今上天皇の生前退位に注目が集まっている。先月末の報道によれば、陛下の退位と改元の期日を9月中に決定し、公表する予定とのこと。この生前退位の話題の際、同時に注目を浴びたのが「三種の神器は非課税」というキーワードだ。なぜこの言葉が浮上してきたのか。これには、生前退位の前提がそもそもなかった相続税法の構成に原因がある。
相続税法は「生前」の贈与と「死後」の相続の課税関係について書かれたもの
まず相続税法の構成から確認しよう。相続税法は、資産を持つ人が亡くなった場合の承継に係る課税関係だけでなく、資産を持つ人が生存中に行った贈与に係る課税関係についても示されている。
相続税と贈与税の2つの税目がなぜ1つの相続税法で規定されているのだろうか。相続は資産の持ち主の「死亡時」に行われるものである。「死亡」に係る相続についてのみ規定すると、「生前」に行われる贈与を抜け穴とした課税回避が多発することが予測される。この課税回避を防ぐため、1つの税法の中で両方の課税関係について漏れなく規定したのだ。
なお、天皇にも相続税が課税される。なぜかというと、相続税法第一条の三(相続税の納税義務者)において、納税すべき者についてはあくまでも「個人」として表記されるからだ。個人ということは国民に限らず皇族をも含む。事実、昭和天皇崩御の際、今上天皇は4億円超の相続税を納付した。