水素をカセットにして家庭に届け、燃料電池を用いて冷暖房や給湯、照明など、すべてのエネルギーを水素でまかなう水素社会づくりに向けた取組みが始まっている。宮城県富谷市とみやぎ生協が、日立製作所、丸紅と協同でこの8月にスタートさせた「低炭素水素サプライチェーン(供給体制)」構築の実証事業である。

この事業で作られる水素は、太陽光発電の水電解によるもので、100%クリーンな純水素である。水素サプライチェーンづくりは、水素社会構築のための重要なインフラであり、国内ではいくつかの実証プロジェクトが進められている。しかし、一般家庭に向けたカセットによる水素の供給は初めてであり、生協が事業に参画している点も注目されている。

温暖化ガス削減の切り札に

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(写真=Interior Design/Shutterstock.com)

水素をエネルギーとして利用する、いわゆる「水素社会」は、究極のクリーンエネルギー社会であり、安倍首相もその基本戦略を年内にまとめるよう関係省庁に指示している。クリーンエネルギーといえば、太陽光発電などの再生可能エネルギーがその中核に据えられているが、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの最大の課題は、出力が不安定であり、夜間や雨天、風の吹かない日には、発電出来ないという点である。それを補うためには、現在のところ、天然ガスや石炭などの火力発電がその役割を果たしている。

電気エネルギーはクリーンといわれるが、発電の際にはCO2などの温暖化ガスを排出している。2016年11月に発効した温暖化ガス削減のパリ協定では、日本は2030年度に2013年度比26%の温暖化ガス削減目標を約束し、さらに2050年度までには80%を削減しなければならない。原子力発電の多くが運転を停止している現状では、これらの削減目標の達成は至難といわれている。そうした厳しい状況の中でクローズアップされてきたのが、水素社会構築の政策であり、水素エネルギーは温暖化対策の切り札になる。

現状は化石燃料から水素を製造