低

アサヒ,株価
(写真=Thinkstock/GettyImages)

ビール大手5社が毎月公表しているビール系飲料(ビール・発泡酒・第3のビール)の出荷統計によると、2017年1〜6月の国内総出荷量は前年同期比1.3%減の1億9025万ケースとなり、5年連続で過去最低を更新した。内訳をみるとビールが1.4%減と2年ぶりに減少したほか、発泡酒が2.4%減、第3のビールも0.7%減とすべてが減少している。

飲酒人口が年々減少していると見られるうえ、ワインや酎ハイ、ハイボールなどアルコールの多様化が進み、若者のビール離れも加速している。加えて、2017年6月1日施行の酒類の安売り規制の影響も受けている様子だ。

アサヒとキリンで国内シェアは70%以上

ちなみに、今年上半期におけるビール市場の国内シェアをみると、アサヒが39.5%と8年連続の首位となった。2位のキリンホールディングス <2503> はシェアを0.4ポイント落としたが、それでも31.7%である。アサヒとキリンの2社で市場の71.2%を占めているのだが、ビールの消費減少は両社にとっても死活問題のはずだ。

ところが、そんな厳しい状況でもアサヒ、キリンともに業績は好調なのだ。

7月24日、キリンは2017年12月期上期(1〜6月)の営業利益を期初予想の550億円から790億円に44%上方修正した。翌25日にはアサヒも、2017年12月期上期の営業利益を528億円から707億円に34%上方修正している。少なくとも業績を見る限り「ビール不況」の影響は感じられない。

ビール大手2社の上方修正の背景にあるのが「海外要因」だ。キリンは赤字続きだったブラジルキリンを売却し収益が改善した。一方のアサヒはベルギーのビール世界大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ社(ABインベブ)からチェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニアのビール事業を買収した。この5カ国の事業が連結対象となり、業績の上方修正をもたらしたのだ。

グローバルな舞台で「生き残りをかけた」戦い

アサヒの2016年12月期における国内酒類売り上げは9766億円と全体の57%を占めている。また、この売上の78%がビール系飲料で、収益の大きな柱にもなっている。

しかし、国内ビール市場は成熟しており、アサヒの2016年のビール系飲料の販売量も0.3%増にとどまっている。2017年の計画でも全体の販売量は0.4%の微増となる見通しだ。

国内市場に多くを期待できない以上、拡大戦略は海外に求めざるを得ない。2016年、アサヒがイタリアの「ペローニ」やオランダの「グロルシュ」など4社を約3000億円で、上記のABインベブ社から東欧5カ国のビール事業を約9000億円で買収したのもそのためだ。

恐らく、パソコンや自動車、携帯端末などの分野で勃発した「グローバル競争」が、ビール業界でも本格的に始まりつつあるのだろう。生き残りをかけたアサヒの動向から目が離せない。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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