「VPPビジネス」という、耳慣れないビジネスが国内で動き出す見通しとなっている。VPPとは、バーチャルパワープラント(仮想発電所)の略称であり、太陽光発電、エネファーム(家庭用給湯器)、蓄電池、電気自動車(EV)などの分散電源を、IoTを用いて、あたかもひとつの発電所のように運用するシステムである。

IoTで分散電源を一つの発電所のように運用

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(画像=PIXTA、※写真はイメージです。)

システムを通じて、各分散電源からの余剰電力の買取り、省エネ、節電電力の買取り(ネガワット取引)などのサービスをアグリゲーションビジネスあるいは、VPPビジネスと呼ぶ。

すでに動き出しているサービスもあるが、今後、再生可能エネルギーの拡大につれ、VPPビジネスは一段と活発化すると見られる。

新ビジネスの普及には、なお課題が多いものの、VPPは、大規模集中電源を軸とした国内のエネルギー供給構造を大きく転換し、電気料金低下の促進剤になるとも期待されている。

NTTスマイルエナジーは実証試験

NTTスマイルエナジーは2017年7月から、経済産業省のVPP構築実証事業に参加し、システムの構築を進める一方、電力系統における需給調整力の向上や再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでいる。

その中で同社は、送配電ネットワークから、関西電力経由で電力需給に関する指令を受け、家庭に設置された電源設備(太陽光発電や蓄電池システム)を遠隔制御することにより、余剰電力の買取り、節電電力の買取りを通じて、関西電力管内の電力需給を調整する。

節電電力の買取りは、「ネガワット取引」と呼ばれ、節電量が、発電量(ポジワット)と同等の価値を持つことから、節電量の買取りは電力会社にとってメリットとなる。具体的には、電力消費の少ない時間帯には、太陽光発電電力を蓄電池に蓄えたり、余剰電力を買い取ったりする。電力消費の多い時間帯には、蓄電池からの放電を行ったり、系統からの電力供給をおこなったりする。

2017年度では、そうしたサービスを通じて、電力需給調整や蓄電池システムへの遠隔制御の検証を行うことにしている。

ニチコンはトリブリッド蓄電システムを開発・販売へ

ニチコンは、住宅の太陽光発電を電気自動車、プラグインハイブリッド車(PHV)のそれぞれのバッテリーや、家庭用蓄電池と連係し、充放電制御のできる新しい次世代蓄電システムの「トライブリッド蓄電システム」を開発、2018年4月から販売に乗り出す方針だ。

従来は、それぞれに必要だったパワーコンディショナー(電力の直流、交流の変換装置)を、一つのパワコンに集約でき、ユーザーのライフスタイルに応じて、太陽光発電の蓄電や、EV、PHVからの放電などを行うことができる。このシステムは、VPPの普及を見越したもので、省エネ、ネガワット取引などを円滑にできるのが特徴である。

東電と日産自動車はEVを需給調整に活用

東京電力HDと日産自動車はこのほど、多数の電気自動車を活用したVPPの実証試験を開始した。2018年1月末まで実施する。

この試験には、東電HDと日産の社員計45人がそれぞれEVを利用して参加する。EVは東電HDからの電力需給情報に基づいて、EVバッテリーの充放電を繰り返す。指定された時間帯に充電を行ったユーザーには、充電量に応じた一定のインセンテイブが支払われる。実証試験では、VPPにおけるEVの需給調整力などを検証し、VPPビジネスモデルの構築に役立てる。

急増するアグリゲーションサービス

電力自由化や再生可能エネルギーの導入拡大で、VPPビジネスは今後の成長市場と期待されている。民間調査会社の富士経済がまとめた電力関連システム・サービスの国内市場調査によると、VPPビジネスのうち、とくに大きな伸びが見込まれるのは、省エネアグリゲーション(節電電力の買取り、ネガワット取引と同じ)サービス、創エネアグリゲーションサービス(余剰電力買取りなど)である。

省エネアグリゲーションサービスは2017年度で5MW(見込み)の規模が、2020年度には6倍の30MWに急増する。創エネアグリゲーションも同60MWから同200MWと、3倍強に増加する。  

通信規格の整備・統一などの課題も

VPPビジネスの具体化には課題も多い。技術的には、業界横断的、地域横断的な分散電源の遠隔操作には、通信規格の整備、統一化が欠かせない。節電電力や余剰電力の市場取引には、取引ルールなどの市場環境の整備が必要である。さらに通信セキュリティ対策も重要となる。   VPPは、地域や家庭、工場など、一定の範囲で電力の供給、消費を行うシステムであり、地産地消エネルギーとも呼ばれる。送電ロスが小さい上、災害時にも大きな影響を受けずに電力供給が可能である。再生可能エネルギーとの親和性も高い。日本の電力は従来、大規模集中型電源で供給が行われてきたが、VPPの普及はそうした構造を大きく変えることになると思われる。(西条誠、エネルギー・経済ジャーナリスト)