『ワンダーウーマン』『ガーディアン・オブ・ギャラクシーVol.2』『スパイダーマン:ホームカミング』『猿の惑星:聖戦記』『アナベル:クリエイション』とヒットに恵まれた作品が多い印象だが、蓋を開いてみれば今夏の米映画興行成績は37億8000ドルで、2006年の37億4000ドル以来、11年ぶりに40億ドルを下回る残念な結果となった。
客足が遠のいた理由と作り手の変化
ひとつに、観客が続編に興味を失いつつあると言える。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ第5弾の『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』や『トランスフォーマー』シリーズ第5弾の『トランスフォーマー/最後の騎士王』といった続編は、前作のペースダウンとクオリティダウンが原因で公開前からファン離れが感じられていた。
また自宅で映画鑑賞しつつネットで感想を共有する映画ファンが増加しているのも映画館離れの一因になるだろう。
映画監督もネットやテレビを意識した作品作りをしている。例えば、終末世界を延々と走り続ける列車の中で過ごす人々を描いた『スノーピアサー』で知られるポン・ジュノ監督は、Netflix映画『オクジャ』の公開記念インタビューで「大きな画面で見て美しいものは、小さな画面で見ても美しいのではないか」という考えから「劇場のスクリーンで鑑賞する映画と同じ撮り方」をしていると話している。
『第9地区』や『チャッピー』といった南アフリカを舞台にしたアポカリプス映画を得意とするニール・ブロムカンプ監督は、長編映画と変わらぬクオリティの約20分の短編映画をYouTubeで無料公開する一方で、データと共にストリーミングで映像を販売する試験的な『Oats Studios』を展開させ、大成功を納めている。
両監督に限らず、配信に進出している監督なら小さい画面で自宅鑑賞を前提に高クオリティ映像を製作している。今は「大画面でこそ」だけでなく「大画面でも小画面でも」に加え「お金を払っても払わなくても」が選択できる時代なのだ。