レオパレス21 <8848> は10月20日、国土交通省、金融庁から不動産特定共同事業者として許可を受けた。これによりレオパレス21は、東京中心部の賃貸物件を投資対象とする、不動産小口化商品を販売することをプレスリリースした。この商品は、「任意組合型」スキームを活用し、投資家に不動産小口化商品を提供するものだ。

不動産投資商品の種類

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(写真=PIXTA)

投資の鉄則である分散投資を考える際、最近のリスクリターンの関係から見ても、不動産は重要なオルタナティブ投資先の一つと考えることが出来る。特に最近はJ-REITも上場数が59銘柄(2017年10月27日現在)を数え、投資環境は整えられている。

不動産投資の方法は、最近話題の現物のアパート・マンション投資やREITなどの証券化商品への投資がある。不動産の現物投資は、金融機関からの借入により、自己資金の数倍のレバレッジをかけることが出来る点が最大のメリットと言えるだろう。一方、不動産の小口証券化商品は、不動産の現物投資と異なり、管理や修繕維持の手間が省け、小口化したものを複数購入すれば分散投資となり、投資初心者や多忙なビジネスマンが不動産に投資をするのには適した商品と言えるだろう。

不動産証券化商品の法的な枠組みは、J-REITは「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」、そして今回ご紹介する不動産小口証券化商品は、「不動産特定共同事業法」に基づいている。この法律は、資本金1億円以上の不動産業者が事業運営を行うことを想定したもので、「賃貸型」「匿名組合型」「任意組合型」に分けられる。

J-REITは、不動産投資のETF版ともいえるもので、一つの銘柄にオフィビル、ショッピングモール、居住用賃貸物件、ホテルなど、複数の物件が組み込まれている。従って1銘柄を購入することは、一度に複数の物件に投資をすることになる。

匿名組合型は、投資家が金銭で出資をするもので、投資家と事業主間で商法で定められている匿名(TK)組合契約を締結し、事業を行う。

一般的には

(1)各投資家と事業主が商法に基づいた匿名組合契約を締結
(2)投資家が組合に金銭を出資
(3)事業者は、投資物件を維持管理する
(4)契約に基づき、定期的に分配金を受け取る

という仕組みだ。

匿名組合型の特徴は、投資家が組合に金銭で投資をしているというところで、物件の所有権は、投資家ではなく事業者にある点だ。それにより、投資家のリスクは、出資している範囲に限定される。登記簿に載る名前は、事業者なので、投資家の名前が出てくることがないため、匿名組合型と呼ばれる。なお分配金は、所得税法上、雑所得となる。

今回レオパレス21が作った投資商品は、「任意組合型」だ。任意組合契約は民法で定められた組合を作ることを投資家と事業者が合意した上で共同事業を営む。

一般的には

(1)各投資家と事業主が民法に基づいた任意組合契約を締結
(2)投資家は、不動産の共有持ち分を購入する
(3)投資家は購入した共有持ち分を任意組合に現物出資する
(4)事業者は組合の代表として建物の維持管理を行う
(5)契約に基づき、定期的に分配金を受け取る

という仕組みだ。

任意組合型の特徴は、上記③の投資家が組合に現物出資をする点だ。ただし所有権は投資家にあるので、登記簿上に所有者として名前が載る点が匿名組合型と異なる。なお、分配金は、投資家が不動産を所有しているので、所得税法上、不動産所得となる。

任意組合型の税制

さらに任意組合型の最大の特徴は税制にある。中で相続税対策として有効活用できる点がポイントだ。任意組合型は、現物不動産と同じと考えるので、相続税評価額の資産圧縮効果や小規模宅地課税を使った節税など、不動産税制が使える点が大きなメリットだ。

例えば、現金価格と比べて、不動産評価額はその約8割といわれている。貸家建付地や貸宅地の評価を使えばさらに下がる。また小規模宅地課税制度を使えば、アパートやマンションの貸家の敷地は、200平方メートルまで50%減額が可能だ。

現物不動産を相続税対策に使う場合、土地建物をどのように法定相続人に分けるか、困難な場合が多い。例えば一筆の土地の場合、共同名義にして相続を行うと、いざその土地を売却する場面では、持ち主全員の同意が必要となる。一方、任意組合型不動産投資なら、小口化ならではの特徴を生かし、法定相続人ごとに口数割り当てを調整したり、リスク分散を目的として、異なる物件の証券を購入することもできる。

任意組合型の注意点

このように相続税対策にも使える任意組合型不動産小口証券だが、当然留意すべき点もある。

この商品は現物不動産と同じなので、投資物件として重視すべきなのが、投資物件の立地だ。最寄りの駅からの距離や周辺の環境については、十分注意を払うべきだ。また、不動産投資の中でも重要なファクターである建物の減価償却の耐用年数についても注意が必要だ。例えば新築RC構造の場合、最長47年の長きにわたり減価償却費として計上可能だが、何らかの理由で短期間のうちに経費計上をしたい場合は、このような物件の証券はそぐわない、といったケースも出てくる。

不動産投資に興味があったが、資金的に難しく諦めていた方々でも、小口証券を購入することで始めることが可能になった。また物件の維持管理については、プロである事業者に任せられることは忙しい方々にとっては何よりの恩恵となるだろう。

マネーデザイン代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。