相続税対策のために続いていた、所有している土地への賃貸アパートの建築ラッシュに一服感が出てきた。日銀が2017年8月10日に発表した同年4~6月期の業種別貸し出し動向によると、不動産業向けの新規融資額が2015年10~12月期以来1年半ぶりに減少した。このうち、アパートローンの新規融資額は特に減少幅が急拡大している。国内の人口減少傾向に反して、賃貸アパートが増加するという動きには、社会問題化している空き家増加を加速させたり、既存の不動産の価値を崩壊させたりしかねないという指摘もあるため、今後も注視し続ける必要がありそうだ。

融資額も着工数も減少

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(写真=PIXTA)

日銀の発表によると、今年4~6月期の不動産業向けの新規融資額は銀行・信用金庫の合計で前年同期比5.3%減の2兆9781億円だった。減少は2015年10~12月期以来、1年半ぶりとなった。このうち、アパートローンの新規融資額は13.3%減の8619億円。2017年1~3月期にすでに前年同期比で小幅のマイナスに転じていたが、今回は減少幅が2ケタ台に突入した。

これを裏付けるように、国土交通省が発表した今年6月の住宅着工統計では、貸家は前年同月比で2.6%減となった。2016年の新設住宅の戸数は96万7237戸で、前年比で6.4%アップしていた。このうち貸家は同10.5%も増えていただけに、大きな変化といえる。

アパ-ト建築が節税対策になる理由

なぜ土地持ちにとってアパート建築が相続税対策となるのか。それは、更地で相続するより、建物付きの方が評価額を下げることができるからだ。

貸家建付地の相続税評価は、更地の評価額から借地権割合と借家権割合を乗じたものを控除できる。たとえば1億円の土地で、借地権割合50%、借家権割合40%だと、1億円×(100%-50%×40%)=8000万円が評価額となる。

これに加え、建物については借地権割合分の減額が認められるため、6000万円でアパートを建て、固定資産税評価額を3000万円とすると、アパートの相続税評価額は3000万円×(100%-40%)=1800万円となる。

こうなると、本来は土地と建物で計1億6000万円だったのが、8000万円+1800万円=9800万円に減ることになる。おまけに、アパートの建築資金を全額ローンでまかなった場合、その借入金も控除できてしまうので、最終的な評価額は9800万円-6000万円=3800万円となるのだ。

相続税には定額控除額が3000万円、これに法定相続人1人当たり600万円の控除も加わるので、相続税をゼロにしてしまうことはたやすいことだ。

ただ、こうした動きに対し、金融庁は昨年9月のリポートで、不動産向け貸し出しの拡大について「今後の動向は注視が必要」と指摘していた。住宅の供給過多で空き家が増えると、家賃相場が下がったり、治安悪化のリスクが高まったりすることなどを懸念してのものだと思われる。

人口減少時代に家が増えることの限界

新しくつくられていく賃貸アパートは単身者向けのワンルームが多い。ファミリー用の広さのある部屋より、単身者用の1Kルームのほうが1平方メートルあたりの家賃が高くなり、投資効率がよいからだ。ファミリータイプよりも入れ替わりが多いため、手数料商売の管理会社も単身者用アパートの建築を勧めていることもある。

ただ、これは供給する側の論理に過ぎない。かつてのように大都市に働き手が押し寄せていた時代なら成立したが、若い世代が減少していくこれからの時代は供給過多になっていくのは明白だ。

今回の日銀発表で賃貸アパート建築ラッシュが一服したというのは、すでに供給が需要を完全に上回っているとのサインを、地主たちが感じ取って、「供給する側の論理」に自制をかけたものだと信じたい。この傾向が続いていかなければ、近い将来、不動産市場の混乱と不動産価値のメルトダウンは避けられないからだ。(フリーライター 飛鳥一咲)

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