「最低賃金の引き上げが産業をロボット化に追いやり、結果的に失業者を生みだしている」との報告書を、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)などのエコノミストが発表した。
最低賃金が1ドル上がるごとに、箱詰め作業など自動化可能な職種で失業者が平均0.43%増えるという。職種によっては1%もの減少が見られるが、この傾向は特に製造産業で強く、高齢層・若年層・女性・黒人が職を失うケースが最も多いという。
「ワーキングプア」に拍車をかけるロボット化
この調査は1980年から2015年のデータ基づいて、LSEのグレース・ローダン氏とカリフォルニア大学アーバイン校が共同で実施した。
その結果、「最低賃金の引き上げが、低熟練労働者の失業率を著しく押し上げている」ことが明らかになったという。
マサチューセッツ工科大学のエコノミスト、ダロン・アシモグル氏も、90年から07年のロボット化の影響を分析した報告書の中で、米国の労働市場における失業者の増加を認めている。
現在米国の最低賃金は7.25ドルだが、地域によってかなり差がでる。例えばワシントンでは11ドル、コロンビア州では11.50ドル、シアトルでは15ドルだ(CNBCより)。
最低賃金設置の目的は、平均よりも所得の低い低熟練労働者に最低額を保証することで、労働条件の改善や労働者の生活を安定させる点にある。
しかし最低賃金が低すぎるため、まじめに働いているのに生活苦から抜け出せない、所謂「ワーキングプア」が問題視されている。近年各国で見られる最低賃金引上げ運動は、ワーキングプアからの脱出援助策ではあるが、「一部の雇用主に負担をかけている」との議論も無視できない。
雇用側は労働コストの削減を図る意図で、これら低熟練労働者の仕事をロボットに任せる割合を増やして行く。低熟練労働者がロボットに職を奪われるという図式だ。