中国の国有通信キャリア大手の株主として民営インターネット大手企業が参入することになった。中国3大通信キャリアの一つである聯通集団は傘下に香港上場の聯通集団(チャイナ・ユニコム、00762)を持つ。

実質的な事業資産の大半を所有するチャイナ・ユニコムは8月16日、第三者割当増資を発表、21日には戦略的投資家の名簿を修正し、再公表した。この増資は国有企業改革の一環として行われる混合所有制改革そのものである。

持株会を通じて従業員に株式を持たせたり、民間企業を戦略的投資家として迎え入れたりすることで、コーポレートガバナンスを規範化し、経営効率を高めることがその主な目的である。戦略的投資家は全部で10社であるが、そこにはテンセント、百度、京東、アリババなど、民営インターネット大手企業が名を連ねている。

チャイナ・ユニコムにとって、混合所有制改革が進展するといった点で大きなメリットがあるが、出資する側の民営インターネット大手企業にとっても、国家の通信ビジネスに参画できるといった大きなメリットがある。国家と民営大手企業が接近することで産業が発展するといった具体的な構図が見えてきた。

日本のマスコミでは、ネット通販のアリババ、ネット検索の百度とともに、インターネット関連大手企業として紹介されることの多いテンセントであるが、その収益構造についてはわかりにくいところがある。今回はテンセントの収益構造を分析しつつ、どこに強みがあるのかについて紹介したい。

ゲームが収益の柱、売上の42%を占める

テンセント,中国
(写真= testing/Shutterstock.com)

まずは直近の業績であるが、2017年4-6月期の売上高は566億600万元(9227億円相当、1元=16.3円で計算、以下同様)で58.6%増収、純利益は182億3100万元(2972億円相当)で69.8%増益である。

円換算した値を書き加えたが、売上高は3か月で9000億円を超え、それが年間50%を超える成長を続けている。利益でみれば、3000億円弱で7割伸びている。利益率は32%である。大規模、高収益で、かつ、高成長を遂げている企業である。

収益構造をみると、収益の柱はゲームで、売上構成は42%、部門別売上は対前年同期比では39%、1-3月期比では5%伸びている。スマホ向けは、王者栄耀などの旧作に、魂斗:帰来、龍之谷(スマホ版)、経典版天龍(スマホ版)などの新作が貢献。PC向けはロングセラーの英雄聯盟、地下城与勇士などが主力である。

基本的にすべて無料で遊べるが、進歩の速度を上げたり、着ている衣服をきれいに着飾ったり、武器を手に入れたり、いろいろなメニューが用意されている。15歳から25歳あたりの若者が中核である。

同社の資金力は競合他社を圧倒している。ゲーム創成期から先行していたことで、技術的な蓄積も大きい。成長過程のゲームメーカーを買収し続ける戦略もうまく行った。ゲームには本人登録が必要だが、インスタントメッセンジャー「QQ」か、対話アプリ「微信」のIDが利用される。どちらも決済機能があり、使い勝手の良い課金システムが売上増に貢献している。

次にウエートが高いのはSNSサービスで、売上構成は23%、対前年同期比では51%、1-3月期比では5%伸びている。内容はネット映像、音楽などのデジタルコンテンツ収入、AR関連製品収入などである。

中国ではインターネットテレビが普及しており、すべての番組がPC、スマホを通じて、自由に見ることができる。同社のSNSに接続し、そこから好きな番組を探し出せば、過去に遡って無料で見ることができる。

コマーシャルを入れないで見たかったり、きれいな画像で見たかったりすれば、会費を払い、会員になればよい。音楽もほとんどが無料だが、一部の楽曲には料金が必要である。ただし、会員になれば、それが聞き放題となる。AR映像が既に商業化されており、特殊なメガネを使えば見ることができる。それから得られる収益もある。

決済、クラウドなどの売上構成は17%だが、対前年同期比では177%増

3番目にウエートが高いのは、その他部門であり、売上構成は17%、対前年同期比では177%、1-3月期比では28%伸びている。

この部門は決済、クラウドなどである。オンライン取引での決済業務が急増している。クラウド業務は、ゲーム、インターネット放送などの強化に加え、国際化を進めており、テクノロジー・メディア・通信、金融の分野で市場シェアが高まっている。

最後に残ったのは広告である。この内、スマホ用の対話アプリである微信上の広告などの売上構成比は11%、対前年同期比では114%、1-3月期比では39%伸びている。映像、ニュースに関連する広告などの売上構成は7%で、対前年同期比では10%、1-3月期比では62%伸びている。

コアのビジネスはゲームから金融へ

これだけ見ると、巨大なゲーム会社であり、映像、音楽などのデジタルコンテンツや、それらに関する広告、インターネットショッピングの決済など、若者に根差したビジネスのようにも見える。

事業の成長性、安定性を不安視する向きもあるかもしれない。しかし、同社の最大の強みは、膨大な数の潜在的顧客と密着した無料サービスを提供していることである。以前はインスタントメッセンジャー「QQ」が顧客集客装置となっていたが、微信は二次元コードを使って簡単にスマホからPCに展開できるため、今はQQに替わり、テンセントの中核プラットフォームとなりつつある。

微信は1対1の対話で使えば、世界各国どこにいてもテレビ電話として使うことができる。写真も、映像も、ドキュメントも簡単に送ることができる。チャットは言うまでもなく、音声をチャットのように張り付けて使う機能もある。

中国ではほとんどの都市で、Wi-Fi環境がされており、Wi-Fiさえつながれば、追加コストはゼロ(通信会社との契約分は除く)で利用することができる。また、決済機能があり、スマホ、オンラインショッピングの拡大がそのまま、ビジネスチャンスに繋がる。

2017年6月30日現在の微信(We Chatを含む)の活動アカウント数は9億6280万人に達しており、対前年同期比では19.5%、1-3月期比では2.7%伸びている。今後、オンラインショッピング、銀行、証券、保険、リース業務などに事業を拡張できるといった道筋が簡単に見えてくる。

チャイナ・ユニコムへの出資を通じて、国家との関係を緊密にすることは、金融を中心とした新規ビジネスの拡大に大きく役立つだろう。同社の高成長は当面、止まりそうにない。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP: http://china-research.co.jp/

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