早ければ9月にも発売が見込まれると噂されるアップルの新型スマートフォン、iPhone8への期待が高まっている。内外のメディア(8月14日付の投資快報、iPhone Maniaなど)ではiPhone8の概要について、次のように予想している。

まず、ディスプレイには画質感、節電能力の高い有機ELを両面に使う。表示面積を最大にするために、縁取り部分を従来よりも細くするとともに、ホームボタンを無くす。ディスプレイ頂き部分にスピーカー、センサーを配置する。ちなみに、ホームボタンに関しては仮想化で対応し、指紋認証ではなく、顔認証を採用する。

そのほか、別売の付属品を買うことで無線充電が可能になり、AR(拡張現実)メガネを買うことでAR映像を楽しむことができる。一方、価格はこれまでの製品と比べて高く、1000米ドルを超える……。

しかし、残念なことに、現段階では量産ができず、そのため、評判の高い昨年モデルであるiPhone7、大画面で高級機種であるiPhone7Plusのマイナーチェンジ製品も投入するようだ。

KGI証券のレポートでは、9月に発売されるだろう新製品は、iPhone8、iPhone7s、iPhone7sPlusの3種類で、年内のiPhone8生産台数は4500~5000万台、iPhone7sは3500~3800万台、iPhone7sPlusは1800~2000万台と予想している。ただし、iPhone7s、iPhone7sPlusは既に量産段階に入っているが、iPhone8については8月末に製品の最終テストを行い、量産開始は9月中旬以降になりそうだと指摘している。第3四半期の段階で生産台数は200~400万台に留まる見通しで、発売当初は極度の品薄状態となりそうだ。

アップル、サムスン電子の新製品発売でスマホが劇的に変化

(写真= Punnathon Kijsanayothin/Shutterstock.com)
(写真= Punnathon Kijsanayothin/Shutterstock.com)

ここで足元のスマホ業界の現状を確認しておこう。
イギリスのIHSマークイット社調べによれば、2017年第2四半期のスマホ出荷台数は7%増の3億5090万台(速報値)。第1位はサムスン電子で3%増の7940万台、第2位はアップルで2%増の4100万台、第3位は華為で20%増の3850万台、第4位はOppoで39%増の3050万台、第5位はVivoで45%増の2390万台、第6位は小米で52%増の2320万台である。

こうしてみると、上位2社のサムスン電子、アップルは低い伸び率に留まっており、3位から6位にかけての中国勢が急速に追い上げていることがわかる。しかし、アップルが9月に新製品を投入することで第3四半期、第4四半期のシェアは大幅にアップするはずだ。

一方、トップのサムソン電子もiPhone8に対抗する新製品「Galaxy Note 8」の投入準備を進めている。8月23日に新製品の発表会を行い9月以降、アップルよりも早く発売を開始しようとしている。上位2社による新商品の販売競争によって今後、世界のスマホ出荷台数は大きく伸びると予想される。

今回のiPhone8は技術的に大きな進化がみられる。アップルに強烈な対抗意識を持つサムスン電子も、iPhone8に劣らず最新技術を搭載した新製品を出してくるだろう。今後、この両製品が標準となり、中国の後続メーカーは自社製品のレベルアップを進めることになる。2017年9月はその前とその後ではスマホの質的な面で大きな差が生まれる。具体的には、有機EL、AR、VR、3D、無線充電、ダブルレンズが標準になるだろう。

アップルや、サムスン電子が新製品の開発競争を繰り広げることで、新しい機能が市場全体に拡散していく。アップルは自社で生産することはなく、部品から組み立てに至るまで外注に頼っている。外注先はアップルの厳しい品質基準を満たすことで、高い技術を獲得することができる。

どの外注先も、アップル1社だけに製品を供給しているわけではない。アップルは自社製品の品質を高めれば高めるほど、ちょっとしたタイムラグで競合他社メーカーにその差を詰められることになる。サムスン電子もアップルほどではないが、外注先を多く使うという点では同じである。こちらも、部品メーカーの強化を通じて、競合他社の台頭に一役買っている。

スマホ業界の中国化は不可逆的な動き

スマホにおける世界最大の消費市場は中国であり、その消費地に密着する形で多数のスマホメーカー、部品メーカーがひしめき合っている。スマホ生産の中国化は不可逆的な動きとなっている。

投資家の立場から言えば、スマホ関連、特に部品メーカーは「有望」といった見方ができるのだが、足元でスマホ関連銘柄が大きく買われているかといえば、まちまちである。たとえば、香港市場に上場、カメラモジュールを供給する舜宇光学科技(02382)の株価は8月15日現在、105.3香港ドル(終値)で6月30日の終値と比べ、50.4%上昇している。

しかし、音響、振動部品を供給する瑞声科技(02018)の株価は同じ時期に18.6%しか上昇していない。本土上場では、SIMカードを供給する恒宝股フェン(002104)の株価は8.8%、リチウム電池を供給する深セン市徳賽電池科技(000049)は6.2%上昇に留まっている。

舜宇光学科技は、レンズ技術といった比較的参入障壁の高い分野に業務を集中させており、スマホのダブルレンズ化、自動車向けの急増といった特殊要因が加わり、急成長している。2017年6月中間期業績は69.8%増収、149.2%増益を達成しており、足元の好業績が株価を大きく押し上げている。

日本メーカーは台頭する中国スマホメーカーの攻略が課題

本土上場企業の中には、ここで挙げた企業のほかに、OLED関連の深天馬A(000050)、京東方A(000725)、精密加工の大族激光(002008)、指紋認識の欧菲光(002456)、3Dガラスの藍思科技(300433)、防水材料の長盈精密(300115)、各種部品の蘇州安潔科技(002635)、音響機器、VR用メガネの歌爾(002241)、リチウム電池の当升科技(300073)など、広範な領域で将来有望な企業が育っている。

こうしたメーカーは将来、業績が大きく変わる可能性がある。ちなみに、日本企業もアップル製品へのサプライヤーは存在するが、かつてほどのシェアはなくなっている。日本企業の技術力が高いのは確かだが、世の中に真似のできない技術は存在しない。中国スマホメーカーに対して、「如何にして、コスト面、開発協力面などを含めて総合的な営業力を高めるか」が日本の部品メーカーの課題だろう。

アップル製品最大の組み立てメーカーである鴻海精密工業は1月22日、アメリカで液晶パネル工場建設を検討していると発表した。シャープと共に工場建設を行い、投資額は70億ドルを超えるとしている。もし、アメリカでサプライチェーンの構築を含め、十分な生産体制を築くことができるとすれば、アメリカの製造業に大きなインパクトを与えることができるだろう。ただし、ここまで中国企業が台頭してしまった現在、それを実現させるのは容易ではない。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP:http://china-research.co.jp/

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