近年、小売業での人手不足が深刻な問題となっているが、給与水準はどの程度なのだろうか。8月22日、東京商工リサーチは「上場小売業277社の平均年間給与」についての調査結果を公表した。平均年間給与は503万6000円となり、2010年度に調査を開始して以来、初めて500万円台に乗せた。人手不足の影響等により、待遇改善が進んでいるようだが、業態別に見ると、明暗が分かれる結果となっている。
初の500万円台突破も、他業界との水準格差は依然大きい
調査は上場小売業277社を対象に、有価証券報告書から平均年間給与を割り出している。2016年度の上場小売業の平均年間給与は503万6000円と、前年の498万9000円から0.9%増となった。前年度からの増加は4年連続となる。また、2010年度に調査を開始して以来、初めて500万円台に乗せた事となり、小売業の待遇改善が進んでいる事が分かる。
調査対象277社の内、前年度より平均給与を伸ばしたのは182社と全体の約3分の2に当たる。減少は91社、横ばいは4社となった。平均給与の増減率は0.0%超~1.0%未満が最も多く、48社となった。2.0%以上~3.0%未満の35社、1.0%以上~2.0%未満の31社がそれに続いた。増加率が10.0%以上の企業も15社あった。一方で減少率が10.0%以上は8社に留まっている。
小売業の年間給与増加は、近年の人手不足の影響が大きくあると見られる。2017年6月の正社員の有効求人倍率は1.01倍となり、2004年の調査開始以来、初めて1倍を超えた。企業は社員の確保を積極的に行う必要に迫られており、そうした流れが待遇改善につながっている。
年間給与の上昇が続く小売業ではあるが、まだ他の業界と比べると給与水準には開きがある。上場企業3044社の平均年間給与は609万8000円となっており、小売業はそれを100万円も下回る水準である。小売業277社の内、500万円未満の企業も157社と半数以上あり、待遇改善はまだ道半ばといった様子である。今後は他業界との人材確保競争が起こる可能性も高く、更なる待遇改善が求められている。