結果の概要:個人消費は予想を下回ったものの、個人所得は予想を上回る堅調な伸び

8月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は7月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.4%(前月:横這い)となり、前月の低調な伸びから回復、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%も上回った。

一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは+0.1%から上方修正された前月から伸びが加速した一方、市場予想の+0.4%は下回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは前月比横這いから上方修正された前月に一致したものの、市場予想の+0.3%は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は3.5%(前月:3.6%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:横這い)と前月から伸びが加速、市場予想に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.1%)と、こちらは前月および市場予想(+0.1%)に一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月:+1.4%)と、こちらも前月、市場予想(+1.4%)に一致した。コア指数は+1.4%(前月:+1.5%)と、こちらは、前月から伸びが鈍化、市場予想(+1.4%)には一致した(図表7)。

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1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:7-9月期に向けて好調なスタート

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7月の名目個人消費支出(前月比)は、4月以来の伸びとなった(図表1)。労働市場の回復が持続する中、賃金・給与の堅調な伸びを伴った消費拡大となっており、良好な消費マインドと併せて消費の腰が強いと判断できる。

8月下旬にテキサス州などを襲った大型ハリーケーン「ハービー」の消費への影響に注意する必要はあるが、7-9月期に向けて、個人消費は好調なスタートを切ったと言えよう。

物価(前年同月比)は、エネルギー価格の頭打ちもあって、総合指数が17年2月をピークに低下基調が持続しているほか、コア指数も同様に2月をピークに低下し、15年12月以来の水準となった。米景気回復が持続し、労働需給が逼迫する中でもコア指数からは物価上昇圧力が高まっている状況はみられない。FRBは労働市場の回復に自信をもっていることから、政策金利引き上げの大きな方針に変化はないとみられるものの、物価面からは対外的な説明も含めて政策金利引き上げのハードルが上がっていると言える。

所得動向:賃金・給与が回復

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.5%)と前月に続き堅調な伸びとなった(図表2)。労働需給が逼迫しているにも係わらず、時間当たり賃金の伸びは回復がもたついているが、雇用者数の増加などを反映した雇用者報酬の伸びは堅調であることが分かる。

一方、特定企業の特別配当金などの影響で、過去2ヵ月間所得の攪乱要因となっていた利息・配当収入は+0.6%(前月:▲1.7%)と漸く落ち着いてきた。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、+0.3%(前月:横這い)とこちらも前月から伸びが加速した、価格変動の影響を除いた実質ベースで+0.2%(前月:横這い)と、名目より伸びは緩やかに留まったものの、こちらも前月から加速した(図表3)。

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消費動向:非耐久財消費が回復

名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.2%(前月:+0.3%)と、前月から伸びが鈍化したものの、財消費が+0.6%(前月:横這い)と大幅に伸びが加速し、消費回復を牽引した(図表4)。

財消費では、耐久財が+0.6%(前月:+0.6%)と好調を維持したほか、非耐久財が+0.5%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じ、財消費を押し上げた。耐久財では、自動車・自動車部品が+0.9%(前月:+0.8%)と3ヵ月連続で高い伸びとなったほか、娯楽財・スポーツカー+1.1%(前月:0.7%)、家具・家電+0.7%(前月:+0.5%)など全般的に堅調であった。一方、非耐久財は、衣料・靴が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化したものの、食料・飲料が+0.4%(前月:▲0.3%)となったほか、ガソリン・エネルギーが+1.0%(前月:▲4.0%)と前月から大幅なプラスに転じた。

最後にサービス消費は、住宅・公共投資が+0.3%(前月:+0.3%)、医療サービスが+0.2%(前月:+0.2%)と前月並みの伸びとなった一方、娯楽+0.4%(前月:+0.6%)や、金融・保険+0.2%(前月:+0.6%)の伸びが鈍化した。

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価格指数:食料品価格(前年同月比)は15ヵ月ぶりのプラス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲0.1%(前月:▲1.7%)と、3ヵ月連続のマイナスとなったものの、マイナス幅は大幅に縮小した(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:▲0.1%)と、こちらは3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+3.3%(前月:+2.1%)と、9ヵ月連続のプラスを維持した(図表7)。食料品価格指数は、+0.2%(前月:▲0.1%)と、こちらは16年4月以来、15ヵ月ぶりにプラスに転じており、漸く食料品による物価押下げには歯止めがかかった。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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