麻生太郎金融相が、貸し付けが過剰と指摘されている銀行カードローンについて、融資の実態を把握するとともに、審査の厳格化を徹底するため検査を実施する考えを表明した。銀行カードローンをめぐっては、国会や法曹界から多重債務者の増加を助長しているとの批判が出ている。全国銀行協会は3月に自主規制策をまとめたが、今回の金融庁の検査で、自主規制策が適切に運用されているかなども調べる見通しだ。
報道によれば、麻生金融相は、融資額の上限設定など規制強化に関しては、「今はその段階まで詰まっていない。実態調査をしてみないと分からない」と、慎重に検討する考えを示している。日銀のマイナス金利政策によって貸出金利が低下する中、銀行は比較的利幅が大きいカードローンに注力している。この5年間で残高は約1.7倍になった。銀行は融資額の上限を年収の3分の1とする貸金業法の対象外であるため、貸し付けが過剰になっているとの指摘の声があがっている。
増加する銀行カードローン貸出残高
改正貸金業法が2010年に施行され、消費者金融の貸出総は年収の3分の1までに制限された。これによって、いわゆる多重債務者が減少した。借入が5件以上の多重債務者は、金融庁がまとめたデータではピーク時の10分の1となった。その分、消費者金融から規制のない銀行に移行していった。
日銀の最近の統計によると、今年6月末時点のカードローン貸出残高は前年同期比8.6%増の5兆6793億円で、1998年以来19年ぶりの高水準となった。一方で、個人の自己破産申し立て件数は16年に13年ぶりに増加に転じ、今年も増加傾向が続いている。今回の調査の結果次第では、銀行に対して貸し出しの上限導入を求める声が強まることは避けられない。