要旨

  • 女性のライフコースが多様化する一方、依然として家庭内の負担は妻に偏る家庭が多い。また、そもそも女性は子を生む性であるため、家族形成に関わる不安を抱えがちだ。本稿では、調査データを用いて、家族に関わる不安にはどのようなものがあり、女性では年齢や未既婚、子の有無、働き方でどう違うのかを捉える。
  • 20~60代の男女に家族に関わる23の不安を尋ねて得たデータに因子分析を行ったところ、家族に関わる不安には「死後不安」「子育て不安」「介護不安」「独身不安」「子なし不安」の5つの要因が存在することが分かった。
  • 未婚女性では、40歳代までは家族形成関連の不安や独身であるがゆえに「死後不安」もあるが、50歳代では「介護不安」のみになる。既婚で子がいない女性では、比較的長期に渡り「子なし不安」があり、60歳代では後継者がいないことによる「死後不安」の存在が窺えることが特徴的だ。
  • 既婚で子がいる女性では、働き方により不安の有無や不安のあらわれる時期が異なり、「子なし不安」は、パート・アルバイトにのみ存在し、非正規雇用者では両立環境が整っていないために二人目以降の出産をためらう様子も見えた。
  • 「子育て不安」は、子が乳幼児期は両立負担で働く母親で(特にパート等)、就学すると進学問題などを1人で抱えがちな影響か専業主婦で強い。なお、専業主婦では、自分の介護の面でも家族の介護の面でも介護関連の不安も強い。
  • 家族に関わる不安は政策で緩和すべきものもある。未婚女性の「独身不安」は、若年層の経済環境の厳しさによる影響もある。また、乳幼児を持つ働く母親の「子育て不安」や非正規雇用者の「子なし不安」は、まさに「女性の活躍促進」政策の課題だ。女性のライフコースは多様化し不安も多様化している。政策にも多様性という観点が求められる。