地球温暖化による影響で、世界的に自然環境の変化が止まりません。日本では沖縄で見られるサンゴ礁もそのひとつです。温暖化によって海水温が上がり、世界的にサンゴ礁「白化」が進み問題となっています。

このようなサンゴの危機的状況を救うため、国や県はこれまでにさまざまな取り組みを行ってきましたが、今回、沖電開発とIT企業がタッグを組んで新たなシステムを開発しました。それが「サンゴのIoT飼育」です。全国各地の家庭でサンゴを飼育できるようになるかもしれない、この試みについて紹介します。

サンゴ礁が地球に必要な理由

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(写真=PIXTA)

サンゴを海藻のような植物だと考えている人も少なくありませんが、実はクラゲやイソギンチャクの仲間であり、動物です。サンゴは宝石に利用される「宝石サンゴ」と群生する「造礁サンゴ(イシサンゴ)」に分かれ、前者は海の深い部分で成長し、後者は浅い海で群体しサンゴ礁を形成します。

この造礁サンゴは海の生物多様性に寄与しています。上部の触手部分は小さな魚やエビたちの住処となり、大きな生物から身を守る隠れ家にもなります。このため地球表面上のわずか0.1%にしか存在しないサンゴ礁の中には、約9万種の生物がいるのです。

さらに造礁サンゴは、体内に植物プランクトンの一種である褐虫藻を住まわせ、光合成を活発に行っています。二酸化炭素を利用し酸素を生み出すサンゴは、植物と同じく、地球温暖化を止めるカギを握っている生物なのです。

世界的にサンゴ礁が減少している原因

2016年、県やサンゴ礁保全に取り組む団体にとって衝撃的な調査結果が発表されました。国内最大級のサンゴ礁「石西礁湖」において、およそ97%が白化していることが環境省の調べで分かったのです。

2017年の調査でも、県全体でサンゴ礁の白化が進んでいることがわかり、このままでは2050年にも地球上のサンゴが絶滅するといわれています。

サンゴ礁が白化・減少する原因には次の2つが考えられます。

1.ストレス
水温変化、強い紫外線、塩分濃度の変化、海水の富栄養化などがサンゴのストレスとなり光合成を阻害してしまいます。うまく光合成ができなくなったサンゴは、これにより共生する褐虫藻に損傷を与え、損傷のある褐虫藻は体内で消化され排出します。

体内にあった褐虫藻がいなくなると、透明な触手部分の奥にあるサンゴの石灰部分が透けて白く見えるようになってしまいます。これがサンゴの白化です。

2.オニヒトデの大量発生

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(写真=PIXTA)

幼生の時点ではサンゴ礁に身を隠し成長し、成体になるとサンゴを食べてしまうオニヒトデ。通常であれば成長の早いサンゴを好んで食べるため、サンゴ礁の生物多様性の一役を担っています。

しかしひとたび大量発生してしまうと、成長の遅いサンゴまで食べサンゴを死滅させます。沖縄では、1970年代と1990年代末から2006年にかけて大量発生が確認され、サンゴ礁保全のためオニヒトデの駆除が行われていますが、大量発生を食い止めるまでには至っていません。

減少するサンゴ礁を救うために

このように環境や生物によって減少していくサンゴ礁も、海洋環境が正常であれば自然と白化から回復していきます。しかし、温暖化現象は簡単に食い止められるものではありません。

そこで考えられたのが、「サンゴを陸上で育て、海に戻す」という活動です。現在、沖縄では多くの団体がサンゴを育て海に植え付ける活動を行っています。しかしサンゴの飼育は難しく、無事に育って海に植えることができても定着しないものもあります。

植え付けるサンゴを効率的に増やすことができれば、定着するサンゴの数は増えていく。そう考えた「沖電開発」と「沖縄セルラー電話」、「沖縄セルラーアグリ&マルシェ」が開発したのが「IoTを利用したサンゴの飼育システム」です。

沖縄セルラー電話がすでに販売している野菜栽培用システム「やさい物語」と同じ技術を利用し、飼育する水槽の内部に機器を取り付け水温・水位を計測。動画も記録されすべてクラウドサーバーに保存されます。データはスマートフォンでいつでも確認でき、正しい飼育状況にあるかどこにいてもアプリでチェックできるという仕組みです。機器を取り付けられる専用の水槽も開発しています。

現在はまだ試験段階ですが、2019年の販売開始に向け取り組みは着実に進んでいます。最初は全国の教育機関に、いずれは一般家庭向けにも販売する予定です。

これにより、全国で飼育されたサンゴを海に植えるというエコツーリズムにも展開できるでしょう。全国各地で飼育されたサンゴが、沖縄の海をカラフルに染める日も近そうです。(提供:JIMOTOZINE)