日本不動産研究所は国内不動産取引の動向をまとめた「不動産取引市場調査(2017年上期)」を9月20日に公表した。取引金額は2016年上期から比較的高水準での横ばい傾向にあり、不動産取引市場の好調が窺える。近年はREITの買越し額が大きく、市場を支えているが、足下のREITの状況を見ると、変調の兆しも見られる。
市場の成熟化と長期均衡化の時期に突入か?
調査はJ-REITや東京証券取引所、日系不動産マーケット情報等の公表事例を日本不動産研究所が独自に集計し、2001年から半期毎に公表している。
2017年上期の国内不動産取引市場の規模は約2兆円となっており、2016年上期から3期連続で2兆円前後の横ばいが続いている。ピーク時の2007年上期には約3兆円の規模を誇った不動産取引市場であるが、その後リーマンショックの影響で2008年下期にはその3分の1となる約1兆円にまで落ち込んだ。自民党へ政権交代を経た2013年上期からは1.8?2.6兆円程度と比較的高水準での推移が続いている。特に直近3期は横ばい傾向が強まっており、市場の成熟化と長期均衡化の様相を呈している。
地域別の取引金額割合を見ると、2017年上期は東京23区内の取引が減少している事が分かる。東京23区内の減少は2期連続となり、都心ではモノ不足や価格高騰を背景に取引金額が手控えられる傾向にあるようだ。地方への拡大の動きも見られていたが、2017年上期はその傾向にも一服感が見られる。今回調査で取引金額の割合が大きく増加したのは、東京23区を除く首都圏である。都心や地方主要部のモノ不足感が強まる中、相対的にリスクの高い首都圏湾岸部の大型オフィスが取引対象になったと見られる。