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投資の基礎
Written by 野水瑛介 3記事

資産運用会社、その理想と現実(3)

「つみたてNISA」に見え隠れする金融業界のホンネ 生き残る唯一の道とは?

「つみたてNISA」の口座開設がいよいよ2017年10月から開始され、2018年1月に運用がスタートする。つみたてNISAではこれまでのNISAと同様、毎年の非課税投資枠から得た利益・分配金にかかる税金はゼロになる。税金分だけ確実にお得なわけだ。

つみたてNISAとは?

つみたてNISA
(写真=PIXTA)

つみたてNISAの主な特徴は以下の3つ。

(1)非課税枠は年間40万円(毎月約3.3万円)
(2)非課税期間は20年
(3)投資対象は長期の資産形成に向いている投資信託(以下、投信)に限定

投資対象となる投信は、「長期」・「積立」・「分散投資」の3つのキーワードに適した一定の要件を満たすものにあらかじめ限定されている。具体的には「共通要件」と呼ばれるものと、「投信の区分ごとの要件」の2つがあり、それぞれの要件を満たしたものがつみたてNISAの投資対象商品として選ばれる。なお、現行NISAとの併用はできない。

金融庁の強烈なメッセージ

つみたてNISAの投資対象商品の要件の概要は以下の通り。

【共通要件】

信託期間が無期限または20年以上、毎月分配型投信は対象外、コストの概算値が通知されること等

【区分ごとの要件】

例えばアクティブ投信であれば投信の運用総額50億円以上、運用開始以降5年経過、運用期間の2/3で資金流入超となっていること等

いわば金融庁の「お墨付き」の長期資産形成向け投信ということになる。ここで資産運用業界に激震が走った。この選定基準を2017年8月時点で
日本で販売されている6000本近い公募株式投信に当てはめてみると、なんと1%にも満たない約50本しか要件を満たさなかったのである。

逆に言うと、日本で販売されている投信の99%は長期の資産形成に向いていないということだ。金融庁が今までの資産運用業界は、個人の長期資産形成に適した投信を製造・販売して来なかったという強烈なメッセージを出したのだ。99%も「不適格」な商品を製造・販売する業界など常識では考えられない。製造業だったらたちまち倒産するだろう。

自らの収益を最大化させようとする資産運用業界の「背に腹は代えられぬ」行動が積み重なった結果だ。

もう国民の面倒は見切れない?

金融庁が長期の資産形成を国民に促そうとしているのは、日本社会の構造が変化し、個人が自分で自分を守らざるを得ない環境になってきたことが背景にある。少子高齢化が急速に進行している中では、戦後の人口ピラミッドを前提に設計された年金制度は破綻しかねない。国としてはもう国民の面倒は見切れないかもしれないというのが本音であるように見える。

一刻も早く国民自らが資産形成し、老後に備える環境を整備しなければならないという切迫感から作られたのがつみたてNISAと言っても過言ではないだろう。同時に、資産運用業界に対して真に個人に向き合うことを促すこともつみたてNISAの重要な役割である。

いったい我々は何で稼げば良い?

ところが、サービスの提供側である金融機関からつみたてNISAを見ると違った景色が広がる。つみたてNISAを始めるには、金融機関には新規のシステム開発コストがかかる。一方、つみたてNISAの非課税枠は年間40万円にしかならない小口のビジネスで、お世辞にも儲かるビジネスとは言えまい。

新たにつみたてNISAを始めるくらいなら、まず現行のNISAを育ててくれというのが金融機関の本音だろう。投信販売について、販売手数料稼ぎの短期売買はダメ、ニーズはあるものの複利効果が得らない長期の資産形成に向かない毎月分配型投信もダメ。さらに追い討ちをかけるように、マイナンバー対応、iDeCo対応などの制度対応に追われ金融機関は疲弊している。こうした状況では、金融機関から「制度対応ばかりで、いったい我々は何で稼げば良いのだ!」という叫び声が聞こえてきそうだ。

長期資産形成を促したい金融庁が、金融機関そして資産運用業界に対して言いたいのは、「個人に寄り添うビジネスを展開し、それでも儲かるようにもっと工夫をしなさい」ということだろう。金融機関側も儲からないから顧客本位になれない、とは言ってはいられない。99%も不適合な商品を製造・販売する業界は、遅かれ早かれ顧客に見捨てられることは間違いない。個人に寄り添うことこそ、金融機関そして資産運用業界が日本で生き残る唯一の道だ。

野水 瑛介(のみず えいすけ)
マネックス・セゾン・バンガード投資顧問MSV LIFE統括責任者。1986年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。オンライン投資一任運用サービス「MSV LIFE」 の開発責任者に就任し、2016年9月17日にサービスをリリース。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用をあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。

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