不動産投資を始めるにあたり、不動産投資の重要な判断基準の1つに利回りがあります。利回りが高い物件は魅力的ですが、利回りが高いということは、必ず何か理由があるものです。理由を把握して投資判断できるように、高利回り物件の秘密をお伝えします。

(写真=:Andrey_Popov/Shutterstock.com)
(写真=:Andrey_Popov/Shutterstock.com)

家賃利回り 不動産投資で大事なファクター

不動産の購入価格を、年間の家賃収入で割ったものを利回りといいます。例えば、1,000万円で購入できる物件で月に6万円の賃料の場合、年間のキャッシュフローは「6万円×12カ月=72万円」になり、利回りは「72万÷1,000万円×100」で7.2%になります。不動産投資の基本は、利回りが調達コストを上回ることでしょう。すなわち、インカムゲインがローンの金利を上回り、月次のキャッシュフローとコストのスプレッドがプラスになることです。不動産物件には利回りとか、月次の賃料などが表示してあることが多く、物件による利回り比較ができるようになっています。「低金利のときに不動産投資を始めよう」というのは、利回りが多少低くてもローンの金利が低いのならば、スプレッドがプラスになる物件を探しやすいからです。

高利回り物件の謎

利回りには中には10%を超えるような物件も存在します。ただ利回りが高いということは、必ずそれなりの理由があるのです。なぜ高利回りかの背景を必ず考えるようにしたいものです。テナントが付きにくいような物件、すなわち空室率が高くなるリスクのある物件は、高利回り不動産の代表といえます。空室率が高いとすれば以下のような可能性がありますのでチェックしてみましょう。

・ 人口減少が進む地方の物件
・ 駅付きが悪く駅までの距離が遠い物件
・ 車社会のエリアなのに駐車場が確保できていない物件
・ 大学や特定企業などテナントを提供していた主要施設が移転
・ 築古、使いにくいレイアウトなど物件自体の魅力が薄い

空室率が高い場合は、需要自体が少ないこともあり、家賃を値下げしたらテナントが必ず入るというわけでもありません。また、家賃を値下げするなら利回りは下がります。したがって、空室率が高くなる可能性のある物件は売り出し時の想定の利回りは、あまり意味がなく鵜呑みにしすぎないことが重要です。空室率が高いということは不動産投資ではかなり厳しい条件だといえます。1カ月空室になるだけで年間のキャッシュフローが12分の1になるのです。

先の例に出した購入時1,000万円で1カ月の賃料6万円の物件でみてみましょう。利回りは7.2%の物件ですが、1カ月空室があれば、(6万円×11カ月)÷1,000万円×100で利回りは6.6%、2カ月空室があれば6%、半年空室なら3.6%まで下がります。利回りでは7.2%をベースにキャッシュフローがポジティブになると計算していても、1~2カ月空室になるだけでキャッシュフローはネガティブになる可能性が高いのです。

保有物件数に対してテナントが入っている数を稼働率といいます。所有している不動産の部屋数が多ければ多少稼働率が低くてもカバーできますが、投資部屋数が少ない場合は空室リスクが投資全体のキャッシュフローに与える影響は大きくなります。例えば、1部屋しか投資していない場合、その部屋が空室になれば稼働率は0%です。稼働率はトータルのリターンに大きな影響を与えます。だからこそ、不動産投資のスタート時は特に空室になりにくい物件を探すほうがいいでしょう。もし、その物件の利回りがとても高いのであれば、周りの物件を調べたり、物件や周りを精査したりして、高い理由を把握する必要があります。そういったプロセスを踏めば実際に掘り出し物の高利回り物件に出会えることもあります。ただし、経験と熱意と時間がないと簡単ではないでしょう。特にサラリーマンで、不動産投資初心者にはハードルが高い傾向です。

不動産の条件以外で高利回りになる場合も

不動産の条件以外でも次のような場合に高利回りになる物件があります。

・ 売り主が換金を急いでいる
・ 築古物件でローンが付きにくい
・ 融資期間が短くしかとれない
・ 部屋で事件があったなど心理的瑕疵がある
・ 近くにお墓、斎場など嫌悪施設がある

不動産投資を生業としている人はたくさんいますので、ある程度の利回りになれば売れることが多くなります。利回り次第で値段に下方硬直性があるのが不動産投資のいいところです。不動産投資を幅広くやっている人は、懇意の不動産屋さんに高利回り物件がでたら連絡してくれるように頼んでいます。興味のある物件に対し狙う利回りから逆算した逆指し値の買い価格を提示し、売り方に対し値下げしてくれるなら買うといった行動をとることも多いでしょう。こうした投資家が多い中、高利回り物件がいつまでも残っているとしたら、おかしいと思ってもいいのではないでしょうか。その物件が「いつから売り出されているのか?」「値下げ履歴はあるか?」などもチェックしてみましょう。

高利回り物件はEXITが難しい可能性も

利回りが高い物件は魅力が相対的に低いため、高い利回りでも購買者がつきにくい物件であることを表しているともいえます。高利回り物件の場合、うまく運用できれば収益物件になることもありえます。しかし、築古だったり心理的瑕疵があったり、近くに嫌悪施設があったりする場合は、なかなか売れない可能性があります。不動産投資の最大の魅力は、インカムゲインを積み上げてレバレッジを効かせながら、残債の減少に伴うキャピタルゲインをとれる可能性があることです。土地が値上がりして、物件を売ることをファンドではEXIT(出口)などと称します。

高利回り物件では、自分がEXITするときにも苦労することも念頭に置いておきたいものです。例えば、先祖からの山林を相続したとしましょう。相続したものの「活用はできない」「二束三文で売れない」「固定資産税はかかる」といった具合で苦労する人は珍しくありません。高利回り物件は、ふたを開けてみるとEXITが難しそうな物件ということもあるので十分な注意が必要です。

表面利回りよりも最終的にはネット利回りを意識

表面利回りはエントリーの条件としては大事です。ただ最終的には、不動産投資には年間維持費、税金、補修積立、ローン金利、管理費など、さまざまなコストがかかります。管理や修繕などは委託するか自分でやるかでもコストは大きく変わってくるでしょう。表面利回りはあくまで表面利回りです。

ただ、確定申告で税額控除をできる可能性もあります。サラリーマンでも修繕したコストや維持管理費などのコストは確定申告で費用として計上できるので節税効果があるわけです。キャッシュフローとコストのスプレッドがゼロ、もしくはネガティブでも税制控除でメリットが生じる可能性もあります。不動産投資はそういった自分の資産全体をみるバランス力が必要です。逆にいうと不動産投資がわかると自分の資産をマネジメントする能力が「ワンランクアップ」することは十分期待できます。大きなメリットでもあるので、できる可能性があるなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。

まとめ

不動産投資において高利回りの物件には、さまざまな理由があります。下記の3つのポイントを良く理解した上で不動産投資の特性を学んでいきましょう。

・ 利回りは入居者がいてこそのもの
・ 理由を把握した上でリカバリー可能なら検討するのもあり
・ リスクもあるがお宝物件に化けそうなものは高リスクなので初心者にはおすすめできない

もしあなたが不動産投資のベテランでそういった悪条件をクリアできるならば確かに魅力は高いでしょう。しかし、不動産投資を開始したばかりの人にはハードルが高いと言わざるをえない一面があるのです。不動産投資をすることで、インカムゲインとキャピタルゲイン、キャッシュフローとコストといった投資の世界でとても大事なファクターが自然と身につきます。うまく使えば税金控除のメリットもあります。不動産投資は、金利が低いときにスタートするのがベストです。必要以上に利回りにこだわらずにトライしてみてください。

不動産投資はある程度キャッシュフローを確保できるようになると、不動産の担保価値がある場合は、金融機関からの追加融資の枠が生じます。新規融資枠を引き出すことで、持っている資産にレバレッジをかけられるのです。そのため、不動産投資は軌道に乗り始めると大きく拡大できる可能性があります。まずは基礎知識を十分に蓄えた上で、不動産投資へ大きく一歩踏み出してみましょう。

(提供: Incomepress

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