FXで負け組トレーダーになると、とてつもなくひどい人生が待ち受けています。精神的にも肉体的にも、そして資金的にも底をつきそうなとき、考えるべきことはどんなことでしょうか。

(本記事は、新山優氏の著書『元コンビニ店員だけど、FXで月給100万ちょいもらってる話』ぱる出版(2017年8月18日)の中から一部を抜粋・編集しています)

勉強、勉強、また勉強

FXトレード
(画像=Webサイトより)

当時の私は、勉強と言えば、雑誌や書店に並ぶ書籍から学んでいました。テクニカル分析とか、チャートの見方など、難しそうなものでも、必死に何度も読んで、習得しようとしていました。そして、何よりも、憧れの勝ち組トレーダーの言うことは、実践しようとトレードに取り入れていました。

だんだんと、いくつかのテクニカル分析を組み合わせたり、手法も増えていきました。それでも、最初の頃は、トレンドとか、平均移動平行線などのテクニカル分析が、さっぱり分からずに、最終的には、勘を働かせてトレードしているだけでした。つまり、チャートを見て、テクニカル分析を見ながら、これは上がりそうだなっと思ったら買ったりしていました。それだと下がってきちゃったりします。

その頃の勉強は、勉強しているつもりでも、本質は捉えていなくて、単純に専門用語を覚えたり、テクニカル分析を参考に自分の勘を働かせる程度のことしか分かっていませんでした。本当は、テクニカル分析後の上がりそうだな……という勘を働かせた後、下がらないパターンをおさえて、負けなくなるところまで学ぶ必要があったのです。毎月20%〜30%の利益を出せるようになるまでの勉強とは全く視点が違っていたと反省します。

ここではトレードで勝つために必要な要素を見ていきましょう。それは、決して、直感で判断することではなかったのです。

・自分らしいトレードルール
・投資資金を失わない優れた資金管理
・メンタルに左右されないトレードスタイル

この三点で、私は、ボロ負けの直感トレーダーから卒業しました。

とうとう、精神的にも肉体的にも限界カラダを壊す

クラブの夜遊びが影響したのか? とうとう、私は、カラダを壊して、風邪のような、喘息のような変な咳をするようになり、熱を出して、アルバイトを休むことになってしまいました。今まで、熱が出てもバイトには行っていたのに、今回は、どうしても、行く気にはなりませんでした。

寝込めば、バイト代が出ないというのも分かっていたけれど、それでも、理性が働きません。ゲホゲホゲホ。カラダが資本なんだから、休んだって仕方ない……。実際に、高熱が出ているので、悪夢を見たり、汗まみれになって、苦しんでいました。完全に体調が良くなるまでに10日もかかりました。

この八年で10日もバイトを休んだのは初めてでした。『やべー。』熱が出ている間は、殆ど食べものも喉を通る状態ではなかったので、お金もあまり使わずに飲み代もかからなかったけれどこれ以上、休むと、家賃まで払えなくなってしまいます。

私は、藁にもすがる思いで、お友達がくれた名刺に電話をしてみました。挨拶をして、投資助言に興味があるから話ができないか?と相談をして、アポを取りました。と言っても、何だか、それも、気恥かしかったので、投資助言に興味があるということと、自分の知り合いがDJをする日があるので、今度、一緒にまた、飲みに行きませんか?というようなお誘い程度にしてみました。

その日、その人から教わった話は、トレードにはコツがあって、車の運転と同じように、修得してしまえば簡単ということでした。

曰く、F1ドライバーが運転する原付バイクと、初心者が運転する世界最速のF1自動車が競走したら、どちらが早いか?という質問をされて、もちろん、言わずもがな。初心者のF1でしょ?と答えた私が恥をかきました。初心者では、F1自動車を乗りこなせる訳もなく、すぐに大事故を起こしてしまうから、結果的には負けるのだそうです。

溜息も出なくなる心がフリーズ状態

それだと初心者だから、勝てないのは当然という意味で、今の私が勝てないのも仕方ないけれど、F1レーサーになるなんて、ほんの一握りの人だけだし、いつになったら、初心者からF1レーサーになれるんだよ?私はこのまま一生初心者のままということでも、困るんだ。どうしたらいいんだ?

私は、その晩、それ以上、質問することもできずに、何か、今後、良い情報があったら、教えてくれと言って、友達のDJを紹介してその場の体裁を繕いました。私は、具体的なやり方は分からなかったものの、少し、まだ、生き残れるような希望が見えたため、その後、精力的にアルバイトで働きました。

私が休んでいる間に、新人の可愛い女子大生の外国人のアルバイトの子が働いていたのもあって、違う楽しみができました日本語堪能な中国人でしたが、気が強いタイプではなくて、優しいタイプでした。こんな優しい中国人の女の子もいるんだな?そう思ったら、日本人とのハーフで、中国生まれなので、少し日本語もできることが分かりました。英語もできるし、外国人の多い渋谷のコンビニには必要な人材でした。

彼女の笑顔に救われながら、新しいFX雑誌が並ぶと、既に、自分の心がフリーズしており、その雑誌を手に取ることもできなくなっていることが分かりました。初心者がF1に乗ったら大事故を起こす。トレードの世界でも同じことです。投資助言会社の言ったセリフが頭の中をリフレインします。おっそろしいな。私はなんてことをしてしまったのか?そうして、あっという間に三ヶ月が経過して、家賃の心配も、自転車操業の循環っぷりも順調になって、少し、貯金も貯まり始めてきたある日…÷投資助言会社の人から連絡がありました。初心者向けトレーダーセミナーです。

このメールは、凶と出るか?吉と出るか?私は、賭けに出ることにしました。セミナー会場に参加すると50名くらいの参加者のうち9割が男性でした。『こんなにいるのか?』私は少し面食らって、真ん中の右側の方に座りました。トレードについての初心者向けセミナーが始まると、トレードについての解説があり、最後に質疑応答の時間がありました。私は手をあげることもなく、何を質問したら良いかも分からずに、ただ、その会場に座っていました。

ちなみに、その初心者向けのトレードの解説では、全部、理解できるほど、私は、もう、初心者ではないのかも?とも思いました。勉強だけはしてきたので、みんなが何も分からないと手をあげている内容について、私は知っている。この専門用語は、分かる!という感じで、分かる人の分類でした。そして、参加者の質疑応答で、気になるフレーズが出てきました。

先生「あー!。それは負けるパターンにハマっていますね?」『はい!』思わず、私が返事をしそうになりました。まさに、負けるパターンにハマっているという状態にピッタリだったからです。

先生「みなさんも、初心者のうちは、知らない間に、負けるパターンにハマりやすいので気を付けてください」私は、身を乗り出すように前傾姿勢で耳をダンボにしました。

先生「例えば、慎重な性格のトレーダーさんで、一度、大きく負けたことのある人は、その恐れから、典型的な損大利小のトレードをしがちです。それは、つまり、コツコツドカンの負けトレードタイプになってしまうということです。損大利小のトレードは、負けやすい傾向にあります。負け越している人は、勝ちたいという心理が強いので、含み益が減ることも恐怖になっており、少しの利益でトレードを利確してしまいます。そうではありませんか?」『はい。その通り。』っていうか、私は、負け組トレーダーの典型で、慎重な性格のタイプだったのか?と目が飛び出そうになりました。

先生「負けやすい人は、損をしたくないという心理が働きますので、損失を塩漬けにしてしまい、最後には大きく負けてしまうのです。それを続けると、平均的に得る利益よりも、平均的に失う損失の方が、どうしても大きくなってしまいます。つまり、回数を重ねれば重ねるほど、どんどん、負けやすくなっていくということですね?」

『ガーンッ。』

全く、その通りで、私は、典型的な負け組の心理にハマっていたということが分かりました。確かに、少しでも勝って取引を終えたいという心理が強かったと思いました。まさかの、それこそが、負けが大きくなるトレードに繋がっていたとは…。

私の場合は、最初から慎重な性格だったと言うよりも、初回の取引で大損をしてしまったので、その恐怖心から、慎重な性格になってしまったと言えそうです。あああ。だけど、だったらどうすりゃいいんだ?これ以上、損はしたくないし…。

もぅ、リスクは背負えないよ。

先生「負けやすい行動パターンがあるということは、勝ちやすい行動パターンもあるということです。」

『待ってました』会場から拍手が沸き起こったので、私も一緒になって大きな拍手をしました。

先生「勝てるテクニカル手法を持っているから、勝ち組トレーダーになれるという発想は間違いなのです。負けているトレーダーほど、テクニカル手法や分析にこだわってしまいます。勝率をあげることに必死になっていますがそうではありません。自分には『勝てる手法』がないから負けていると思っている人もいます。実は、それも違います。」

私は、固唾を飲んで聞き入りました。

先生「それでは、ここで、一つ、問題です。もしも、同じ資金量で、同じ手法を使って取引をしているトレーダーが十人いたとして、もしも、今持っているポジションが、一年後に資金の2倍の利益になったと想定したら、その時まで、きちんとポジションを持ち続けていられるトレーダーは何人いるでしょうか?」『私は、心の中で、四〜五人かな?』と考えました。

先生「トレードの世界では、概ね、ニ〜三人程度しか残らないと言われています。つまり、それだけ、資金量でも、手法でもなく、大切なのは、負けやすい行動を取ってしまうのか?勝ちやすい行動をとるのか?ということです。本来、同じ手法を使っていたら、全員が、同じ結果を出してもおかしくないのに、そうはならないのが現実ですよね?それは、心理からくる行動が変わってしまうからです。決して、勝てる人が、特別な才能や優秀な手法を使いこなしているからではないということを心得ておいてください。」

新山優
1984年生まれ。就職氷河期の影響を受け、就活そのものを断念し、コンビニエンス・ストアのアルバイトで月20万円に満たない生活をスタートさせる。渋谷の中心地で、多い時は週7日の深夜勤務を続ける中、FXの研究を始める。新山システムと言われる大胆かつ繊細な投資法で、常勝トレーダーの仲間入りをする