医療保険のなかには、がんの治療に対する保障に特化したものが存在します。がんは病状によっては完治するまでに長い時間がかかり、経済的負担も大きくなりがちです。

そこで、がん保険の概要や治療に必要な費用、保険に加入する必要性について考えていきましょう。また、民間のがん保険だけではなく、がんの治療に利用することができる国の制度なども紹介します。

(写真=Sean K/Shutterstock.com)
(写真=Sean K/Shutterstock.com)

がん保険とは

がん保険とは、がんの経済リスクをカバーするために加入する保険で、一般の医療保険のがん特約よりもさらに、がん治療に特化した商品です。

国立がん研究センターによると、「生涯でがんに罹患する確率は、男性62%、女性46%」(2013年データ)となっており、発症率の高さがうかがえます。また、生命保険文化センターの「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、がん保険・がん特約の世帯加入率は60.7%となっていることから、多くの世帯で対策を行なっていることがわかります。

がん保険は主に以下のような内容で構成されています。

・ 診断給付金
・ 入院給付金
・ 手術給付金
・ 通院給付金(がん治療給付金)
・ 先進医療給付金

がん保険では段階的に保険金が支払われる仕組みとなっており、がんと診断された場合に一時金として診断給付金、入院した場合は1日ごとに入院給付金、手術を受けた際に手術給付金、そして通院治療の場合も通院給付金を受け取ることができます。

厚生労働省により定められている先進医療は2017年8月1日現在で105種類あり、その技術料は全額患者の自己負担となります。高額になるため、この部分をがん保険でカバーできれば安心でしょう。

一般的に、診断給付金はがんと判明した時点で受け取ることができますが、がん治療では入院せずに通院治療のみを行うケースも存在するため、入院給付金の支払い対象とならない場合もあります。また、入院日数は年々減少傾向にあるため、入院給付金だけでなく診断給付金や手術給付金も重視するといいでしょう。

がん治療の費用はどのくらいかかる?

がん保険に加入しておらず、経済的事情により治療を続けることができないケースも残念ながら考えられます。厚生労働省の「平成27年度 医療給付実態調査」によると、がん治療の入院1日あたりの費用の平均は、14歳までが7万3,788円、64歳までが6万1,471円、74歳までが5万5,507円、75歳以上が4万3,306円となっています。

また、1入院あたりの医療費では、14歳までが約345万円、64歳までが約110万円、74歳までが約105万円、75歳以上が約106万円となっています。多くの人は国民健康保険に加入しているため、実際の医療費は3割負担となることを考慮しても、経済的負担は非常に大きなものとなることがわかります。

さらに、現役世代ががんを患った場合、治療費の負担だけではなく収入自体が減少することも考えておかなければなりません。家計の収入割合が大きい人はがん保険やがん特約に加入しておく必要があると言えるでしょう。

国の制度「傷病手当金」「高額療養費制度」を知っておこう

実は、がんなどによって働けなくなった場合や治療費が高額となった場合には、民間の医療保険だけではなく、以下のような国の制度を利用することができます。

・ 傷病手当金
傷病手当金とは、病気や怪我によって3日連続で仕事を休んだ場合に、4日目からは最長で1年6ヵ月の間、欠勤した際も給料が支払われる制度のことです。1日に支払われる金額は過去の平均給与の2/3と規定されていますが、知っておくとがんによる収入減少を抑えることができ、利用価値が高い制度であると言えます。労災保険の給付対象や、病気・怪我とみなされないものは支給の対象となりません。

・ 高額療養費制度
その月の医療費が高額となった場合は、高額療養費制度を利用することができ、実際の支払額は年齢・所得区分に応じて規定される自己負担限度額まで圧縮され、払い戻しを受けることができます。

例えば、年収400万円(標準報酬月額28万~50万円・報酬月額27万円以上~51万5,000円未満)の35歳の人が、1ヵ月の医療費負担30万円(総医療費100万円)に高額療養費制度を適用した場合、実際に支払う自己負担額は以下の計算式から8万7,430円となります。

8万7,430円 [自己負担限度額] = 8万100円 + (100万円 [総医療費] - 26万7,000円 )× 1%

がん保険は治療期間が長びくほど威力を発揮する

がん治療は、病状によって治療期間が大きく異なり、1回の手術で済むケースなど短期間で完治した場合は家計への影響が少ない可能性もあります。ただし、長期間の治療が必要な場合では経済負担は大きく、傷病手当金の対象外となる可能性もあるため、がん保険の必要性は高くなると言えるでしょう。

がんのリスクが高いと思われる人や主たる生計者にあたる人、治療費の捻出が困難な方は、早い段階でがん保険に加入して将来の不安を取り除くことをおすすめします。

(提供: 保険見直しonline

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