先ごろ、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とIHIが、世界で初めて100kW級の海流発電の実証試験に成功したというニュースがマスコミをにぎわせた。四面を海に囲まれ、黒潮などの海流に恵まれている日本にとって、有望な再生可能エネルギーであることは確かである。しかし、海流発電とは一体どんな発電なのか、果たして私たちのエネルギー消費をどの程度賄えるのか、その仕組みやコスト、環境問題など、解決を迫られる課題が山積している。海流発電商用化に向けた課題とその見通しを検証してみた。
NEDOとIHIが共同実証試験
実証試験成功のニュースは去る8月下旬、NEDOとIHIの共同実証試験として発表された。試験の場所は鹿児島県口之島沖合である。口之島は屋久島の西南方向にあり、周囲を黒潮の流れる、海流発電の適地とされている。発電装置は水中浮遊式海流発電システムと呼ばれるもので、プロペラのついた発電装置を水深約50mほどの海に浮かべる。海流によって発電機を回す、いわば水力発電の海流版というイメージである。太陽光発電や風力発電と違って、出力変動がないという点が最大の利点である。発電装置は50kW装置2基で、装置があちらこちらに移動しないよう水深約100mの海底に設置されたアンカーに係留される。係留索は発電装置の位置の安定化やメンテナンス時の浮上のために使われる。
今回は実証試験のため、試験機は50kWと小型だが、将来は実機での発電を目指すことにしている。実機の発電規模は1000kW2基、合計2MW(2000kW)の発電を目指す計画である。