「AI(人工知能)の浸透が低技術職を増やし、中間技術職を減らす」という意外な理論が、一部のエコノミスト間で浮上している。

これは「人間にとって難度の高いことは容易く、逆に難度の低いことは困難を極める」というAI開発における矛盾点に起因するものだ。米国や英国では雇用創出率が賃金インフレ率を上回るなど、既にその兆候が表れているという。

AIは肉体労働よりも頭脳労働に向いている?

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

こうした意外な予想について、ガーディアン紙のエコノミクス・エディター、ラリー・エリオット氏 は、「モラベックのパラドックス」を用いて説明している。

モラベックのパラドックスとは、「コンピューターにとって高度な知能テストやチェスの勝負は容易いが、幼児と同じ水準の知覚や判断能力を組み込むことは難しい」というものだ。1980年代、豪ロボット工学のハンス・モラベック教授などが明確化した(ブルックリン大学資料より)。

BCAリサーチのエコノミスト、ダーヴァル・ジョシ氏は、モラベックのパラドックスが労働市場に大きな影響を与えると確信している一人だ。「AIが容易に進出可能な領域は昔ながらの知覚・肉体労働よりも、近年発展した頭脳を使う労働である」とし、後者が中間技術職に該当すると推測している。

AIに職を奪われた中間技術者は低技術職に流れざるを得ず、結果的に低技術職が増えるという。

サービス産業が急成長を遂げた50年代、中間技術職が減った

仮説の裏付けはほかにも複数挙げられている。

英国のケント大学経済学部クリスチャン・シーゲル博士は、先進国における労働市場の「分裂傾向」は、サービス産業が勢力を伸ばした1950年代頃から始まったと分析している。この期間、市場は大きく成長したものの、雇用は高所得職と低所得職に偏っていたという。対照的に中所得職は著しく減った。

最近の例では、米国と英国の雇用市場だ。賃金インフレが頭打ちする中、雇用率だけが伸びている。英国では失業率が4.4%と70年代中旬と同じ水準まで引き下げられた反面、賃金は2.1%しか上がっていない。

「いずれアナリストやマシンオペレーターが、ウェイターや犬の散歩屋として雇われる」ような時代が実際に訪れれば、こうした仮説が正しかったことが証明されるだろう。そんな日が本当に訪れるかどうかは、

それでは以前から議論されている、「AIが失業者を増やす」という説はどうなのだろう。ハンブルグに本社を置く投資銀行ベレンバーグ銀行のアナリスト、カラム・ピッカリング氏は、「雇用者は利益を生みだすと判断した場合にのみ、自動化に踏み出す」と懐疑的だ。

確かに、失業者が増えれば商品やサービスが売れなくなる。いくらロボットの導入で低コストな大量生産に成功したところで、買ってくれる消費者がいなければ無意味である。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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