まとめ~女性のライフコースの多様化で家族に関わる不安も多様化、政策にも多様性の観点を

本稿では調査データを用いて、家族に関わる不安要因を分析した。その結果、家族に関わる不安には「独身不安」「子なし不安」「子育て不安」「介護不安」「死後不安」の5つがあることが分かった。また、女性に注目して年齢や未既婚、子の有無、働き方による違いを見たところ、共通の傾向として、女性では家族に関わる不安は年齢とともに結婚や子供関連から介護へとうつる様子が見えた。

女性について属性別には、未婚女性では、20~40歳代までは「独身不安」や「子なし不安」など家族形成についての不安、そして、独身であるがゆえに「死後不安」もあるが、50歳代では、これらは全て消え、「介護不安」のみになる。

既婚で子がいない女性では、20~40歳代まで比較的長期に渡り「子なし不安」が、40歳代からは「介護不安」が、60歳代では子などの後継者がいないことによる「死後不安」の存在も窺える。

既婚で子がいる女性について働き方別に見ると、働き方により不安の有無や不安のあらわれる時期が異なる。

「子なし不安」はパート・アルバイトのにみ存在する。非正規雇用者では正規雇用者ほど育児休業や短時間勤務制度等の両立環境が整備されていないために二人目以降の出産をためらう様子が窺える。

「子育て不安」は働く母親では乳幼児期、専業主婦では就学児を持つ時期に存在する。これらより、乳幼児を持つ働く母親では仕事と育児の両立負担が大きいこと、専業主婦では進学問題など就学期の子の課題を1人で抱えがちな様子が窺える。なお、「子育て不安」を構成する変数を詳しく見ると、会社員等の正規雇用者と比べてパート等の非正規雇用者として働く母親では、乳幼児期の仕事と育児の両立負担がより大きい様子もある。

一方、専業主婦では介護関連の不安が強い。家事・育児・介護の主な担い手であるために、自分の介護という面でも、自分が介護をするという面でも不安が強いのだろう。

家族に関わる不安は、ライフコース選択の自由によるものもあるが、必ずしも全てが自由意志によるものではない。やむをえず選択するようなケースもあり、政策で緩和すべきものもある。

例えば、未婚女性の「独身不安」は、若年層の経済環境の厳しさによる影響もあるだろう。近年、同一労働同一賃金の実現や最低賃金の引き上げなど、若年層や女性で多い非正規雇用者の処遇改善に関わる政策が進められているが、これらの確実な実行を望む。また、乳幼児を持つ働く母親の「子育て不安」や非正規雇用者の「子なし不安」は、まさに「女性の活躍促進」政策の課題だ。今後、改善されていくのだろうが、現在のところ、待機児童問題や夫婦の家事・育児分担の偏り、正社員でも育休や時短勤務を利用すると「マミートラック」に陥る状況など多くの課題がある。これらの状況を見て、若い女性が将来を想像して「子育て不安」を持つのかもしれない。

皆が同様のライフコースをたどり、同様の不安を持っていた時代とは違い、現在では、ライフコースは多様化し、不安を持つ状況も多様化している。政策にも多様性という観点が求められる。